8話 つい、とかいう理由でやるなよ
「あぁ……未来へと旅立ちたいわ……」
先輩は部員が集まらない事に絶望したのか、虚ろな目で呟いた。
「先輩、なんか限界が訪れようとしてませんか?」
「キてる……大分、キてるわ……。たった一人の後輩くんも能無しで、わたし……夢と希望が溢れる未来に旅立ちたいの。もうこの衝動は抑えられないかもしれない」
本当になんか限界みたいだ。
「もうタイムマシン作るわ。または、時空間を歪める装置っ! それか、伝説のポケ○ンあたりなら簡単にやってのけそうな気がする! そうよ、わたし十歳超えてるわ。ポ○モントレーナー目指してもなんら問題無いはず!!」
そう言って、マジでオーキドって人を探しに行きそうな勢いなので、ボクは止める手段を考えた。
どうすればいいだろう……。
あ、そうか、ここは明るくない未来を示せば良いんだっ!!
「先輩っ!!」
「な、なによ? 折角……準備が終わって、出発って時に……」
見ると、先輩は短パンに虫取り道具を持って、部室から出ようとするところだった。なんでそんな格好をなのかを逡巡したが、遣る瀬無くなり、記憶から排除した。
「先輩……ポケモ○が居るとは思えませんが、それよりもっ! 未来が明るいとは限りませよっ!!」
「なっ!?」
先輩が驚愕を表す。そして、虫かごが、ガタンと床に落ち音を立てた。
「漂○教室を思い出して下さい! あの小学生たちの辿り着いた未来は、夢や希望がありましたか?」
「…………そ、それは」
「そうです! 高松くんが幸せだったとは言い難いです。寧ろ、苦しんでいました。そんな未来に行きたいんですか!?
今の世界を考えてみて下さい。温暖化、温暖化って騒いでますけど、結局の解決なんて出来ていないでしょう? このまま行けば、漂流○室での砂漠化した地球というのも有り得ます」
「な……なんてこと…………。わたしは、もう少しで……食べるのも苦労する未来に行く所だったのね……」
先輩は膝から崩れ、なんとか両手を使い、四つん這いの姿勢になった。絶望の面持ちは床へと向けられている。
「だから、この現代で、未来の可能性を信じて、頑張りましょう!」
「……そうね。そうよね……流石は後輩くんっ! たまには役に立つわね!」
「あ、ありがとうございます……」
なんだか素直に喜べない。
先輩は立ち上がり、思い出したのか漂流教○について語り出した。
「ん〜それにしても後輩くんも守備範囲が広いわね。いくら有名といっても、本当に読んだ事がある高校生なんてそんなに多くないと思うわ。
ドラマにもなったけど、あのロングラ○レターは中々だったわ。活躍するのが母親じゃなくて父親にしたのも、ナイスセンスね。ラストは正直、微妙だったけどね……。手紙により過去を変えて、花が咲き乱れたけど、花を咲かせる事が出来るぐらいなら、高層ビルとかが一気に現れたりすると思うの。そしたら、きっと時空に歪みが―――――」
後半は何を言ってるのかはボクには理解できなかった。わかったのは、相対性理論がどうたら……と。先輩って実は凄い人なのかも。
「まぁあれはあれで有りでいいかな。時間と空間について完璧に理解……いえ、そもそも解明されてないんだからどうしようもないわ。
さて、ドラマはよかったけど、劇場版は微妙だったわね。いえ、駄作かしら。見所は、貧乳な女の子のシャワーシーンだけね。もちろん古い作品だから、余裕で胸は映るわよ。ロリコンには万々歳ね。でも、あの子ヒロインだと思うけど、結構腹黒だったわ……。んー先生は立派だったわね」
「…………」
どうしよう。先輩の年齢が分からなくなってきた。
「あれ? 後輩くんどうしたの? あ、もしかしてわたしの年齢を疑ってるのね?」
「いっ、いいえ」
鋭い……。今日の先輩は鋭いぞ。
「ま、いいわ。一応は言うけど、劇場で見たんじゃなくて、レンタルビデオよ。予告のところに逆シャアがあったのはビックリね。それの所為で見たくなってまたレンタルショップに行ったわよ」
「あの、先輩、今回のネタって本当に分かる人って少ないですよね?」
「そうね。○流教室を知らない人も居ると思うわ……」
「不味いんじゃないですか?」
「なにが?」
「………………いえ、なんでもないです」
「そう」
どうか、読者がこの作品を見捨てませんように。
ボクは心の中で必死に祈るばかりです。
漂流○室ってマイナーではないですよね?
小学生の時に読んだ時は、少し刺激が強過ぎました……。
なんだか、ボケもツッコミもあったもんじゃないですね……今回は。
次回は頑張りますよ……多分。