53話 今までのすべての話が新カテゴリーの模索だった!?
「やっぱり絶大な人気を得るには、新ジャンル確立が重要よね」
何時もの部室、何時もの位置で、何時もと同じタイミングに先輩は、突如と口を開いた。
難しそうな顔をする先輩の顔をチラッと確認し、ボクは読み進めていた本を閉じ、テーブルに置いた。
「まさか、新ジャンルを考え出そうなどと言うのではないですよね?」
「んーん、流石にそれは難しいと思うの」
んーん、という言い方が実に先輩らしい、とボンヤリと考えつつ、妥協したことには心底驚いた。あの先輩が難しい、といってこういうことを諦めるのは初めてではないだろうか? それぐらいの快挙である。
「ではどうするんです?」
んんん、と唸りつつ先輩は腕組みをし、眉を寄せた。
「それでね、ジャンルの確立は難しい、というのはわかるの。
でも……そこでわたしは考えたわ。ツンデレ、ヤンデレ、そういう存在は確かに昔から存在した。しかし、それを言葉で括る、というのはなかったわ。つまりカテゴライズするということ。これは、新ジャンル確立よりは簡単だと思わない?」
「思いません」
ボクは即答する。無から有を作り出すのは確かに天性の才能などが主というのはわかる。それと同じでカテゴライズ、新しい枠組みを作るというのにも、センスと何かしら卓越した発想などが必要だ。
「ど、どうして後輩くん!? この作品を、WWW的に広めたくないの!?」
驚愕と失望をあらわにした瞳がボクを刺す。ちくちくする。
「ワールド・ワイド・ウェブですね。ってそんな豆知識はどうでもいいんです。この作品を広める為に、そのカテゴライズの発足されたってことで人寄せをしよう、ということですよね?」
「そうよっ! 流石は後輩くん!」
「そこで張り切る気持ちは今一理解できませんが……とりあえず! かなり難しいですから諦めてください!」
「ぶぅ〜後輩くん、そういうのは、やってから言いなさい!」
正論だと!? 先輩はどうやらちゃんと成長しているようだ。
「な、ななななんでそこで後輩くんが泣くの!?」
腕に顔を埋め、嗚咽を漏らすボクに先輩が酷く狼狽する。
「だって……先輩が大人の階段をちゃんと上がっているんですよ! ここで泣かずにどこで泣けと?」
「大人の階段のーぼーる〜〜♪ きみはもう手遅れっさ〜♪」
「なんという絶望的歌詞! というか先輩はもう手遅れ!?」
すぐに顔を上げると、先輩は静かに涙を流しながら、大人へと近づいたことを心底悔やんだ様子で、歌を口ずさんでいた。
なんだろう……物凄く遣る瀬無い。
「まあ話がずれたけど、後輩くん、わたしはちゃんと準備をしてきたのよ! 新カテゴリーを引っさげてカテゴライズ界に殴り込みよ!」
凄い! 先輩がちゃんと前もって準備をしていた。なんだろう、奇跡って本当にあるんだねっていう感じの心境だ。
それにしても相変わらず切り替えが異様に早いな。馬鹿にされていることに気付かずまた本題に戻れたから追求しないことにしよう。
「凄いですね先輩。それで、その新カテゴリーとは?」
両手をバッと大きく振り上げ、先輩はクルリクルリと部室内を回る。
「後輩くん! ズバリ、この作品のカテゴリーは!!」
ゴクリ、とボクが唾を飲み込む音がいやに大きく響いた。それもそのはず、先輩もボクも身動き一つしていない。
先輩がボクを見る。ボクを先輩を見た。
「そう! その名も、『箱庭系新感覚駄弁り型ノンストップギャグコメディ』!!」
「長い! ウザイ! どうでもいい!!」
ボクのツッコミを受けて先輩がおいおいと泣き出した。
「酷い……後輩くんのツッコミでわたしの体はお嫁に行けないものに……」
「なにを大げさに……。とりあえず! 長すぎです」
「長すぎるぐらいがちょうどいいのよ! それが今の日本の風潮なんだから!」
「……まぁ今までにないカテゴリーだというのは認めますけど……」
「ググってみたら該当する作品が5作品もあった……」
「ってええ!? あるんですか!? そんなふざけた作品が他に4作品もあるんですか!?」
「残念ながら……。その内の一つが、生徒○の一存シリーズだというのは秘密!」
「言ってるじゃないですか……」
「でも実はこの作品、愛を育むヒューマンストーリーが本筋」
「ええ!? どこら辺がですか! しかも誰と誰の愛!?」
ボクと先輩、とかだったら即刻この作品への出演は控えたいと思う所存です。
「ワタクシと咲彩以外に考えられませんわ!!」
「何時の間に!?」
振り返ると部室のドアにジェシカ先輩が持たれかかっていた。どうやらボクと先輩の会話を傍聴していたようだ。でも、その手に握られている録音機器はなんだろう? いや、深く考えたら負けだ。
「却下」
「却下って……まだカップリング決まってなかったんですか!」
正面を向き直し、冷たい一言でジェシカ先輩の言葉を一蹴した先輩を見る。何故か椅子に座って、碇ゲ○ドウ的なポーズの腕組みをして椅子に座っている。
「後輩くん、発言する場合、挙手をするのがマナーというのを幼稚園で習わなかったのかね?」
硬い声で怒ってきた。
「幼稚園では習わないかと……」
「おほんっ!」
「すみません」
偉そうな咳払いによって空気を察したボクは素直に頭を下げた。
「とりあえず、圭太さんもお座りになりましたら?」
「何時の間に!?」
ボクの横の席にジェシカ先輩が、これもまた碇ゲン○ウ風に腕組みをして腰掛けていた。
恐い顔をする二人にぺこぺこ頭を下げながら、ボクは自分の席へと落ち着いた。
「では、第五十三回新カテゴリー発案会を始めよう」
先輩のその声で場の空気の緩みが一切消える。といっても、三人しか居ない部室だが……。
それにしても五十三回? どのタイミングで五十二回の会議が行われていたんだ? 物凄く気になる。
「あの、先輩、前回の五十二回の会議は何時行われたんですか?」
「発言は挙手を」
「すみません……」
一度頭を下げてから、右手をまっすぐに上げる。
「後輩くん、発言を許可します」
先輩からの許しが出たので、ボクは腕を下ろし、立ち上がった。
「前回の五十二回の会議は何時行われたんですか?」
「二度も同じ事を言わなくてもいい!」
「え、ええええぇぇ!?」
酷い。酷いよ先輩。
ボクは精神的に大きく凹み、そのままテーブルへと突っ伏した。
そんな態度を取っていれば注意されるのは当たり前。一日中、そうやって二人の先輩にいじられ続けた。
アウェーの洗礼とはこのことか……。
違いますけどね〜。
今更ですが、あとがきの一行目は大概、サブタイトルへのコメントです。
さて、新カテゴリーですか……。
もしも自分で考えたものが広まったら、とても爽快のような感じがするんでしょうね。
勉強はできなくてもいいから文才が欲しい今日この頃。