20話 あなたも実は書いたりしてませんか?
「20話よっ! そう、遂にその時がやってきたの!」
「その時って一体、何があるんですか?」
「アニメの総集編のように、今までのストーリーを振り返るのっ!!」
「うわ……それって、案外うざったいですよ?」
「知ってるわ!! だって、わたしもあの総集編は手抜きに思えてならないもの……」
嫌な思い出があるのか、先輩の表情に影が差す。パイプ椅子の上に立ち上がり、無茶苦茶なテンションで叫び始めたので、物凄い落差を感じた。
ボクはもう所定の位置に成り掛ける、向い側のパイプ椅子へと腰掛け、先輩を見上げていた。説明は不要かもしれないが、スカートの中は未知の力により見えない。
「じゃあどうしてやるんですか?」
「ネタが無いからに決まってるじゃない……」
「またそのパターンですか……。もう筆者に長い休日を」
「ダメよ、すぐに物事を投げ出す子は将来、成功しないわ!!」
「……そうですか」
どうにも、先輩>筆者の式が成り立っているようだ。ちょっと、筆者さんに同情するも、考えてみればキャラを考えたのは創造主たる筆者だ、つまり、自滅なのだ。
「後輩くんも心配している割には酷いのね……」
先輩が上から非難の目を向けてくる。どうやら、考えている事が顔に出ていたようだ。
でも、先輩に酷い呼ばわりされるのはどうかと……。まぁそれが先輩だ。大人な対応をしよう。
「はい、そうですね」
爽やかスマイル。外面を良くしたい人の必殺技。ボクは一応は会得している。
誰にでも効果覿面の筈、だが、
「後輩くん、わたしは甘いマスクに騙されるほどお馬鹿さんじゃないわ! 笑顔に関しては、心○くんの愛想笑いを見破る琴吹な○せレベルよ!!」
「凄いのか凄くないのかわかりません……。あ、でも、一応は他の人は気付いてなかったと思うので凄いかもしれませんね」
「長ったらしく言われると……なんか嬉しく無いわ」
「すみません……」
「まあいいのよ、後輩くんのレベルを数学的に表すと、こうなるから」
先輩はパイプ椅子から下り、本来の使い方をし、学生鞄から一枚の紙と筆箱を取り出す。そして、何やらその紙にシャーペンでせっせと書き出した。
そして、書き終わったのか、その紙を突き出すように向い側に座るボクへと提示する。
〔わたし>超えられない何か>筆者>ストロベリーキャンディ>五円チョコ>売れなくなった芸人>後輩くんの一人妄想交換日記>アルバート>エロの化身≧後輩くん〕
長いぞ……。超えられない何かってなんだろう? 気になるな。あれ? 筆者の下がお菓子だよ……。
売れなくなった芸人は五円以下なのか……。
「ってボクは草○桜くんみたく一人妄想交換日記なんてやってませんよっ!!」
「わたしは知ってるわよ……」
先輩が紙を持ったまま恐い顔を向けてくる。
「な、何をですか?」
「後輩くんの鞄の中にある……あの、甘々な交換日記の存在を……。しかも、相手の番の時と自分の番の時に筆跡を変える、その徹底さ……寒気がするわ」
「何勝手に人のバックを見てるんですかっ!! というか一人交換日記じゃないですって!! そ、それに……あれは、ボクのじゃ…………無いです」
ボクの声は腹の底に響くような、重く痛烈なものだった。
空気を読み取った先輩が、「ごめんなさい」とポツリと漏らした。しょぼしょぼと萎れて行くように、突き出した手を引っ込めて椅子へと座る。
それを申し訳ない気持ちで見た。先輩の行為は咎められるような事だが、あの態度は八つ当たりのようなものだ。悪いのはボクだ。
「もう勝手にボクの鞄の中、見ないで下さいね」
「うんっ……」
盛大に溜息をつき、ボクは気丈に振舞う。
「先輩、そんな凹まなくていいですから、あの紙を最後まで見てないんで見せて下さいよ」
少し引き攣った笑みだが、先輩は答え、またあの紙を突き出すようにボクへと見せた。
「アルバートってどこかで聞いた名前ですね……。あれ、どうしてボクとエロの化身の所だけ記号が、違うんですか!! あれだとボクがエロの化身とイコールみたいで嫌ですよっ!!」
テンションを上げてツッコム。空元気に声を張り上げて、ボクはツッコム。
「う〜ん、今日も今日とて後輩くんのツッコミは痺れるわね! もっと存分にツッコミなさい!!」
先輩もテンションを上げて答える。
でも、どちらの言動も少しだけぎこちなかった……。
サブタイトルが誰かを責めている気がしてならないですね。いえ、私は書いた事無いです。
一人妄想交換日記って悲惨すぎます。……というか不憫です。
総集編がどうたらって咲彩が言いましたが、何もやってません。この脱線ぷりもこの作品らしいと言えばそうですよね。
少しだけ、圭太の過去が垣間見えた? そんな話でした。
ダイエットやってる女子とかさ、もうそんなぐらいじゃ手遅れじゃね? とか言うクラスメイトの男子が腹立たしくてならない今日この頃。
(女の敵だ〜! 細くなりたいと思って何が悪い〜)