37話 一緒に? その2
互いに風呂に入り、ほどよい時間になって、そろそろ寝る時間に。
ただ、ここで一つ問題が。
「まいったな、布団が足りないなんて……」
俺の分の布団しかない。
天宮の布団は後日、業者が運んでくるらしい。
「うぅ……すみません。布団のことをうっかり忘れてしまい……」
「過ぎたことを言っても仕方ないさ。これからどうするか、それを考えよう」
「は、はい」
とはいえ、答えは決まっているようなものだ。
「布団は天宮が使ってくれ」
「え? でも……」
「大丈夫。俺は毛布を床に敷いて、それを代わりにするから」
「……」
天宮は微妙な顔に。
それでは、きちんと眠れないのでは? と言いたそうだ。
少し考えた後、そっと口を開く。
「えっと……それなら、一緒に寝ませんか?」
――――――――――
明かりの消えた室内。
暗闇に目が慣れてきて、ぼぅっと室内が見えるようになってきた。
そんな中、背中合わせで天宮と一緒の布団に寝る。
「……」
「……」
天宮の背中が触れるか触れないか、そんなギリギリの距離。
少し動けば触れてしまう。
寝返りなんて厳禁。
「……」
「……」
わずかに互いの吐息だけが聞こえていた。
いや。
天宮の場合、これは寝息なのだろうか?
横になって30分ほどが経っているのだけど、寝たのか起きているのか判断できない。
ちなみに俺は、一向に眠気が訪れてくれない。
当たり前だ。
好きな女の子と同じ布団で寝るなんて、意識してしまうに決まっているだろう。
眠れるわけがない。
天宮はまったく動かないけど……
寝たのだろうか?
この状況、どう思っているのだろう?
――――――――――
(やりすぎました、やりすぎました、やりすぎました!)
寝たフリをしている天宮六花は、心の中でそんなことを連呼していた。
最初は、特になにも考えていなかった。
気を使われているものの、自分は居候の身であることに変わりはない。
しかも、わりと強引に押しかけてきた。
それなのに、彼の布団を奪い、自分だけ悠々と寝るわけにはいかない。
だから、同じ布団で一緒に寝ようと提案したのだけど……
(うぅ……こんなにもドキドキしてしまうなんて、ちょっと……いえ。かなり予想外でした。一緒の布団だけど、でも、寝るだけ。それだけなので、そこまで気にすることはないと思っていたのですが……いえ、嘘です。ちょっと、色々なことを期待していました。これを機会に、なんて狙っていました。でも、やっぱりいざとなると……はぁ、私、チキンですね……)
完全に寝たフリをしているものの……
心の中では悶々としていた。
少し動いたら背中が触れてしまう。
寝返りなんてしたら、寝顔が見られてしまう。
(無理です、絶対に無理です……!)
その時を想像したら、顔が赤くなってしまう。
心臓の動機がこれ以上ないほど激しくなってしまう。
とはいえ……
(こんな機会なんて、もうないような気がしますし……なんていうか、こう……ちょっとくらいはなにか……)
ほんの少しのラッキーを望む。
望むのだけど、でも、やはり今のままなにも起きない方が……なんて思いもある。
どうする?
どうすればいい?
目をぐるぐるさせて混乱してしまう。
(……ん……)
触れていない。
とても微妙な距離なのだけど、でも、彼の存在を感じることができた。
どんな顔をしているのか?
もう寝てしまったのか?
それらはわからないけど……
今、確かにすぐ近くにいる。
(すごく安心できる……なんだか、温かい気持ちになりますね)
ドキドキする。
彼のことばかり考えてしまう。
でも、その一方で妙に落ち着くことができた。
例えば、母の温もりに包まれているようなもの。
それと同じくらい、彼と一緒にいると温かい気持ちを抱くことができた。
それはきっと……
(私は……本当に、心の底から進藤くんが好きなのですね)
改めて想いを確認した彼女は、そっと自分の胸元に手をやる。
その奥にある想いを大事にしていきたい。
ずっと。
いつまでも。
(……おやすみなさい、進藤くん)
心の中でつぶやいて、彼女はゆっくりと眠りに落ちていった。
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