22話 告白
「あっ、いえ、今のはその!? えと!? 進藤くんのことは初恋の男の子だと思っていますが、しかし、今もそういうわけではなくて……あ、いえ、決して進藤くんがイヤというわけではなくて、むしろ望むところであり……あうあうあう」
「えっと……」
天宮が盛大に自爆したせいか、俺はものすごく落ち着いていた。
俺が初恋の男の子。
そして今、恋人のフリをしている。
俺はどちらかというと鈍い方ではあるが……
ここまでくれば、さすがに天宮の気持ちがわかる。
たぶん、天宮も俺のことを……
それで合っているよな?
これで、俺の勘違いとかだったりしたら、かなり恥ずかしいぞ。
引きこもってしまうレベルの恥ずかしさだ。
だとしたら……
って、弱気になってどうする。
自爆ではあるものの……
天宮は想いを教えてくれたんだ。
ならば俺は、それに応えないといけない。
そうする義務がある。
「あのさ」
「ひゃいっ!?」
天宮はその場で飛び跳ねそうな勢いで、舌を噛んでいた。
あいたたた……なんて小さくつぶやきつつ、舌を出している。
なんだ、このかわいい生き物は。
お持ち帰りしたい。
じゃなくて。
なんていうか……
落ち着いているようで、俺も相当混乱しているな。
「とりあえず、深呼吸して落ち着こうか。お互いに」
「は、はい……そうですね」
視線を外して、前を見て深呼吸をする。
一回、二回、三回。
……よし、落ち着いたぞ!
「「あのっ」」
「「……」」
ダメだ……ぜんぜん落ち着いていない。
天宮の顔を見たら、一瞬で動機が激しくなり、思考が真っ白になってしまう。
あれこれと言葉を考えていたのだけど、それも全て消えてしまう。
「……」
「……」
夜の公園で互いに顔を赤くして、それぞれに明後日の方向を向いている男子高校生と女子高生。
傍から見れば、なにをしているかと不思議に思うだろう。
というか……
実際に、俺たちはなにをしているのやら。
ええい!
いい加減に覚悟を決めろ、俺っ。
どんな結果になるとしても、天宮に告白すると決めたじゃないか。
「天宮!」
「は、はひっ」
「俺、今日は言いたいことがあって……絶対に言おうと思っていたことがあるんだ」
「いいたいこと、ですか……?」
「その……」
呼吸を落ち着けて……
それから、言葉を紡ぐ。
「恋人のフリを、今日で終わりにしたい」
「え……」
天宮が……泣きそうな顔になる。
じわりと涙を浮かべて、うつむき加減に言う。
「あの、それは……やっぱり、迷惑でしたか? だから、もう終わりにすると……そういうことで……」
「……あっ!?」
言い方! 言い方だよ!
俺はバカか!?
ともすれば、関係を終わらせたいという宣言にも聞こえないわけで……
天宮の性格からしたら、勘違いする可能性が高いだろう。
それくらいわかれよ、俺。
「あっ、いや、違うんだ!」
「その……慰めなくても大丈夫ですよ。別に、ふ、フリなわけですから……辛いとか苦しいとか、そんなこと……な、ないですし……ぐすん」
半分泣いている状態でそんなことを言われても、説得力皆無だ。
「慰めとかじゃなくて、本当に違うわけで……」
「あ、あの、ありがとうございました。今まで、すごく助かりました。あと、楽しかったです……できれば、その、これからもお友達でいてくれると……」
「いや、だから……」
「また機会があれば、その、一緒に遊んでくれるうれしいです……ぐすっ」
「だから、違うんだ!」
「ひゃい!?」
ついつい大声を出してしまう。
天宮を驚かせてしまい、申し訳ない気持ちになるが……
ひとまず、話を聞いてもらう体勢を整えることはできた。
よし。
今度こそ、間違うなよ、俺。
最適で、ベストな言葉を口にする。
その答えは、すでにたどり着いている。
たった一つのシンプルな言葉。
それだけでいい。
「……好きだ」
「ふぇ……?」
天宮が目をパチパチとさせた。
なにを言われたのか理解していない、という感じだ。
聞こえていない、ということはさすがにないだろうから……
告白されたという実感が湧いていないだろう。
となると……また告白をしないといけない?
マジか……
たった一言、それだけを絞り出すだけでも、かなりの勇気を必要としたのに。
それをもう一回。
場合によっては、一言以上の言葉を捧げないといけないなんて……これは拷問か?
俺の心が耐えられるかどうか。
「えっと……もう一度言うから、しっかりと聞いてほしい」
「ひゃ、ひゃいっ……!?」
「俺は……」
しっかりと息を吸い、
「天宮六花のことが好きだ」
そう言い、改めて告白をした。




