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50話 別に50話記念という訳ではないようです

「後輩くん、今日はパロディを一切入れないで頑張るわよ」


「そ、そんな、無茶ですっ!」


「弱音を吐いちゃだめよ。この作品から、寧ろネタを作るわよ!!」


 今日の先輩は本気のようだ。しかし、試験効果によって、相変わらずテーブルに体を突っ伏している。

 ボクはその空元気な先輩の様子に呆れつつも、正直な気持ちのツッコミを入れた。

 この作品でパロディネタを取ったら何が残るというのか……。


「あの先輩、それって物凄く難易度高いですよ。まるで、」


「はいっ! そこで例えを出さない!」


「すみません……」


 先輩の所為で、自然とネタが出そうになっている。複雑な成長だ。

 突っ伏す先輩が、上目遣いでボクを見てきた。やっぱり、覇気が無く、どこか弱弱しく見える。別に守りたいとか、そういう気持ちは湧かないのは仕様です。


「まあいいわ……。それで、ネタを無しにどうやって会話をすればいいの」


「そこからですか。先輩の日常会話ってどれだけネタに溢れているんですか。なんだかある意味幸せ者ですよ」


「ああ、わたしの素晴らしき生活を妬んで後輩くんに裏路地でグサッと……」


「いいえ、ボクはそんな事しません。その程度の憧れで、一生を台無しにしたくないです」


「正直に言っていいのよ、羨ましいでしょう?」


 うふふ、と笑みを零してこっちを見てくるのだが、別になんとも思いません。

 頬杖を突きながら、ボクは更に呆れ顔を顰めた。


「先輩、ボクはですね、まだ正常な人間です。そんな、ギャグ漫画のような生活を送る気なんてさらさらありません。はい、丁重にお断りさせて頂きます」


「丁寧に言ってくるのがまた後輩くんのキャラの味が出ているわね」


「何時からボクはそんなキャラ位置に?」


「元々はそうだったでしょう。なのに日に日に壊れていくものだから……」


 それって原因はすべて先輩ですよね、とは口が裂けてもいえない。何故って、それはまだ生きていたいからだ。ボクは自殺願望など持ち合わせていない……と思う。


「すみません。確かに、初期設定からは確実にずれはじめているのは自分でもわかってます、でも、人は変わる生き物ですから」


「まあ後輩くんのことはどうでもいいのよ、それより、」


「ってまたそのパターンですかっ! なんか冷たいですよ!」


「最近、クーデレに転職しようか考えているから、その練習なのよ」


「しなくていいです。というか、先輩はもう読者から変人キャラとして、」


「何か言った?」


「いいえ」


 恐い顔して睨んで来た。不用意な発言は気をつけなくては……。試験が終わった後のボクの運命を左右しかねないのだから。

 先輩は、だらしなく伸びていた体を起こした。それだけで息切れをするのはどうかと思ったが、特にツッコミは入れないことにしておく。


「後輩くん! どうしてツッコミを入れないのよ! 流石にこれだけで息切れする人はいないでしょう!!」


「す、すみません……(ツッコミのポイントだったとは)」


 憤慨し眉を吊り上げた先輩は、腕を組んで、ボクに鋭い眼光を浴びせてくる。

 きゅーっと心臓が苦しい。


「ま、いいわ。とりあえず、この作品独自のネタを作り出しましょう!」


 すぐに明るい笑顔をへと転じて、元気よく宣言をした。まだ心臓に痛みが残っているので、引き攣った頬を押し上げて、ボクは無理矢理に笑顔を作った。


「いいですね。難しいかもしれませんが、それが成功すればきっと物凄い人気になりますよ」


「うんうん、流石は後輩くん、よくわかっているじゃない。さて、そこでどういう方向のネタにしたい?」


「ん〜そうですね。やっぱり、インパクトがあって、日常でも使えるようなものなら流行ると思いますよ」


「じゃあその方向で行きましょう。こういうのって、やっぱり一言がいいのかな? それとも、一連の流れのがいいかな?」


「どちらもいいと思いますけど、それぞれに難しさがありますよね。一言なら、忘れられないような絶大なインパクトが必要ですし、一連の流れとなると、独特で他の作品にはないオリジナリティーが必要になりますからね」


「困ったわね。ものの三秒で決められると思ったんだけど……」


「どれだけ物事を簡単に考えているんですか先輩は……。まぁとりあえず、一言がいいですか? それとも、流れの方ですか?」


「そうねぇ、流れといっても、最終的には後輩くんが殴られるからなぁ」


 自覚があってやってんですね……。ちゅっと凹む。

 悲しい現実に意気消沈しそうになるも、なんとか堪えて、ちゃんと現実と向き合える生き方をしようと決意した。

 ボクのその刹那の戦いを知らない先輩は、思考中のようで、ん〜と唸っている。邪魔をなると思ったので、ボクはボクで考えることにした。


 静かな時間が部室に流れる。

 もう六月も終盤、部室は熱気に包まれ始めている。僅かに制服に滲む汗にイライラしつつも、ボクはたいして働かない脳をフル稼働した。

 オリジナルネタ、か。


 今更ながらも、この作品って本当にパロディしかないな、と思う。それが、凄いことなのか、しょぼいことなのかの判断は難しいが、やはり、オリジナルのネタで人気になるというのはなんとも魅力的に思えた。

 二人だけの漫才部。そこから生まれたネタが、日本中で使われる。

 そう考えると、なんとも規模のでかい話ではないだろうか……。


「後輩くん、なんというか、漫才部的……いえ、わたしたち的な一言で、ネタを考えましょう」


 ボクの思考が切りの良いところで、先輩のどこか透き通った声が聞こえてきた。

 少しだけ下がっていた頭を上げる。


「それ、いいですね」


 正直な感想を伝えた。

 先輩、ボク、このたった二人だけの漫才部。そのボクたちのカラーを示すようなネタ。

 漫才部の存在を示すことにも繋がるな、となんとなくしみじみと思った。


「でしょ? 早速考えましょう」


 うきうきとする先輩だが、ボクも平然としているが、なんだか体が内側から温かになるのを感じていた。理解不能の喜びは、奇妙には思えず、ただ……自然と笑顔を誘う。


「はいっ。先輩とボクらしい言葉……」


 どんなものだろう。


「やっぱり、わたしと後輩くんの関係を表すようなものがいいわね」


「先輩と後輩、というものですか」


「そうだけど、ちょっと違い気がするわ」


「……そうですね、確かに、それだけでは語れない何かが……」


 ボクは何を言おうとしているんだ? 物凄い恥ずかしいことを口にしようとしていないか?

 血迷い始めたボクの暴走に、自分自身で驚く。


「そうよっ! わかったわ! わたしと後輩くんの関係っ!!」


「えっ……?」


 元気溌剌な先輩が、椅子の上に立ち上がった。もう試験に屈するような腑抜けた魂は覚醒し、何時もの状態に戻ったようだ。

 上から見下ろしてくる先輩と目が合う。爛々と神々しく輝いた瞳だ。


 そして、ゆっくりとその言葉は紡がれた…………。


「わたしと後輩くん、つまり、飼い主とペット! その関係から生み出された究極のネタ!! それは、」


 ――えっ?


「道路に右側と左側を分かれて進む飼い主とペット。そして、その間を一台の車が通った……。運転手は、「もしかしてリードがある?」と考えがよぎった。すぐさまブレーキを掛けるも、車が停止したのはその飼い主とペットを抜いた後だった。運転手はすぐに振り返る。

 振り返った先に広がっていたのは、さっきと何も変わらずにそれぞれが離れたままに歩く飼い主とペット」


 ――んん?


「それを見て、安堵して男は呟いた。『よかった……。二人の間にあったのは絆だけだった』と、ね……」


 満足いったのか先輩は椅子に腰掛けて踏ん反りがえった。

 ボクは混乱しつつ、質問をする。


「あの、さっきのは?」


 何言ってるの? という顔で先輩は答えた。


「あれこそが漫才部の本質を的確に捉えたネタよっ! 色々と変化をきかせて、様々な場面で使えるわっ!!」


「ボクと先輩の関係は……」


「飼い主とペットでしょう? それ以外に何かあるの?」


「…………」


「そんな泣きそうにならないで、これで漫才部オリジナルネタが完成したわ!

 寄り添う二人を妨害した時に、『……そうか、絆で繋がってるのか』って言うのよ」


 なんでボク、泣きそうなんだろう。

 そうだっ! ペットって言われたのが悲しいんだ。うん、そうに違いない!

 泣きそうなボク、勝ち誇ったような笑みを浮かべる先輩。


 ああ、本当に飼い主というより、理不尽な主とその奴隷みたいだよ……。

 で、ここで格好を付けてさっきのネタを使うのか。


「押し付けじゃない、金の問題じゃない、その暴虐な主と奴隷の間にあったのは、絆であった、とさ」


「??」


 ボクの突然の言葉に首を傾げる先輩。

 何か聞かれても答えられないのでスルーすることにした。


 ネタというより、なんだか感動的な言葉だな、と思えてきたのはきっとボクが先輩からの日々のいじめで心を病んでいるからに違いない。

面白くないですね。

ちょーっとパロディを入れないで書こうとすると、微妙な感じになります。


ちょっと感動的な気がするのは、きっと50話だからです。


いつの間にかに夏っぽい気温だな〜と思う今日この頃。

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