61話 もちろん白スクに決まっているじゃないですか
「夏よ! 海よっ! 水着よ! 萌え萌えよぉぉっ!!」
暑い。熱い。
もう余りにむさ苦しいので、文章が適当になってしまった。最初の暑いはもちろん気温に対してだ。後の熱いは無駄にテンションが高い先輩に対してである。
ボクは何時ものように……夏休みだというのに部室に来ている。そうしないと、明日を迎えられないからだ。
「海ですか……暑いですよ」
ぐったりとテーブルに伸びながら、窓の外に見える入道雲をぼぉーっと見る。
先輩はひたすらにテンションを上げて、叫んだ。
「後輩くんっ! 水着よ! 水着が見れるのよ!」
「ボクは変態じゃないです」
「水着…………水着!?」
あっ、そうだ今日はあの人も居たんだっけ。そう、少し前に出てきた演劇部長の、空葉先輩だ。何故かボクの横の席に座っている。水着というワードに過敏に反応しているのは、気にしないことにしておく。
「どうしたの空葉くん?」
何やら思案顔の空葉先輩を見て、先輩が首を傾げた。
声を掛けられて、空葉先輩は先輩の方へと目を向けた。
「水着なんですよ」
「そうだけど、それがどうしたの?」
「水着……水着ぃ……ワンピース型? ノン! ビキニ? ノン! イエス、スクール水着!」
……空葉先輩は、何も言わなければ格好いいのだけれどな。初登場時も、何やら怪しかったし、これは演技なのだろうか? それとも素?
「流石ね空葉くん! スクール水着こそが人類の希望!」
「ってそこで先輩が乗らないで下さい! 確実に男がする会話ですよ!」
すると、眉を吊り上げて先輩がボクを睨んできた。
「なによ! 男女差別はダメなのよ!」
「いえ、差別云々ではなく、単純に考えて女の子がする会話ではないですって!」
「そうやってぇ、子ども扱いするぅ!」
「だって子どもでしょう!」
「この物語に登場する人物は、すべて18歳以上です」
いきなり空葉先輩が割り込んできた。
それに対して即座にツッコミを入れる。
「空葉先輩もエロゲのパッケージに書いてあるようなセリフを言わないでください!」
「わ、わたし……もう18歳を超えてたのね…………」
フラリクラリと先輩が床に倒れ込んだ。そんなにショックだったのか。
「なんでそこで先輩は真に受けるんですか!?」
ボクは先輩の元へと駆け寄り、虚ろな目をした先輩を介抱する。
「あぁぁ……懐かしき、あの校舎。皆の笑顔」
「現実逃避しているようにしか見えませんって! って懐かしきもなにも、いま校舎内にいるじゃないですか!」
「さーつきちゃん、はあーい、お友達かい? うん、みっちゃんっていうの」
「こ、壊れた!? 先輩? 大丈夫ですか? というかみっちゃんって誰ですか!? しかもさつきちゃんっていうのも誰!?」
「答えはと○りのトトロを見ればわかります」
「いや、先輩、だからなんですか! 早く現実に戻ってきてください!」
「少年よ、時には一人で考えるのも――」
「空葉先輩は黙っていてください!」
また割り込んできた空葉先輩を一蹴し、先輩への対応を続ける。
「後輩くん……柔らかい石は……良い笑顔の者に」
「柔らかい石ってなんですか!?」
「しろ○ね大量生産の暁には、ジ○ン軍の圧倒的戦果を得る事に……」
「それを言うならビグ○ムですって! 確かにし○がね強いですけど」
「少年よ――」
「空葉先輩は割り込まないでください!」
またやらかそうとする空葉先輩に釘を刺す。
……カオスだ。空葉先輩の介入によって、ここまで部室が混沌と化すとは。
その後、脳内設定が18歳以上になった先輩を現実に引き戻すのに3時間ほどの時間を要した。正直、先輩の脳の構造が一般人であるボクらとは規格が違うのでは? と本気で疑い始めている。
いや、事実なのかもしれない……。
水着の話にしようと思ったら、ずれました。
なんでかな? やっぱり暑さのせいだよね……。うん、あの暑いのが全部悪い。
ああ、早く涼しくならないかなぁ。
宿題を一週間で片付けようと奮闘する今日この頃。