41話 つっこみのなく頃に(笑殺し編)
「今こそ、漫才部が立つ時!! さぁ神の子らよ! 立ち上がれっ!!」
「どうしたんですか初っ端から打っ飛ばして。今日は、何かあるんですか?」
「無いわ!!」
言い切った……。先輩は見事に言い切った。
呆れ顔を必死に隠しながら、反対の席へと立ち上がる先輩を見やった。
「……あの、最初のセリフに意味は?」
「無いわ!!」
またもや清々しいまでに言い切った。
「えーっと……はい、では読書に戻ります」
一応の許可を取り、ボクはまた本へと目を向ける。
「ぶぅ〜今日もまた一段と冷めているわね後輩くん」
「まぁ何時もの事ですから」
「そうね」
「そうですよ」
「そうねぇ」
「そうですよ」
「そうねぇ、出前は天丼でいいかしら?」
「ってなんの話ですか!?」
シュパッと自然と右腕がツッコミの動きを繰り出す。な、まさかここまで洗脳されていたとわ……。ボクの未来は真っ暗だぁ〜♪(少し壊れた)
先輩が、落ち込むボクにうんうん、と満足そうに頷いている。
「流石は後輩くんね。でも、そこは、『ピザに決まってるでしょう!!』のがよかったわ」
「いえ、ボクは日本人ですから、天丼のが」
「ってあんたはアメリカ人やろうがっ!!」
「グハッッ!!(ピザはイタリアですって……そもそも、日本人です)」
空高く舞い上がる…………ボクの体。ああ、天井が近い、近い、近い……ッッ!! 遂に天井に激突するまでに先輩のパワーが上がってる。
そして、ゆっくりと花びらのように落ちて行く。
背中から床に落ちて呼吸が一瞬止まる。
「うぐ……」
呻くボクを先輩が見下ろしてくる。
「ダメね後輩くん。わたしのツッコミという手刀に耐えられないなんて」
先輩は、はぁ〜と嘆息しながら首を振った。
「いえ、無茶です……あれ、既に人間技じゃないです……もちろん、良い意味で」
「お世辞を言ってもダメよっ!!」
「すみません(皮肉だったんだけどなぁ……)」
「もう、後輩くん、あの程度のツッコミに耐えられないようでは、吉○興業に入れないわよ」
「入りませんよっ!!」
「やっぱりわたしが見込んだ後輩くんねっ!!」
あれ? どうしてそこで喜ぶの?
心から嬉しそうに先輩は、瞳をキラキラと輝かせた。
「うんうん、そうよね、他人の力を借りず、単独での芸人デビュー! 流石は後輩くん、目指すレベルは常に上ね! まさに、夢はでっかく根は深く! って感じね!」
「あ、ああ、まぁ、うん、はい、そう、です、よ?」
「なんで最後が疑問形で、途切れ途切れなのかはツッコミを入れないことにするけど……。後輩くん、何時まで寝てるつもり?」
「えっとぉ……今、起きます」
どうやら無駄話をしている内に、既に体は完治していた。我ながら、恐ろしい体だ。もしかして、DG○胞が……。
まぁ段々と無敵の体へと進化しているのはあとで考える事にして、さっさと立ち上がろう。
仰向けの体を右腕で……で、で、で、で、で、…………これは。
うん、確かに先輩がすぐ側で見下ろしているよ。
でも……それってさ、今までは深く考えなかったし、気に留めもしなかったけど……スカートの中がきわどい。
「ん? どうしたの?」
無邪気な笑顔。
なんだろう、動き辛い。
ミスすれば、中が見えてしまう。興味があるとかそういうのは、まさかの先輩に抱く訳がなく、ここで重要なのは、見てしまったら、もれなくこの世とさようなら、ってところだ。
ど、どうしよう!?
「後輩くん、もしかして体調、悪いの?」
心配そうな表情を浮かべて、また一歩。
だ、ダメだ。恐い。恐いよ。本気で殴られたら幾ら鍛えられた体でも、DEAD!!
パニックだ。メダパニだぁ! あへ? あひゃほにゃら!?
落ち着くんだ。今は、クールになれ、と言う前原○一の如くクールになるんだ!
そうだ、焦るな、さり気無く、だ! そう、ゆっくりと立ち上がるんだ。
その奇行をなすボクへと先輩がまた一歩。
〔もう……ギリギリだったんだ。
後に、その少年は語った。そう、病院の白く清潔感が漂う中、どんよりとしながらも微笑を浮かべて。
『とにかく死にたくなかった』
インタビュアーの児玉ジェシカは、一日の半分を、怯えて過ごす津古溝圭太の言葉を受け、ただ、押し黙るしかなかった。
その一ヵ月後、急性心不全により少年、圭太は命を落とした。
最後の日、ナースコールで何度か告げた言葉は、
『足音がまた一つ余計に……』
というものだった。〕
「なんていうオチはどうかしら?」
ジェシカ先輩が微笑を貼り付けて、部室のドアへともたれ掛かっていた。
「まんまパクリですって……」
精神的にやつれたボクは、そのツッコミを最後に、気を失うのだった…………。
圭太の言う通り、ラストはまんまパクリです。
でも、OK! ですよね?
……なんだか、また遊び過ぎました。
ん〜眠いよぉ。そうだ! 寝よう!(海に行こう的なノリで)
うみねこやりたいなぁな今日この頃。