18話 決戦の日(おおげさ)
そして、日曜が訪れた。
この日のために、真司に土下座する勢いでオススメのデートスポットを教えてもらった。
さらに、服のコーディネートも助言をもらった。
事前準備は完璧。
あとは、俺の心と度胸次第。
「進藤くん、おまたせしました」
駅前の花壇の前で待っていると、私服姿の天宮が現れた。
いつも制服だから、私服姿がやけに眩しく見える。
「……」
「進藤くん、どうしたんですか?」
「かわいいな」
「ふぇっ……!?」
天宮のことばかり考えていたせいか、ついつい、本音がぽろりとこぼれ出てしまう。
天宮がビクリと震えて、赤くなる。
あたふたとしていて、小動物みたいだ。
「えと、あの、その……あ、ありがとうございます」
「ど、どういたしまして……」
「その……進藤くんも、か、かっこいい……ですよ?」
「……ありがとう」
「は、はい……どういたしまして」
なんだ、この会話は……?
なにを話しているのか、なにが目的なのか、さっぱりわからない会話だ。
でも……こんなことが幸せだったりする。
「それじゃあ……デート、するか」
「はい……デート、しましょう」
俺と天宮は手を繋いで、駅に移動した。
――――――――――
まずは、数駅離れたところにある繁華街へ。
地元の繁華街よりも数倍大きく、色々な店が揃っている。
その一角……映画館にやってきた。
デートで映画。
定番中の定番だ。
約2時間、会話の心配をする必要がない。
その後は、映画の話題で盛り上がることができる。
真司オススメの、デート初心者向けのスポットだ。
「天宮はなにを見たい?」
映画の内容までは決めていないため、そう尋ねた。
スクリーンが10以上あり、アクションから恋愛まで、さまざまなジャンルが揃っている。
「私が決めていいんですか?」
「俺はなんでもいける派だから。天宮に任せるよ」
「えっと、なら……これがいいです」
天宮が指差したのは……
おどろおどろしい幽霊が描かれた映画のポスターだった。
え? まさかのホラー?
冗談?
もしくは、きゃーこわーい、と抱きついてくるのが目的とか?
いや、天宮に限ってそんなことはないか。
「私、これが見たいんですけど、いいですか?」
天宮は、あろうことか目をキラキラとさせていた。
ホラー好きなのだろうか……?
「えっと……天宮がいいなら、これにしようか」
「はい、ありがとうございます」
券売機で二人分のチケットを購入して、館内へ。
もちろん、席は隣同士だ。
……本当はカップルシートもあったんだけど、なんとなくそれは避ける流れになっていた。
共に照れていたのだろう。
「映画って、予告もおもしろいと思いません?」
「それはあるかもな。あの映画の新作がやるのか、とか新しい発見があるんだよな」
「ある意味で、本編よりもワクワクしちゃいますよね」
「それは言いすぎじゃないか?」
「ちょっと盛りました」
てへ、と舌を出す天宮はとてもかわいい。
映画じゃなくて、天宮を見ていたい気分だ。
「進藤くん? どうしたんですか?」
「いや、えっと……」
反応に困った時、時間になり、館内が暗くなる。
「あ、始まるな」
「そうですね」
そこで話はなんとなく流れて……
俺たちは映画に集中する。
――――――――――
ちなみに……
天宮がホラー映画を選んだのは、ネタでもなくて、きゃーと抱きつきたいわけでもなくて、ガチだった。
上映中、天宮はずっと目をキラキラと輝かせていて……
館内に悲鳴が響くようなシーンでは、逆に「おぉ!」と子供のように興奮していた。
まあ、そんな天宮もかわいい。
これが、恋は盲目というヤツだろうか?
『よかった』『続きが気になる』と思っていただけたら、
ブクマや評価をしていただけると、とても励みになります。
よろしくおねがいします!