36話 リーマンは皆に大きな傷を残して行きました
「DVとはなんでしょうっ!」
急に、なんの前触れも無く、先輩が吠えた。
「ど、どうしたんですか?」
ボクは突然の大声に、読書へと集中していたためにピクッと肩を揺らした。
「だから、DVとはなんでしょうか、っていう話よ!」
「ドメスティックバイオレンスですよね?」
「違うわっ!!」
「え? 違いますか……。それじゃあ、なんなんですか?」
「引込用ビニル絶縁電線よっ!!」
「……えっ?」
なんと言ったんだ?
「あの先輩、引込用なんたらっていうのはなんですか?」
「だから、DVよ!」
…………んん? よくわからない。どうすればDVが引込用なんたらっていうのになるんだろう?
数十秒の黙考の末、頭が逆に混乱するという結果となった。
「先輩、なんの事ですか?」
「電工よ!!」
「デンコウ?」
「電気工事士よっ!!」
「電気……工事士…………ああっ! 資格の事ですね!」
「ふぅ。やっとわかったのね後輩くん。やっぱりダメダメね」
いや、誰だって分からないと思うような気がするけどな……。まぁそんな事は置いといて、だ。
ボクは向い側の席へと着席する先輩と目を合わせる。
「それで、さっきのDVというのは、試験での話なんですね」
やっとわかったか、と安堵の様な息を漏らす先輩に少々の怒りを抱くも、耐え、笑顔をキープ。
「うん、そうよ。一応言っておくけど、わたしは受けないわ」
「では、何故そんな必要無い情報を知っているんですか?」
「えーとね、話せば長くなるけど……。わたしの兄の和兄が、今度受けるみたいで、わたしに憂さ晴らしをするように教えてくるものだから、覚えちゃったの」
「……長くはないですが、そういえば先輩のお兄さんって……馬鹿をやって……」
「違うわ! 後輩くん、あれは職を失ってでもやるべきことだったわ!」
強く言い張る先輩。
そう、少し前の話だが、先輩のお兄さん二人は、この学校で偉業をなしたのだ。その内の、和兄さん、という方は、女子の水着をきわどいものへと変え、職を追われた。
「ボクはそうは思いませんが、まだ失業中だったんですね……」
すると、先輩は切なげに淡く微笑んだ。
「スーパーマ○オブ○ザーズならぬ、リー○ン○ラザーズの余波は厳しいのよ。だから、今では電気工事士はとても人気な資格なの! 元から重宝されていたけどね……」
それは、どこか悟ったような感じの言葉だった。ニートな兄を持つ辛さがよくわかった気がする。
「先輩も色々と大変ですね」
「ええ……。だから、電気工事士の資格試験を受けるあなた! 引込用ビニル絶縁電線の覚え方は、DVで、ドメスティックバイオレンスだから外へと出してもらえない=引込用、それで覚えると頭に残るわっ!!」
「ってええ!? 今日って本当になんの話ですか!?」
「後輩くんのバッキャロぉぉぉぉっ!! どうしてそういうところはツッコムの!? それに、職を失った中年の人々に現実を見せるなんて悪魔の所業よっ!」
ホームラン……。ボクは部室のドアを打ち破り、廊下へと転げた。
今日の先輩の右ストレートは閃光とも呼べる速さで、素晴らしい切れだった。きっと、兄のことで、色々とたまっていたのだろうな……ガクッ……。
ヒュ〜と寂しく風が吹き抜けていった。
ちょっと前の話ですね。
えっと……電気工事士の豆知識は、実際に受ける兄から聞いた話です。
なんだか、この話、面白くないですね。
えっと……とりあえず! 電気工事士を受ける人は頑張って下さいね!
そろそろ、長い眠りについていいかな? パ○ラッシュ……な今日この頃。