番外編1 圭太が紡ぐ物語(バトル編)
…………どうしてボクは、原稿用紙に向かって物語を書いているのだろう。
そうだ、これは、前回から繋がっているのだ。
先輩が、次回はボクに書くように、と言った。だから、今から自分で書かなくてはならない。どうにもな……ボクって文才とか無いですし。
とりあえず、先輩からの条件。
1、バトル展開
2、能力者
3、わたし最強
4、後輩くんはヘボ(次のワードを使用:愚者、無様、馬鹿)
5、漫才部による、世界平和
この五つが条件だ。どんな話だろう?
まぁ書くしかないのでボクはこうして原稿用紙に果敢に挑んでいる訳だ。
さて、見苦しいけど、ボクが書いた、物語、開幕。
パチパチパチ……。
〔世界は今、未曾有の危機に陥っている。資源の枯渇、領土問題、温暖化……。様々な危機が止め処なく、繰り返し人類に、地球の暗い未来を見せ付ける。
しかし、人類は屈しなかった。
寧ろ、その環境へと適応し、目覚ましい進歩と、進化を遂げた。
一つに、宇宙への進出が開始され、今では月には多くの人が暮らしている。
二つ目に、異能の力を持つ、『新人類』の誕生だ。
新人類は当初、辛い差別を受けた。しかし、そこに救いの道を見出した旧人類は手の平を返したように認め、崇拝した。だが、それは結果的に、旧人類と新人類の対立を防いだのだ。
そんな世界情勢の中、とある高等学校にて、一人の少年が悲しい運命へと直面していた。
「うわぁぁぁっ!! た、助けてくれぇぇ!!」
廊下にて、震え上がり、無様な悲鳴を上げるのは、この学校に暮らす(通学するですよね? 先輩に確認)津古溝圭太、という名の愚者である。
(先輩にボクの扱いをもう少しよくするように要求)
その圭太を襲うのは、多元世界よりやってきた怪人、モレトルティッド(先輩命名)である。
人の形をしているが、長い触角を頭に付け、とても奇妙だ。全体的に筋肉質なボディは曝け出されている。
モレトルティッドの厳つい顔が、圭太へと向けられた。
「貴様、やはり新人類だな!!」
「なっ!?」
「ふっはっはっはっはっは……。では、死んでもらおうか」(展開早過ぎでは?)
「うわぁぁぁ!! くそぉ! こうなったら、発動! 『蛇縛警報』」
圭太は新人類が持つ、力を発動させた。
光が迸る。
しかし、モレトルティッドは構わず突っ込んでくる。
「え、えぇぇ!?」
そのまま、鋭い手刀を受け、気絶する筈だった。しかし、そこで救世主が現れた。
「な、なに!?」
モレトルティッドの手刀が寸前のところで、止められている。
止めたのは、勝気な笑みを浮かべて一人の少女、そして圭太の先輩である、堂本咲彩だった。
長い茶色髪が、優雅に宙へと弛む。鋭い漆黒の眼光が、モレトルティッドを射抜いた。
「ふっ……そこの厳つい触角人間、後輩くんを苛めていいのはわたしだけよ!!」
と、傲慢(訂正:強気)な態度を取る咲彩。
「貴様ぁぁぁ!! 散れ!!」
モレトルティッドの拳が輝いた。そして、光の拳が咲彩へと放たれる。
すぐ目の前まで飛んできた光の拳になんの恐怖を覚えず、咲彩は声を張り上げるように、能力を発動した。
「『喪失流砂』」
咲彩の周囲で砂が荒れ狂う。そして、光の拳を掻き消した。
「そのまま奴を消え去りなさい!!」
声に反応し、『喪失流砂』は意思があるかのように、モレトルティッドへと迫る。
「や、やめ、ぎゃぁぁぁぁぁぁっ!!」
壮絶な断末魔を上げ、モレトルティッドは砂へと還った。
「ふっ、これでまた、世界の平和は守られたわね」
「流石です! 先輩!」
馬鹿な圭太が、キラキラと輝く咲彩へと跪き、称えた。
こうして、世界は未然に救われるのであった。
(修正点:能力の詳しい説明が必要。展開が早過ぎる。世界観がまるで意味不明。)〕
ボクは筆をおいた。書いているだけで、物凄い遣る瀬無い気分になる。
「そうだ、これは葬り去ろう」
決意し、ボクはその残念なお話をゴミ箱へと丸めて捨てた。
先輩は既にどっかに行ってしまっているので、ボクはさっさと家に帰ることにした。
荷物を片付け、バックを背負って、ボクは部室を去る。
トボトボと帰路へとついた……。
ボクが捨てた紙を、ジェシカ先輩が拾って悪用した。それをボクが知るのは、まだ先の話である。
圭太が私に楽をさせて……って考えるの結局私じゃん!!
はい、番外編です。別に番外編にする必要はないような気がしますが、番外編です。
そして、最後に明らかな伏線。
本編では、部室以外を舞台にする気はないので、圭太や咲彩の日常生活なんかは、この番外編を使おうかと……。
朝起きて、慌てて学校に行きそうになった今日この頃。