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27話 ラスボスは大概ある意味強い

「欝よ、欝よぉ……もう鬱々ってるわよぉ」


「初っ端からヘビーですね。それより、試験期間中だというのに、部活動をやろうとするその根性はなんなんですか……」


「酷いわ後輩くん、部活こそ青春! 部活こそ学生の本分! 部活、それ即ち人生!」


 格言っぽく言い放つ先輩は、声だけ元気で体はテーブルへと突っ伏している。やはり、試験の力は絶大らしい……。後輩としてはなんとも情けない気持ちにさせられる。

 ボクは開き掛けた本をテーブルへと置いた。


「先輩はそうかもしれませんけど、ボクはそんな青春は嫌ですよ」


「まあ後輩くんの青春なんてどうでもいいのよ……」


「今日もそういうところは冷たいんですね」


「突き放つのも愛よ、愛なのよ後輩くん」


「……そんな愛はいりませんよ」


「じゃあ監禁してくるぐらいにベッタリのが好みなの?」


「どうしてそう極端なんですか……」


 やはり、どんなに弱っていても先輩ペースは崩せない。

 先輩はふぃ〜っと飲み屋のサラリーマンのように息をつくと、ボクを睨んできた。


「急に鋭い眼光を浴びせて来ないで下さいよ」


「後輩くん、どのぐらい欝なのかって聞いてちょうだい」


「え? わざわざ聞く理由が見当たりませんが」


「ダメなのよ、これは回避不可イベントなのっ!」


 クテーっとだらしくなくテーブルへと引っ付く先輩が両手を広げ、逃げられないぜ、と伝説のディフェンスマンのように勝気な笑みを浮かべた。

 ボクはその意味不明な行動に嘆息する。


「…………」


 死亡フラグ、または何か危機的な何かを感じ取ったボクは、何も言わずその奇行をなす先輩を若干上から見下ろす。

 それが気に食わなかったのか、先輩はグルルと狂犬のように唸り、ボクを威圧した。


「わ、わかりましたよ」とボクは押しに負け慌てて言い、「どのぐらい欝なんですか?」


 木漏れ日が差し込むように、一縷の光が先輩の暗い表情へと降り注ぐ。温かな光を受けその陰鬱な闇を振り払い、満開の笑顔を咲かせた。

 そんな美しげなたとえが妥当だと思える程に先輩はテンションを上げた。

 そんなに、嬉しかったのか……。そんなに言いたかったのか……。ボクは微妙に欝になった。


 不敵な笑みを浮かべつつ、突っ伏した体勢をキープして、先輩は雄々しく叫びを上げた。


「ラスボスでHP回復大はキツイのよぉぉぉぉっ!! ってぐらいに欝よ!」


「意味分からないですよっ!!」


「なってないわね後輩くん!! ツッコミが温いわ! それに、そこは、わかりますぅぅっ!! でしょ!?」


「いえ、なんの事なのか……」


「スパ○ボに決まってるでしょう! あのHP回復大は鬼畜よ……」


 先輩はその苦労したボスでの思い出と、ボクの間違ったツッコミへのダメ出しで、酷く悲しい顔をする。


「す、すみません。考えればわかることでした……」


「ダメね後輩くん。じゃあ、オルゴデ○ーラの同じキャラに対して三回攻撃されたぐらいに欝だわ……」


「ドラ○エのセブンでしたよね? 確かにあれは欝になります」


「ってなんでそこで同調してるのよ! ツッコミを入れなさいよ!」


「す、すみませんっ! つい、その……ボクも苦労を思い出してしまって」


 しまった、ツッコミを入れずにボクも暗い思い出に精神を蝕まれていた。

 気を取り直し、先輩にお願いする。


「先輩、もう一度、もう一度チャンスを!」


「…………よろしい」


 厳格な一家の主のように先輩は答え、再びボケる。


「ウェ○カーの倒し方がわからず、何度火山へと落とされた事か……。っていうぐらいに欝よ!」


「あ、ああ! 先輩、すみません……それは、わかります!」


「そうよね後輩くん、バ○オ5のウェス○ーの意味不明さは異常よ…………ってツッコミはどうしたのよっ!! わたしがツッコミになってるじゃないっ!!」


 この時、本来なら容赦無くパンチが飛んでくる訳だが、先輩はぜーぜーと悔しそうに息を荒げるだけだ。ああ、試験に感謝、感謝です。


「あの、本当に気持ちがよくわかってしまい……」


「ダメね後輩くん、ツッコミは何があっても最優先よ、わかったかしら?」


「はいっ! 次こそは、必ず!」


「じゃあ行くわよ、残念だけど右が本体なのよっ!! っていうぐらいに欝よ……」


「ク、クロノ○リガー!?!? あ、あぁぁぁぁ……ボク、ずっと真ん中が本体だと……」


「そうよね、皆やっぱり………………だ・か・ら!! どうしてよ後輩くん!! どうしてなの後輩くん!?」


「す、すすすすみませんっ! やっぱり、その……真ん中が本体だと思ってて凄い苦労したので……」


「まあいいわ……。とりあえず、どれぐらい欝なのかはわかってくれたわよね?」


「ええ、よくわかりました」


 そこで先輩は満足そうに微笑み、体勢をシャキッと立て直した。


「それにしても後輩くんがクロノト○ガーをやっているとは思わなかったわ。やっぱり、D○かしら?」


「いえ、プ○ステですよ。あのアニメーションムービーが必要かどうかって聞かれたら違和感ありましたね」


「そう、○レステなのね。○Sなら追加要素を詳しく聞きたかったのに……」


「あれ? 先輩もプレス○なんですか?」


「いいえ、わたしはもちろん、スー○ァミよ!」


「……先輩、何時からゲームやってたんですか」


「え? 普通じゃないかしら?」


「…………いえ、気にしないで下さい」


「?? よ、よくわからないけど、とりあえずいいわ。一番不憫なのは著者なのよ後輩くん。だってね、著者も小学生の頃にスーファ○でやったらしいんだけどね、同ターンですべて倒さなくちゃいけないって思ってて、大分苦労したらしいわ。あ、でもちゃんと同ターンに倒せてクリアしたらしいの」


「あの、先輩? 著者って中学生ですよね?」


「うん、そうよ」


「……女の子ですよね?」


「うん、そうね」


「………………」


 どうしてだろう、物凄く悲しくなった。

 ボクはなんとなく、先輩も著者も不憫で不憫でしょうがなく、遣る瀬無い気分へと陥った。

えっと……私、中学生の女の子だもんっ!

え!? 信じられない!? ほ、本当なんだからっ!


ってなんだか慌ててみても、中学三年な受験生の普通ではない(え!?)けど女の子です。

えっとぉ……いえ、なんでもないです。


パソコンが重くて苛々する今日この頃。

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