20話 まず最初に真偽を
昼を一緒に食べた後、猫カフェへ足を運んでみた。
天宮は猫を飼っているから、喜んでくれると思ってのチョイスだ。
結果……天宮は喜んでくれた。
ものすごく。
どんな風に? という部分に関しては、本人の名誉のために口を閉じさせてもらおう。
人、変わっていたからなあ……
その後は、服を見たいという天宮の要望でショッピングモールへ。
色々な店を見て回った。
一度、天宮が迷子になりかけてしまうが……
それはそれで、良い思い出になったと言える。
そして陽が暮れて……
夜。
電車に乗り、俺たちは地元に戻ってきた。
「もう、着いちゃいましたね」
駅を出ると、天宮が寂しそうに言う。
もっと一緒にいたい、と思ってくれているのだろうか?
だとしたら、うれしい。
俺も同じ気持ちだから。
「進藤くん、今日はありがとうございました。デート、すごく楽しかったです」
「俺も楽しかったよ。ありがとう、天宮」
「いえいえ、私の方こそありがとうございます。デートをしたいっていうお願い、聞いてくれて」
「別にそれくらい……いつでも聞けるけど」
「え?」
天宮がぽかんとして、
「……じゃあ、ま、またお願いしても?」
おそるおそる尋ねてきた。
「ああ、もちろん」
「……」
「天宮?」
「はっ……!? す、すみません。うれしすぎて、ついつい意識が……」
大丈夫だろうか?
喜んでくれることはうれしいが、ここまで大げさになると、こちらもためらってしまうというか……
でも……少なくとも、嫌われてはいないはずだよな?
それどころか、ある程度の好意は持ってくれていると思う。
とはいえ、告白を受け入れてくれるかどうかは別。
好意といっても、友達に対するものかもしれないし……
あるいは、一方的なもので、俺の勘違いかもしれない。
まあ、そこを考えても仕方ない。
不安ではあるが……
でも、後悔のないように突き進むだけだ。
ただ。
その前に一つ、確かめておきたいことがある。
「天宮。まだちょっと、時間をもらってもいいか?」
「え? はい、構いませんけど……」
「少し話がしたいんだ」
――――――――――
駅からさほど離れていないところにある、公園に移動した。
この公園は市が建設、管理をしているところだ。
夜も明るく、季節によってはイルミネーションで飾られる。
店以外で静かに話ができるとなると、ここがベストだろう。
「お茶とコーヒー、どっちがいい?」
「じゃあ、お茶でおねがいします」
天宮に温かいお茶の缶を渡した。
まだ6月ではあるが、梅雨入り前なので、夜は時によって寒い。
飲み物を口にして、体を温める。
「あの、進藤くん。それで、お話というのは……?」
「えっと、そのことなんだけど……ごめん!」
「え?」
俺が頭を下げると、天宮は不思議そうな顔になる。
「どうしたんですか、突然?」
「あのさ……この前、一緒に帰ろうとした時、俺が掃除で遅くなった時があるだろ?」
「えっと……はい、数日前のことですね」
「あの時……俺、天宮の話を聞いていたんだ」
「え?」
「掃除が終わって迎えに行こうとしたら、天宮が友達と話をしてて……なんか、出ていくタイミングを失ってさ。盗み聞きしてしまって……すまない!」
まずは謝罪。
頭を下げて、大きな声で言う。
天宮は、最初は不思議そうな顔をして……
それから柔らかい表情を浮かべる。
「そんなに気にすることないですよ。聞かれて困るような話なら、教室でおしゃべりなんてしませんから」
「えっと……実は、本題はここからなんだ」
「本題?」
「あの時、天宮は、迷子のところを俺に助けてもらった、って言ってただろ? でも、俺はそんな記憶がなくてさ。それがどういうことなのかな、って……」
「あ……」
なるほど、その話か。
そんな感じで、天宮は納得したような顔になる。
次いで……
「やっぱり……ですか」
寂しそうな顔になった。
そんな顔をさせてしまっているのは、まず間違いなく、俺が原因だ。
そのことについて、とても心が痛い。
でも、この問題を避けて通ることはできそうにないから……
話に深く踏み込む。
「やっぱり、っていうと……天宮には心当たりが?」
「もちろんです」
「ってことは……俺が忘れてる?」
でも、母さんにも確認をしたんだけどな……?
訝しげな顔をしたところで、天宮があたふたと慌てる。
「あっ、その、進藤くんが忘れているのが悪いとか、そういうことはぜんぜんないんです。むしろ、覚えている方が不思議というか……」
「えっと……どういうことなんだ? 教えてくれないか?」
「はい」
天宮は穏やかな顔で頷いた。
その顔を見れば、意図的にこの話を避けていたわけではないことがわかる。
いったい、どんな内容なのか?
俺は、なにを忘れているのか?
しっかりと確認したい。
「実を言うと……私と進藤くんは、昔、一度だけ会っているんです」




