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59話 嘘つきジェシカと壊れた圭太

「ワタクシ、参上!!」


「うわっ! なんでいきなりいつぞやのライダーみたく登場するんですか!」


「少し前に、微妙にライダーについて触れたからですわ」


 妙にテンションが高いジェシカ先輩の出現で、ボクの読書タイムは妨害された。まだ、部室に先輩は着ていない。だから、平和のはずだったのだが……。

 上機嫌なジェシカ先輩は、いつも先輩が座っている席の一つ横に腰掛けた。そして、ボクへと視線を固定する。


「な、なんですか?」


「ん? ちょっと、圭太さんの観察をしようと思っているだけですわ」


「正直でいいですね」


「ワタクシは常に自分を偽りませんわ!」


 いや、確かに誇れることかもしれないけど……。なんだかな。


「あの、それでなんでボクを観察するんですか?」


「それは秘密ですわ」


「そうですか……」


 お互いに黙ると、部室はとても静かだった。やっぱり先輩が居ないととても平和だ。

 どうやら本当に見てくるだけなので、ジェシカ先輩と会話をせずに読書を再開することにした。テーブルに置いた本を手に取り、帯が通されたページを開く。


「………………」


 少しだけ、ジェシカ先輩の視線が気になったが、まぁそれくらいなら我慢できた。



 一時間ぐらい経過しただろうか。ボクは読み進めたページ数から大体の時間を割り出した。


「あの、ジェシカ先輩、先輩から何か聞いてますか?」


 ジーっとボクを見ていたジェシカ先輩がキョトンする。


「どういう意味ですの?」


「流石に来るのが遅いかな、と思っただけです」


「……圭太さん、なんだかんだ言いつつ、咲彩のことを気にしてるんですわね」


「いえ、別にそういうわけでは……」


 それでも探るような目でボクを見てくる。数秒間それをやられてとても居心地が悪いきがしてきた。


「ま、いいですわ。咲彩でしたら」


 やっと開放され、ボクは深く息をつく。


「少し、用事があると言って今日は家に帰りましたわ」


「…………えっ?」


「だから、家に帰りましたわ」


「ええっ!? 帰ってるんですか!? だったら最初に言って下さいよ!」


「言ったら帰ってしまうと思って黙っていましたわ」


「……確かに帰りましたけど」


「でも、もう観察も充分やりましたし、帰ってもいいですわ」


「そう、ですか。でも、なんのための観察だったんですか?」


「え? そ、それは……」


 ジェシカ先輩が躊躇うように口を閉じた。


「あの、そんな反応をされると余計に気になるんですけど」


「圭太さん、言っても泣かないで下さいね」


「え、ええ」


「次の小説の主人公はヘタレな性格にしようとしてますの。そこで、咲彩に相談したところ、『後輩くんを観察するのがベスト!』と言ってましたわ。だから、こうして観察を」


 ヘタレ……ヘタレ……ヘタレ……。

 ボクは瞬間、部室の端に移動し、蹲った。


「ええ、自覚してますよ……。ボクはヘタレです。でも、どこぞの主人公のようにもてたりはしないんです。覚醒とかないですし、最強設定とかもないです。ボクなんて主人公の座を奪われるようなヘタレです。そもそもモビルスーツの操縦なんてできないです。一般人AとかBとか……そんなのです。ディート○ルトに、普通だからいいんです、って言われる扇さんですよボクは……。そうですよ、二期の途中からどんどん嫌われてしまうんです」


 もう凹んだ。全力で凹んだ。全身全霊で凹んだ。

 そのヘタレというのが、あながち間違っていないことが余計に傷付く。


「あの、圭太さん?」


 ジェシカ先輩ですらおろおろしてしまう、このボクのネガティブパワー。『遊戯起源』の前に得た恐ろしい力、『ネガティブフェイス』。あの東方のネイティブフェイスとは全く関係ありません。

 あの事件で凹みまくったボクは、背負い切れない罪から逃げ出す為に、ただ不幸な子を演じた。今思うに、それはとても卑怯な行いだったと思う。


 今だって、ちゃんと現実に向き合わなくてはいけないのに……それなのに、逃げている。


「ボクは最低だぁ……」


 膝を抱えて、顔を埋める。


「圭太さん……」


 ボクの体が温かいものに包まれた。


「えっ……?」


 自分の膝に埋めていた顔が、今は柔らかいものに包まれている。


「圭太さん、あなたがどんなものを背負っているかはわかりませんが、辛いのなら、辛い、と言うのも大切ですわ」


 ジェシカ先輩が、ボクを抱きしめていた。膝立ちをし、ボクを横から包み込み、頭がちょうど……胸に…………。それは置いておく。

 密着した体。良い匂いがした。心が落ち着く。

 ボクには……本当は余裕なんてないのかもしれない。毎日、毎日、放課後先輩に会って……それでなんとか平常を保っていたのかもしれない。あんなどこかずれた先輩が、救いになっていたのかもしれない。


 ――先輩に会いたいな。


 そんな血迷ったことを一瞬でも考えてしまったからいけなかったのだ。


「後輩くん! 忠犬のようなあなただから、今もわたしを待って……って……って……」


 先輩が部室に入ってきた。

 ボクとジェシカ先輩はまだ密着しております。どうやって言い訳をすればいいんですか!?


「あ、あはは、部屋、間違えちゃった。ごめんなさい〜」


 先輩はおどけて部室を後にする。


「……助かった」


 すぐにジェシカ先輩から離れようと思った。だが、


「圭太さん、逃がしませんよ」


「へっ?」


 悪戯の笑みを覗かせるジェシカ先輩。ボクはそれを見て、すべてを理解した。


「ってここはわたしの部室よ!! 誰よ、そんなふ、ふふふふふしだら行為へと興じようとする淫乱な生徒は!!」


 幾らあの先輩でも、すぐに戻ってきた。そして、寄り添うボクとジェシカ先輩を睨みつける。

 足音が死刑宣告に聞こえてくるのは幻聴ではないと思う。


「えっ……後輩くん、それにジェシカ……」


 驚愕する先輩。

 内心では楽しんでいるであろうが、表面上は困った顔のジェシカ先輩。

 そして、死を悟ったボク。




 ボクの明日はどっちだ! 次回、『世界の中心で愛を叫べ!』でお会いしましょう。

 ジャン、ケン、ポン! うふふふ〜。


 べ、別にオチが思いつかなかったわけじゃないんだからね! と現実逃避してみる。


 あは、あはは、あははははは…………。


 意識がフェードアウト!!

某ライトノベル風のサブタイトルでした。


ホント、更新の頻度が落ちてきて申し訳ないです。暑さでネタが浮かばないのと、日々の忙しさによって中々厳しい状況であります。


向こう側からの迎えが来そうな今日この頃。

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