4話 いっちゃダメな事もある
「先輩、思ったんですけど、漫才をやるならテレビを見て芸人から学べばいいんじゃないですか?」
ある夏になり掛けた日の午後、ボクはそんな事を言ってみた。
ボクと同じくパイプ椅子に座ってグッタリと伸びた先輩は、だらしない格好のまま答えてくれた。
「ダメよ……。本当に人気な芸人はすぐに司会者になって、テレビでネタをやらなくなるわ」
「いや、ですけど売れ始めの……」
「いいわ……後輩くん、わたしの心の内に秘めた思いを、貴方に送るわ」
言い方がなんだか期待感を煽るが、ただたんに、芸人についての話をするだけだ。
先輩は椅子から立ち上がり、おもむろに部室内を歩き始めた。
「正直に言うと、今の芸人は……変人なだけよっ!! レッド○ーペットを見たけど、どうにも面白くないわ。なのに、『大笑いです!』なんて寒気する。どれだけ貴方達は笑えるんですか? って評価している人たちに問いたいわ」
「は、はぁ……」
随分と手厳しい。なんだか怒りの感情がありありと見えるのは、ボクの気のせいではない筈。
先輩は続けて語る。
「一番の問題は、トークで勝負してないのよ! あれはただ、インパクトと面白い喋り方で売れているだけなの。
わたしは面白い話を求めているのっ!!
だから、深○イ話を見ていた方が勉強になるわ。もっと言うなら、笑○を見るのが一番ねっ!!」
「確かに先輩の言いたい事はわかりますけど……」
「そうでしょう後輩くんっ!! 更に気に入らないのはね、小説を書いちゃったり歌を歌っちゃったりしてるとこよ!
小説は作家が書けばいいの。
歌は歌手が歌えばいいの」
「まぁそうですけど……。でも微妙にひがみに聞こえるのは……ぐはっ!!」
容赦の無い攻撃を受けた。やはり、先輩の前では油断はいけないようだ。
「後輩くんっ!! 今日はツッコミ無しよ! 真剣に話を聞きなさい。小学校で習ったでしょう? 話を聞く時は、その人の目を真っ直ぐ見る!! そして、黙る!!」
「は、はいっ!」
「よろしい。それじゃあ、芸人が――――――」
先輩のその話は帰宅時間まで続きました。
どうやら芸人の人が嫌いなようです。
そういえば、結局今日も殴られたな…………あぁ……。
別に芸人が嫌いな訳ではないですよ? お笑いが嫌いな訳ではないですよ?
と言っておきます。
まぁ…色々とやり過ぎてるのは少しどうかと思います。それに芸人が面白いのであって、ネタが面白くないのは私は事実だと思っています。