表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/69

28話 彼女がグイグイと来る

後日談その2、です。

5話くらい書いてみようかな、と思います。

不定期更新です。

 放課後。

 いつものように天宮と帰り道を共にしていると、なにか言いたそうな顔でもじもじと。

 気になり、問いかけてみると……


「デートがしたいです!」


 そんなことを大きな声で言われてしまう。


「あ……ひゃあ、わ、私、こんなところで大胆なことを……」


 すぐに自分の発言と周囲に人がいることを思い返して、天宮が赤くなる。


 一方で、道行くおばちゃん達は、とても微笑ましそうな顔をしていた。 

 私にもあんな頃があったのよ、なんていう話も聞こえてくる。


「えっと、あの……ど、どうでしょうか?」

「ああ、うん。もちろん、構わない」

「やった♪」


 小さくガッツポーズをして、ぴょんと跳ねて喜びを表現する。


「進藤くんとデート……えへへ、うれしいです」

「そんなに喜ぶことか? デートなら、この前もしたじゃないか」

「ぜんぜん違います!」


 ものすごい勢いで否定されてしまう。


 そのままの勢いで、天宮は目に力を込めて、力強く言う。


「あの時は、まだ本物じゃありませんでした! でもでも、今は違います。その、えと……進藤くんと、相思相愛に……ふにゅ」


 自分で言って自分で照れている。


「と、とにかく、そういうわけなんです!」

「そっか……うん、なんとなくわかるよ」


 天宮が言うように、あの頃は付き合っていたけれど、本当は付き合っていないという複雑な状態だ。

 その状態のデートを、正しいデートとしてカウントしてよいものか?


 せっかく、正式な恋人になったのだから……

 その状態で、改めて本当のデートをしたい。

 というか、これからは、何度でも何度でもデートをしたい。


「じゃあ、さっそく明日、デートをしようか」

「……明日はイヤです」

「え、どうして?」

「だって、明日は平日じゃないですか。学校があるから、一日中、一緒にいられません。せっかくのデートだから……進藤くんと一日中、ずっと一緒にいたいです」

「そ、そうだな……うん。俺も、そう思う」

「よかった」

「なら、今度の日曜にするか。その日は……うん、予報では晴れだ」


 携帯のアプリを起動して、天気予報を確認した。


「はい! あ、でもでも、日曜日が待ち遠しくて、寂しくなりそうです……うぅ、平日は平日で進藤くんと一緒にいたいのに、なんていうジレンマ」

「えっと……」


 ストレートに好意を表現してくるというか……

 天宮がグイグイと踏み込んでくる。


 こんな子だったっけ?


 ちょっとしたことで照れたり慌てたり、顔を赤くするところはそのままなのだけど……

 こと恋愛に関することは、今まで以上にグイグイと来るようになった気がする。


「天宮、ちょっと変わったか?」

「え? なにがですか?」

「今まで以上にグイグイ来るようになった気がする」

「それは、えっと……」


 自覚はあったらしく、天宮がなんとも恥ずかしそうな顔に。

 頬を染めて、顔の前で指を合わせて、もじもじと。

 その状態で視線をふらふらとさまよわせる。


「言いたくないなら、別に……」

「あ、いえ。そういうわけではないんです。ただ……呆れられないかな、とちょっと不安で」

「そんなことはないと思うぞ?」

「え?」

「俺は、天宮のことが好きだからな。呆れるなんてことは、絶対にない」

「ふぁ」


 天宮が惚けたような感じで、こちらをじっと見つめてきた。

 その瞳は少し潤んでいて、どことなく熱を帯びていた。


 ややあって、ふにゃりと幸せそうに笑う。


「また、好きって言ってもらっちゃいました……幸せです」

「もっと言った方がいいか?」

「は、はい! できることなら、毎日、30回くらいは!」

「それは勘弁してくれ……」

「うぅ……じゃあ、50回でいいです」

「増えているよな!?」

「ふふっ、冗談です」


 たくましい子に育ったなあ。


「えっと……それで、私がグイグイいく、という話なんですけど」

「ああ」

「その、えと……後悔したくないな、と思ったんです」

「後悔?」

「進藤くんと恋人のフリをするようになって、私、幸せだけど、ちょっと後悔していたんです」

「えっ、それはどういう?」

「遠回りしないで、最初から告白しておけばよかったかな……って。逃げるような真似をしたから、もどかしい思いを味わって、ちょっと悩んだりもしました」

「……そっか」

「だから、今度はそういうことがないように、その……できる限り、自分に正直であろうと思ったんです」

「その結果が、グイグイいくこと?」

「はい。進藤くんを好きな気持ち、いっぱいいっぱい、ぶつけていきたいと思うんです」


 俺が思っていた以上に、天宮は成長しているみたいだ。

 最初、あたふたと慌てていた頃が懐かしくもある。


 でも……


 恋人のフリをしていた頃のことを、失敗と考えるようなことはしないでほしい。

 あれはあれで、俺達には必要な時間だったと思う。


「恋人のフリをしていた頃、俺は、楽しくて幸せだった」

「進藤くん?」

「フリをしているからこそ、生まれた時間もあったと思うんだよ。なんていえばいいか、的確な言葉は出てこないんだけど……あの時間があったからこそ、今の俺達がある。だから、後悔とかはしないでほしい」

「……はい!」


 晴れやかな笑みを浮かべて、天宮は手を繋いできた。


 相変わらずというか、まだまだこういう行為には慣れていないらしく、これだけで顔が赤くなってしまう。

 でも、とても良い笑顔を浮かべていて……

 幸せそうだ。


 俺がその笑みを作る一因になっていると思うと、誇らしげな気持ちになる。

 自惚れでなければいいのだが。


「やっぱり私……進藤くんのこと、大好きです」

「ど、どうしたんだよ、いきなり」

「ふふっ、どうしたんでしょうか。私の気持ち、全部、進藤くんに預けたくなったんです」

「……なら、俺は、俺の気持ちを天宮に預けないといけないな」

「ふぁ、そ、それは困るといいますか……」

「イヤなのか?」

「……進藤くんの心を預かるなんてことになったら、私、爆発しちゃいます。胸がドキドキしすぎて、絶対にそうなっちゃいます……」

「なら、なおさら預けないとな」

「うぅ……進藤くん、意地悪ですよぉ」


 天宮は拗ねるようにそう言って、唇を尖らせるのだった。

「まだ続きを読みたい」「むしろ2部を読みたい」

なんて思っていただけたのなら、☆の評価などをしていただけると、うれしいです。

よろしくおねがいします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◇◆ お知らせ ◆◇◆
別の新作を書いてみました。
【堕ちた聖女は復讐の刃を胸に抱く】
こちらも読んでもらえたら嬉しいです。

【ネットゲームのオフ会をしたら小学生がやってきた。事案ですか……?】
こちらもよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 恋愛初心者だから制服デートという物を知らないのでしょうか。
[一言] 続編出るならみたいです!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ