67話 ご愁傷さま後輩くん
「またサブタイトルがライトノベルのタイトルをぱくってますね……」
「大丈夫、許可は取ったからっ!」
「え!? 本当で――」
「なわけないでしょう」
「ですよねー」
部室に沈黙が舞い降りた。そうなると、ザーザーと土砂降りの雨音が外から聞こえてくる。
ボクと先輩は、自分の席からなんとなく窓の外を眺めた。
この雨のおかげで、今日はとても涼しい。だが、帰り道が問題なのだ。一応は傘を持ってきてはいるが、この雨では意味が無いような気がする……。
「雨ねぇ」
先輩が頬杖を突きながら、憂鬱げに呟いた。
「そうですね」
「どうして梅雨明けすると、雨って降るようになるのかしら?」
「それはツッコミを入れない方がいいですよ。なんだかもう暗黙の了解的な空気を感じますから」
「そうよね」
「そうですよ」
会話が途切れる。
「って後輩くん! なんだか対応がワンパターンよっ!」
先輩が突然お怒りになられた。エアガンの照準をボクの心臓に合わせて、「三分間だけ待ってやる!」と目で訴えてくる。ボクは別に飛行石は持っていない。
とりあえず両手を挙げて、抵抗する意思がないことを伝える。
「根性なし」
しかし、その態度が気に入らなかったらしい先輩は、蔑む視線を送ってきた。
「えぇ!? 先輩、エアガンに素手で対抗するのは厳しいですって!」
ボクは両手を挙げたまま、思わず席から立ち上がる。
「フリーザ! ……じゃなくて、フリーズ!」
「わざとミスりましたよね、先輩」
ボクがそんな事言うから、
「いっぺん死んでみる?」
と笑顔で死刑宣告されてしまった。しかも、どこぞの地獄○女のセリフだ。
エアガンの銃口が無慈悲にもボクのこめかみ辺りに当てられる。
ってあれ!? 先輩、いつの間にこちら側へ!?
「いや、ボクが死んだら、この作品にツッコミキャラが居なくなってしまいますよ……?」
死への恐怖で声が上擦る。はたかれ見れば、実に滑稽な姿をしているに違いない。
そんなボクに背後から先輩の声が冷たく響く。
「大丈夫! この作品、キノ○旅みたく、寧ろあとがきが本編だから♪」
あぁぁぁ、先輩は本気だ。ネタを入れてるけど、最後の音符が恐い。
「で、でも、ボクが死んだらやっぱり色々と不味いですよ!」
「え? 何も不味くないわ。ジェシカや空葉くんがどうにかしてくれるから」
「あれ!? そこ、真面目に答えちゃうんですか!?」
「ごちゃごちゃうるさいわよ、後輩くん。いい加減にしないと、撃つわよ。まあ最終的には絶対に撃つけど」
…………あぁ、短いけど充実した人生だった。心残りはたくさんあるけどね。
「後輩くんっ! 諦めるのが早いわ!」
「え? じゃあ、やっぱりボク、助かるんですか!」
「んーん」
…………あぁ、短いけど充実した――。
「コピペみたいにセリフを繰り返さないのっ! もう、いいじゃない一回死ぬぐらい……。死んだって三日前に戻るだけの事なんだから」
先輩が溜息をつくように言った。
「え!? ボクって亮ちゃんだったんですか!?」
「そうよ、後輩くんの中にはカイロスの時計が入っていて、それが死んだ時に発動し、三日前に戻れるわ」
「そうか……なら、一回ぐらい……って、先輩! 3d○ysってエロゲじゃないですか! なんでまたエロゲネタを出してるんですか!」
「え、エロ、エロ!? こ、こここ後輩くんのへんたーーいっ!!」
どたばたと激しい足音を立て、エアガンを所持した危険人物は部室から去っていった。
「……ふぅ」
先輩が墓穴を掘って助かった。本当に、どうして苦手なのにネタは知っているんだろう。やっぱり、和兄さんのせいか? あの人、まだ就職してないのかな。というか、もう読者に存在を忘れ去られているだろうなぁ。
「まぁどうでもいいけど」
ボクは、やれやれと一人帰りの支度をする。しょうがないので、先輩の荷物も肩に掛ける。
多分、そこら辺に居るだろう。軽く探せば見付るだろうし、それに、先輩は確か傘を持ってきて居なかったはず。
「あーあ、ボクって本当になんだかな……」
外の土砂降りをもう一度見て、ボクは部室を後にした。
二○宮くんは面白いですよ。3d○ysも面白いです。
なんでエロゲをやっているか……? あはは、それはまぁ、えっと、ちょっと友人に借りましたぁ。
深くは追及しないで下さい。
さてはて、次回は多分、番外編が入るかと。そして、いよいよある人物のストーリーが大きく動き出すような動かないような……。
ま、まあ! 頑張ります!
ライトノベルを買い漁る今日この頃。