69話 見てたけど映画を見に行く気力は無い
「なんなのよぉぉぉぉぉっ!!」
先輩が吠える。どうしていつもこう、部室に入って来る時は、やたらとテンションが高いのだろう? 日々を元気良く方法を是非ご教授願いたいが、きっと常人には不可能な方法を説明されるに違いない。
だからボクは、今日も今日とて気だるげに過ごすのだ。
先輩はわざと大きな足音を立てて、いつもの椅子に腰掛けた。
大変ご立腹らしく、頬を可愛らしくぷくっと膨らませている。やっぱり、変人でなければ、先輩はきっとよくもてるのだろうな。
眉を吊り上げてジッとボクを睨んでくるので、ボクはそれを言葉を待っている、と解釈し仕方なく先輩に声を掛けた。
「なにをそんなに怒っているんですか?」
「仮面ラ○ダーのオチよ」
「ライ○ー? オチってなんの話ですか?」
ボクがそう言うと、先輩は何故か憐憫の眼差しを向けてきた。
そんな眼で見られてもボクは首を傾げるしかない。
「はぁ〜ダメね。全然ダメね後輩くん。わたしが言いたいのは、」
先輩は右手をギュッと握り、強固な拳を作り上げ、テーブルを叩いた。
「ディ○イドの終わり方、あれ、どこのコー○ギアス!? わたし、ビックリよ!」
「あ、ああ……ディケ○ドですか……。ボクは先輩がまだ仮面○イダーシリーズを見ていた事にビックリですよ」
ガンッ! ともう一度先輩がテーブルを叩いた。
「何を言ってるのよ後輩くんっ! ジェシカが前に言ってたでしょう? 最近のラ○ダーは大人向けだってね」
「言ってましたね(その時、先輩って部室に居たっけ?)」
「そんな細かい事はいいのよっ!」
「ってあれ!? ボクの心、読まないで下さいよっ!」
先輩が自分の身体をキュッと、自分自身で抱き締めた。
「酷いわ後輩くん……。この、心を読む能力を得た時から、わたしの世界は変わってしま――」
「はいはい、変な設定は出さないでいいですから。それで、ディ○イドのオチがどうしたんですか?」
あ、そうだったわ! と先輩は仕切りなおした。多分、忘れていたのだろう。
「終わり方がね、もう反逆のルルちゃんの一期と同じなのよ!」
「ルル○シュを馬鹿にし過ぎですよ……。まぁいですけど。終わり方が一緒、ということは、銃声響いて、終わりですか?」
先輩がテーブルに身を乗り出した。
「そうなのよっ! どんだけって、感じでしょ? 続きはWebで、ならぬ、続きは劇場で! なのよ。もう、どこのガン○ムOOって感じもするわ」
「確かにそれはせこいですよね」
「という事で、後輩くん、映画を見に行くわよっ!」
「……はいっ!? あれ? 見に行かない、という方向の話では無かったんですか!?」
馬鹿を見るような眼でボクを見てから、先輩は椅子に座り直した。
「何を言ってるの後輩くん。イィ〜〜!! って懐かしいでしょ? シ○ッカーよ、ショ○カー!」
「えと、ショッ○ー!? 初代じゃないですか。なんで知ってるんですか?」
「V3が最強っ! あ、でもライ○ーマンも捨てがたい……」
うむむ、と唸る先輩。
先輩って本当は何歳ですか? というか、女の子ですよね? どれだけ仮面ラ○ダーにはまってるんですか? 親が泣きますよ。
「あ〜でも、シリーズでいったら、やっぱりRXが一番よねっ! あ! ガ○ダムじゃないわよ! そういえば、ア○ロが乗ってるのはね、R○−78−2といって、二号機なんだけど……あ、試作二号機、サイサリスじゃないわよ! え〜とね――」
ダメだ。先輩についていけない。いや、行きたくないのかもしれない。
どうしようか。先輩ってきっと、ウル○ラマンシリーズなんかも、ウ○トラQから見てそうだな。
ん〜でも待てよ。先輩が知っているイコール、著者が知っているという事だ。著者、本当に中学生か!? まさかの年齢詐称!? それに何の意味が?
「あれ? 後輩くん? ちゃんと聞いてる? 今ね、ちょうどいいところよ。日本在住の――」
「っていつの間に、誰の話ですか!?(日本在住ってなんか聞いたことがあるような気が……)」
「それは秘密」
「何でですか!?」
「それは秘密」
「どこの知弦さんですかっ!? なんでラジオのネタぱくってるんですか!?」
「それは秘密」
「というか、知弦さんって言って読者に伝わるんですか!?」
「それは秘密」
「ボク、主人公ですよね!? 教えてくれたっていいじゃないですか!」
「それは秘密」
「うがぁぁぁぁっ!!」
ボクの本能が目覚めた。目の前に居る人間を狩れ、と唸りを上げている。
しかし、ボクが先輩に勝てる訳がなく、どこぞのロ○ット団のごとく、青空の先まで吹っ飛んで、キランと輝いた。
本当に残念な感じでした。でも、ショッカーが出るのか……見たいな。
あ、私、中学生ですから! え? 信じられないですか? いや、信じてくださいよ! はい? あ、ああ……はい、はい、ええ、まあそうですね。え〜と、その件については、え!? いや、だから私は未成年で、そんな梅酒の良さなんて……。
(私が壊れた今日この頃)