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54話 豚インフルエンザって結局なんだったのだろう

「晴れ、ドキドキ、豚!!」


 奇声を発する先輩をスルーしつつ読書へと勤しもうと思っていたが、案の定、殺気をほのかに匂わせた視線を向けてくるので、ツッコミを入れることにする。


「ドキドキってなんですか?」


 よくぞ聞いた、と言わんばかりの笑顔で、先輩は椅子から立ち上がる。


「晴れときどき豚って感じのタイトルは聞いたことがあるから、そのパロディ作品よ!」


「いえ、ですから何がドキドキなんですか……」


「晴れと豚が見詰め合ってドキドキしてるの」


「シュ、シュールですね……」


 ボクの脳内では、お日様と丘の上に立つ豚さんが見詰め合うシーンが浮かんだ。二人(?)の頬は紅潮している。お日様は赤いし、豚も日に当たりすぎている、という解釈はナンセンスだ。


「きっとこの本を出版すれば大ヒット間違い無しね!」


 一冊の本を頭上へと掲げる先輩が、爛々とした輝きを放つ瞳をしながら吠えた。


「いえ、あの……それは少し難しいかと……」


 とりあえず止めねば、とボクは言葉を挟む。そんなボクにギロリと一般人が到底放つことができない眼光で射抜いてくる。腰が浮くような気分がした。

 その殺人光線に怯えつつも、先輩とちゃんと向き合う。


「と、とりあえず、その本、読ませて下さい」


「成長したわね後輩くん! とくとご覧になりなさい!」


 投げて渡してくるかと思ったが、ちゃんと近くまで歩いてきて、手渡ししてきた。おずおずとそれを受け取り、自分の椅子へと戻る先輩の後姿を一瞥してから本の表紙を確認する。

 表紙には、紅○豚のポルコ・○ッソが描かれていた。ちゃんと許可を取ったのだろうか?


 まじまじと表紙だけを見ていてもしょうがないので、中を開く。

 一ページ目から本編がスタートしていた。



〔春風がそよぐ岸辺に、一匹の豚が居た。豚は遥かなる太陽を仰ぎ見て、ウットリとする。

 その豚を見下ろす太陽もまた、ウットリとしている〕


 なんてシュールなんだ。本編はそんな感じに、二人の恋愛模様を追っていた。

 しかし、オチがなんとも酷かった。愛し合う二人だったが、豚が宇宙船の実験にて、搭乗する動物の一匹に選ばれたのだが、その宇宙船が太陽に突っ込んで終わるという救いようが無いエンドだった。

 最後の豚のセリフがなんとも涙を誘う。


〔俺の丸焼きくってくだせぇ。それが、俺の最高の幸せだぁ〕


 そう言って、太陽へと飲まれて行く。

 もう涙が……涙が、


「涙が溢れるわけがないですって!!」


「ええっ!? どうして、感動できる悲恋じゃない!」


 ボクの叫びを受けて、先輩が驚愕する。


「どこら辺ですか!? 主人公の豚がポルコに変換されて感動もなにもないですよ!」


「飛べねぇ豚は、ただの豚だ。豚テキにでもして食ってくれ」


「いえ、ポルコさんそこまで言ってないですって!」


「飛べねぇ鳥は、ただのペンギンだ」


「なんですかその豆知識的発言!? というか関係ないですって!」


「そうやって文句しか言わないんだから……。だから後輩くんはわたしに好きになってもらえないのよ?」


「いえ、別に」


「もうツンデレは飽きたって言ってるでしょう!」


「違いますって!」


「そうやってヘタレの道を極めようとするんだから……。もう知らない! 後輩くんなんて裏路地でグサッとヤンデレヒロインに刺されちゃえばいいんだわ!」


 ぷんすかと怒りながら、先輩は部室を去ろうとする。

 罪悪感を微妙に抱いたボクはそれを呼び止めようかと迷っていた。


「もういい! ジェシカに頼んで、また書き直してもらうわ!」


 ちょって待ってくれ、あの作品ってジェシカ先輩の作品!? ……先輩から頼んで書いてもらったような発言……つまり、借り……。ということは、その後に世にも恐ろしいことが待っている。

 そして、今先輩は更に借りを作ろうとしている。つまりは、もっと恐ろしいものをジェシカ先輩に要求される……。


「全力で止めなくては!!」


 すでに廊下に出た先輩をボクは追った。


 その後、二時間の死闘を得て、ボクは先輩の説得に成功する。

 凄まじいその戦いは、後に生徒の中で、『紅の漫才部』という異名を勝ち取るものとなった。主にボクの撒き散らした血からその名が付いたのは間違いない。

そんな気がするのは、余り県内で流行らなかったからでしょうか? いえ、なんでもいいのですが。


はい、全編を通して豚さんの話。

いえ、私は豚でもピザでも無いです。寧ろ痩せ過ぎって言われます。別に何も努力してませんがね。


起きている時間のが短かった今日この頃。

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