6話 もう何がしたいんだか……
「そろそろ原点に戻ろうと思うの」
先輩の背中に哀愁が漂っていた気がするのは何故だろう。
「原点ってなんですか……?」
この部室にボクと先輩以外は居ない。だから、ボクがそう聞き返すしかないのだ。
「漫才部の原点よ……」
「漫才部の原点ってなんなんですか?」
「セクシー&バイオレンスよ」
「……なんですかその映画の解説みたいなのは?」
「あぁぁ!! だからどうしてそこでツッコミを入れないの!? 疑問として捉えるの!? ねぇ、後輩くん、どうして!? わたしに三文字以内に簡潔に纏めて説明してちょうだいっ!!」
無茶苦茶だった。でもこれが、いつもの先輩なのだ。殴られないだけ良かったと、安堵するべきなのだ。
「『むずい』でOKですか?」
先輩は漆黒の瞳でボクを睨みつけてくる。そうですか、ダメですか。
「『つらい』っていうのは?」
「却下」
「『ムリポ』……なんていうのは?」
「可愛いだけじゃダメよ。却下」
「『あぅ…』……は?」
「わたしの大好きな羽○の真似をしてもダメよ。それに、理由でもなんでもないわ」
「『限界だ』なんてどうでしょう?」
「そういうのは諦めよ。……でも、流石に三文字は厳しいわね。じゃあ五文字で、どうぞ!」
微妙に先輩が楽しんでいるのは、きっとツッコミを入れたら負けなんだろう。
「『もうダメだ』」
「そう。大丈夫よ、後輩くんなら……きっと……。はい、次っ!」
聖母の笑みを浮かべている筈の先輩が悪魔に見えた。きっと錯覚じゃない。中身は悪魔なんだ。ボクの目はそこまで見抜くっ!
ボクは変なアビリティをゲットした。
「『明日こそは』……では?」
先輩は一瞬、困惑した顔を浮かべた後、表情を曇らせた。
俯き気味にぼそぼそと先輩は言葉を紡ぐ。
「後輩くん、明日っていうのは実に不明瞭なものよ。そもそも、来るかどうかも怪しいの……」
先輩に合わせてボクも声のトーンを落とす。
「いや、世界が滅びる前兆ぐらいがあるから、少なくとも明日はあるのでは?」
「どうしてそう言えるの? 後輩くんは最終○器彼女を最終巻まで読んだかしら?」
「あ、はい。読みました(先輩に読まされました)」
「あの物語で、明日はあった? 無かったでしょう?」
「………………そうですね」
「だから、精一杯にその日にできる事はやり切りましょう。諦めたら、そこで試合終了だよ」
「安○先生っ!!」
先輩のボケにツッコムのではなく、乗った。
「後輩くん、ツッコミも明日に取って置いてはダメ。本気の想いを、大切な人の心へ響かせるの…………」
「はいっ! ボク、頑張りますっ!!」
感動的なムードだが、所詮はボケとツッコミのネタなのだと思うと、悲しくなる。
だからボクは、先輩と後輩としての思い出にした。
定番ネタでレッツラゴーですね。
スラム○ンクは有名です。あのセリフはよくパロりますね。
最○兵器彼女は、一巻の最後が一番欝になりました…。最終巻は……やっぱり悲しいけど、感動? なんだか不思議な気分になりました。
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