25話 緊張する二人
ちょっとですが、後日談を書いてみました。
半年以上間が空いてるので、ちょっとズレもあるかもしれませんが……
温かい目で見てもらえると幸いです><
昼休み。
クラスメイト達が弁当を広げたり学食に向かう中、俺は、そわそわしつつじっと待つ。
「なんだ? 歩は、今日は姫さまと一緒じゃねえのか?」
「いや、一緒だ。今は天宮が来るのを待っている」
「なら、なんでそんな緊張した顔をしてるんだよ?」
「……色々とあるんだよ」
本物の彼氏彼女の関係になって、初めての学校生活。
今までとなにもかもが違うように見えて、キラキラと輝いているようで……
でも、同時に緊張した。
本物の彼氏彼女って、どういう風に過ごしているんだ?
「し、進藤くんは……その、いらっしゃいますか?」
ひょこっと、天宮が顔を見せた。
うん、かわいい。
「あっ、おまたせしました、進藤くん。授業が長引いてしまって、ごめんなさい」
「いや、大して待っていないから。それに……天宮と一緒に過ごすためなら、いくらでも待つ」
「ひゃあ、ひゃあ」
「どうしたんだ?」
「し、進藤くんが、すごくうれしいことを言うから……うぅ、まともに顔が見れません」
言われてみれば、かなり恥ずかしい台詞を口にしたような気がした。
俺も顔が熱くなる。
「……」
「……」
見つめ合うこと少し。
「おーい」
「な、なんだ、真司?」
「どうでもいいけど、教室じゃなくて、どこか別の場所で食べるんだろ? 早く移動した方がいいぞ」
「えっと……」
クラス中の注目の的になっていた。
いくらかの男子生徒が、呪詛を口にしていたり、藁人形を用意していたりする。
「は、はは……天宮、行こうか」
「は、はい!」
天宮の手を取り、教室を後にした。
そのまま一緒に学食へ。
俺はカツカレー。
天宮はきつねうどんを注文して、席へ移動した。
「「いただきます」」
唱和して、ごはんを食べる。
「……」
「……」
今までなら色々な話をしていたのだけど、今日に限り、互いに口を閉じたままだ。
チラチラと相手を見て……
目が合うと、頬を染めて逸らしてしまう。
「な、なんていうか」
「あ、ああ」
「すごく、その……恥ずかしいですね」
「……だな」
なぜか、天宮の一挙一動が気になる。
今までも気にしていたのだけど、今日は、それ以上に目がいってしまう。
なんでだろう?
と考えたところで、本当に付き合うことになったからだろうか? と答えに至る。
今までは、フリをしなければいけない、という免罪符があった。
ちょっと大胆な行動に出ても、らしく見せるためという言い訳があったから、色々な行動に移ることができたのだろう。
でも、今はそれがない。
そのせいか、妙に恥ずかしくなってしまい……
「……」
「……」
結果、互いに照れて黙ってしまうということに。
「えっと……天宮は、最近はどうだ?」
無理矢理にでも話題を作る。
「それは、えっと……し、幸せです」
「幸せ?」
「だって……進藤くんの恋人になれたんですから、えへへ」
「……」
ついつい見惚れてしまうが、仕方ないだろう?
「進藤くんは……ど、どうですか?」
「俺は、その……」
「どきどき」
「……幸せだよ」
「それは、どうして?」
「天宮と一緒にいられるから」
「ふぁ」
天宮は変な声をこぼして、
「あちっ」
ぼーっとしたまま油揚げを食べようとして、小さく舌を出した。
「だ、大丈夫か?」
「うぅ……進藤くんが、すごくうれしいことを言うからです」
「俺のせいなのか?」
「……半分は、進藤くんを好きすぎる私のせいかもしれないですけど」
そんな台詞をぶつけられても、それはそれで困る。
「舌、火傷してないか?」
「んー、わかりません。どうですか?」
天宮はとても無防備な感じで、れろっと舌を出して見せてきた。
「やけろ、してまふか?」
「え? いや……」
俺に見ろ、と?
彼氏彼女の関係とはいえ、女の子の舌をじっと見つめろと?
いや、そもそも、火傷したかもしれないといって、舌を差し出すか?
なんていうか……妙にエロい。
「天宮」
「ひゃい」
「その……人前で、そういうことはしない方がいいぞ?」
「え?」
天宮はキョトンとした顔に。
それから、自分のしていることを自覚した様子で、
「ふぁ!?」
赤くなり、慌てて舌を引っ込める。
「うぅ……私、なんて恥ずかしいことを……進藤くんに、とてもはしたないところを見せてしまいました……」
「大丈夫。たぶんだけど、今の、他の誰にも見られていないから」
「本当ですか? でも、進藤くんにはバッチリと見られてしまったわけで……」
「ダメか?」
「え?」
「俺は……天宮のどんなところも、全部全部、見たいと思っているから。今のは驚いたけど、でも、特別みたいな感じがしてうれしかったよ」
「……」
みるみるうちに天宮の顔が赤くなる。
そのまま、顔を隠すようにうつむいてしまう。
「天宮?」
「うぅ……反則です。ルール違反です。問題です。進藤くんは……ずるいです」
「えっと、なにが?」
「私だって」
天宮は顔を上げると、そっと、こちらの顔に指を伸ばしてきた。
そのまま、俺の頬をなぞる。
「カレー、ついていますよ」
「あ……」
天宮は、そのまま指を自分の口に持っていき……
ぱくり、と咥えてしまう。
「えへへ。カレー、おいしいですね」
「あ、ああ……」
やられた。
そんな感じで、俺は顔を熱くするのだった。




