表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

48/69

48話 おやすみなさい

 ちょっとしたハプニングがありつつも、風呂タイムは終わり……

 あくびがこぼれるような時間に。

 時計を見ると、日付が変わろうとしていた。


「そろそろ寝ようか」

「そうですね……でも、ちょっと残念です」


 一緒にゲームをしていたのだけど、思いの外楽しんでいた。


 無人島を開拓していく、というゲームものだ。

 こういうスローライフ系はあまりやらないのだけど、天宮と一緒ならとても楽しい。


 布団を並べて敷いた。

 横になって明かりを消す。


「……」

「……」


 ちょっとした無言。

 それから、俺と天宮はくすりと笑う。


「なんだか……」

「不思議な感じですね」


 昨日、一つの布団で一緒に寝たのだけど……

 その時以上に緊張していた。


 こうして横に並んで寝ていると、不思議と一緒に寝ていた時以上に天宮の存在を感じる。

 距離が近すぎるとドキドキするしかないのだけど……

 適度に離れているから、妙に相手のことが気になる。


「ふふ」


 ふと、天宮が小さく笑う。


「どうしたんだ?」

「また一つ、夢が叶いました」

「それはどんな夢?」

「進藤君とこうして一緒に寝ることです」

「昨日は?」

「あれは……ちょっといきなり過ぎて近すぎたので、ノーカンです」


 賛成だ。

 あれはちょっと心臓に悪い。

 ドキドキしすぎて、本当にどうにかなってしまうかと思った。


「でも……あまり実感がないですね」

「一緒に暮らしていること?」

「わっ、どうしてわかったんですか?」

「天宮のことだから」

「あぅ」


 照れたらしい。


「むぅ……」


 今度は拗ねるような声。


「私は、進藤君のことでわからないことがたくさんあるのに……なんだか不公平です」

「俺だってそうだよ」

「本当ですか?」

「本当」


 天宮のことが好きで、なんでも知りたいと思う。

 それこそ、プラス要素だけではなくてマイナス要素のことにも触れたいと思う。


 でも、そんなことはできない。

 気軽に触れていいことではないし……

 もっともっと時間をかけて、信頼を得ていかないとダメだろう。


 天宮の全部を知るのはずっと先だ。


「私、進藤君のことをもっと知りたいです。教えてくれますか?」

「もちろん」


 ふと、疑問に思う。


「例えば、どんなことを知りたいんだ?」

「えっと……好きな食べ物、好きな趣味、好きな色、好きな動物、好きな女の子のタイプ……色々です」

「多いな」

「進藤君の好きをたくさん知って、それを私も共有したいんです。そうやって、一緒に好きを楽しめることができたらな、って」


 いじらしいことを言われてしまい、なんかもう、たまらなくなってしまう。


 しかし、我慢だ。

 ここで手を出しても、天宮は受け入れてくれると思う。

 でも、そんな勢いに任せたくはない。


 天宮のことが好きだから。

 天宮のことが大事だから。

 もっともっと、きちんと手順を踏んでいきたい。


「天宮は俺のことをたらしって言うけどさ」

「はい」

「天宮も、かなりのたらしだよな」

「えっ?」

「こうして話をしているだけで、どんどん天宮に対する『好き』が強く深くなっていくよ」

「え、えっと……ありがとうございます……」


 ものすごく照れているような声だった。

 ちらりと横を見ると、耳が赤くなっているのが見える。


「ただ、全部を教えるとなると大変そうだな」

「そうですね。すごく時間がかかってしまうと思います」

「なら、ゆっくりでいいか」

「ゆっくり……ですか?」

「少しずつ知っていけばいいと思う。それくらい、一緒にいるつもりだから」

「あ……はい!」


 天宮はこちらを見て、にっこりと笑う。

 その笑顔は俺が一番好きなものだ。


「とりあえず、今一番好きなものを教えておくと……」

「はい?」

「天宮の笑顔かな」

「っ……!?」


 びくっと天宮が震えて、反対側を向いてしまう。


「天宮?」

「……そういうところが、すごくすごくずるいです」

「ずるい、って言われても……思ったことを口にしただけなのに?」

「うぅ……ですから、そういうところです!」


 天宮はそう言うのだけど、そうやって照れるところも、俺からしたらずるい。


「天宮」

「……なんですか?」


 また甘いことを言われるのではないかと、天宮は警戒している様子だ。

 そんな彼女に、俺はのんびりと言う。


「おやすみ」

「……はい、おやすみなさい」


 今夜は良い夢が見れそうだ。

 そんなことを思いつつ、俺はゆっくりと目を閉じた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


「面白い」「続きが気になる」と思っていただけたのなら、

【ブックマーク】や【評価】をしていただけると、すごく嬉しいです。

評価はページの下の「☆☆☆☆☆」から行うことができます。

反響をいただけると、「がんばろう」「もっと書いてみよう」と

モチベーションが上がるので、もしもよろしければお願いいたします。


次話も読んでいただけると嬉しいです。

よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
別の新作を書いてみました。
【堕ちた聖女は復讐の刃を胸に抱く】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。

【ネットゲームのオフ会をしたら小学生がやってきた。事案ですか……?】
こちらもよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ