表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/81

48話 電波な歌詞の曲はテンポがいいので割と好き

「フィギュアもある意味三次元〜〜♪」


 先輩が壊れた。部室の端で蹲り、怪しげな歌詞の曲を歌っている。

 なんとも不憫な姿だが、たかが試験ぐらいでどうしてそこまで可笑しくなれるのか、やっぱりボクにはわからない。結局のところ、他人の考えを完璧に理解することなど無理に違いない。


「あの先輩、大丈夫ですか?」


「だめ」


 即答だった。そしてまた、歌い始めた。ボクはそれを黙って視聴する。


「あお〜げば〜とうとし〜〜和菓子の恩〜〜♪」


「って先輩!! 和菓子ですか! そこは、先生にお礼を言うところでしょう!!」


「ナイス……」


 親指を立てた右手をボクへと向けてきた。どうやら、ツッコミを入れるポイントでよかったようだ。それにしても、元気が無いのか、すぐにそのサインは下ろされた。

 死んだ魚の目をした先輩がまた歌を口ずさむ。


「わたしのニーソックスかえ〜してよねっ〜〜♪」


 さっきは卒業関係だったが、またアニメやゲームの方に戻ったようだ。

 なんだかマニアックな歌詞だな。やっぱり、先輩ってそういうの好きなんだろうな。


「エプロンと〜っちゃいけませーんっ〜〜♪」


 ……どんな状況の曲なんだ?

 ツッコミを入れるべきなのか、それとも黙って聞いているべきなのか、その判断が妙に難しい。やっぱり先輩の知識量はボクの比ではない、到底すべての元ネタがわかる訳が無い。


「一万円と二千円くれたら愛あげる〜〜♪」


 あれ? 今度は替え歌だ。ん? これは、ツッコミを入れるべきかな。うん、迷っていてもしょうがない、やろう!


「随分と軽い愛ですね! というかそんな愛いりませんって!」


 変化球気味のツッコミを入れた。オプションで手が出てしまうのは、先輩の日々の洗脳教育の賜物である。

 グー! と今度は左手でボクのツッコミを褒めてくれた。

 サインを下ろしつつ、先輩が口を開く。


「八千円くれたらもっと恋しくな〜る〜〜♪」


「やっぱ軽過ぎですって!」


「うんうん、良い感じね。でも、ネタがちょっと古い! っていうツッコミも欲しかったわ」


 どうやらギリギリ合格ラインらしい。ツッコミの道は険しそうだ。

 そのどうでもいい険しい道に嘆息しつつ、ボクは先輩に微笑みかけた。


「ボクも少しは成長しましたよね」


 体育座りをする先輩が首をゆっくりと横に振る。


「まだまだよ。やっと、おかまになれたぐらいね」


「えっ!? ボクって男にも満たないんですか!?」


「当たり前よ。世の中の男の人が後輩くんなんかと同じカテゴリーに入れられたら可哀想でしょ? まあおかまの人も可哀想だけど……」


 ボクはどうやらおかま以下らしい。いつぞやの数学的力関係の図で、五円チョコ以下だったんだ。人間になれただけよしとしよう。


「後輩くんへの評価は、ファン○シースターユ○バースぐらいね」


「それって2006年度のクソゲーオブザイヤーじゃないですか……。P○Pのやつはやりましたけど……えっと、ノーコメントで」


「しょうがないわね。じゃあ、スペ○ンカーくらいでどう?」


「それはそれで悲しいですね。あれって本当にそんなに難しいんですか?」


「知らないわ。でも、著者が持っているらしいの。それでね、『頑張って二面行けたよぉぉ!』って喜んでるわ」


「二面って……」


「しょうがないじゃない。本当にちょっとした段差で死ぬんだから……。『鬼畜過ぎ!』ってゲーム好きの著者がコントローラーを投げ出したぐらいよ。それで、一時期ファ○コンが動かなかったのは秘密です」


「言っちゃってるじゃないですか……」


「大丈夫。わたしは、読者を、」


「それは前に言いました」


「あぅ……。こうなれば、」


「な、何をする気ですか?」


「逃げるが勝ちっ!!」


 先輩が立ち上がり、猛ダッシュで駆けて行く。

 試験で力が無いはずなのに……。

 すると、ボクの心を読んだかのように、


「ふふっ、こういう時のためにエネルギーを蓄えてたのよっ!!」


 と言って、廊下を覗いた頃には、その姿は確認できなかった。

 なんというか、きっと、今日もボクに勉強漬けにされるとか思って、逃げたのだろう。


「やれやれ……」


 ボクは、手に負えない先輩に呆れた。

 ふらふらと椅子に座り、黙考する。


「明日は絶対に逃がさないようにしなくては……」


 方法が決まったので、そう決意し、ボクもまた部室を後にするのだった。

サブタイトルが私の気持ちだけという、もうそれすらギャグ的な感じの話です。

咲彩と同じく、私も試験によってパワーダウン中……。


それにしても、仰げば尊しって懐かしいな、と書いていて思ったりした。卒業、遠いと言えば、遠い……ってその前に受験だっ! ぎゃぁぁぁ……。


三回回って、わんっ! って言った人を初めて見た気がする今日この頃。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ