29話 先輩の復活、そして、忘却の彼方へ
「ふっふっふっふっふ……」
部室に黒い笑みを浮かべ、突如と先輩が出現した。
ボクはざわざわ粟立つ背筋に促され、振り返り、その声の主を視界に捉えた。
「先輩……どうしたんですか、そんな黒い笑みを浮かべて」
「……後輩くん、わかるでしょ?」
「いえ、わかりませんよ……」
面食らった顔を一瞬だけし、先輩はすぐさま黒い笑みを顔に貼り付けた。
その表情をキープしつつ、先輩はボクの向い側にある椅子の上へと立ち、禁断の想いをカミングアウトするが如く、叫びを上げた。
「テストが終わったわよぉぉぉぉぉぉぉっっ!!」
「あ、やっぱりそれ……ぐべらっ!!」
ウェ○カーをも凌駕する超高速でボクへと間合いを詰めた先輩が、容赦も躊躇いも無い左ストレートをボクの左頬に繰り出した。もちろん、クリーンヒットだ。
久し振りに殴られた、そんな思考が生まれるも、それではなんだか自分から求めているような気がして、すぐにそれを排除した。
ボクの体は、部室のドア側の壁に叩き付けられ、すべるようにして、床へと落ちる。
「うぅ……相変わらず、切れも威力も見事……です」
「褒めてもダメよ後輩くん! 完全復活したわたしは、足が付いたジ○ングより強いわ!」
「所詮……足は飾りですって……」
「ダメよ、そういう豆知識的補足はとっても不快だわ! 今日は調子が最高だから、もう一発……」
霞む視界の中、ユラリユラリと恐怖を駆り立てるように歩み寄ってくる。
「あ、あああ、すみません! すみません! ボ、ボクが悪かったです! 本当にすみません!!」
必死に訴えるも、逆に先輩はニマーっと気味の悪い笑みを零し、試験中の恨み辛みを語り始めた。
「そういえば後輩くん、テストによって元気が無いわたしによくも色々としてくれたわね。もうお嫁にいけない体にされたのと同意の苦しみだったわ……。
ねぇ後輩くん、ちゃんと、聞いてる?」
恐い……本当に恐い。もう冗談とかそういうの抜きで、もうこの世界とさよならできる恐ろしさだ。
「黙らないでよ、わたし一人で喋ってるみたいで変じゃない。ねぇ、答えてよ……ねぇ、ねぇ、ねぇねぇねぇねぇ…………」
「ひ、ひぃぃっ! すみません、すみません!」
「もう謝っても遅いよ……ね? 大人しく死のうよ」
笑顔で死刑宣告。
ボクへと止めを刺す為に、先輩は右手を振り上げる。
「あ、ああああ、すみません! すみません!」
必死に謝る、しかし、
「バイバイっ!!」
と、どこかのネゴシエーター並みに清々しい笑顔と声と共に、サ○ンアタックを超える凶悪的威力を持つ右拳が振り下ろされた。
その日の記憶はそこで途切れている。
いや、思い出したくも無い。
そう……忘却の彼方へ、いざ旅立たん…………。
サブタイトルが格好良いような気がする。
でも、はい……完全復活した咲彩に殴られましたね、圭太は……。
ん〜やっぱりワンパターン脱出方法を考えなくてはなりませんよね?
漫才部の部員を増やす? それはまだ先にしたいなぁ。
ちょっと展開に困っている今日この頃。