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19話 ピンチってミンチと似てる。あと、リンチも

「どうして土曜日にここに来てしまうだろう……」


 ボクの寂しげで吐息のような呟きは、文芸部の部室にわびしく響く。

 文芸部の部室、だけどここは、漫才部。そう、破天荒な堂本咲彩先輩が、占拠し同好会未満の非公式な漫才部を勝手に活動させているのだ。

 それに巻き込まれた可哀想なボクは、折角の休日だというのに、ここを訪れてしまっている。


「それは、わたしに会いたくてたまらなく……」


「無いです。有り得ません」


 独り言へとその問題児の先輩が、さも回答を示すように予想できるようなことを言おうとした。だが、それをボクは容赦無く阻む。

 パイプ椅子へと腰掛け、向かい合う位置にいる先輩が、「酷いんだぁ酷いんだぁ」と子どもっぽくプリプリと怒っていらっしゃる。

 それを軽く無視して、ボクはボンヤリと考えにふけった。


 ……本当に何がしたいんだろうなボクは。


「ねぇ後輩くん、運命って信じる?」


 そんな微妙に沈むボクに、先輩はのん気な声で尋ねてきた。瞳には邪気は無く、ボクの邪魔をしようとしている訳じゃないのは理解できた。


「どうしたんですか急に……。宗教の誘いならお断りですよ」


「そんなんじゃないわ。もっと真面目に答えてちょうだい」


「真面目も何も、運命って言葉自体が嫌いですから」


「どうして?」


 少しだけ刺々しくなったボクの言動に先輩は首を傾げる。


「そんな深い理由は無いです……。ただ、全部決められている事をなぞるのが人生なんて嫌じゃないですか。後悔する事も、喜ぶ事も、全部必然で、最初から決まっていた、そんなのは絶対に嫌です」


 最後の嫌、という言葉だけ語気が自然と荒げた。やはり、人間っていうものは非常に不器用だと思う。

 そんなボクに先輩は淡く微笑んだ。


「わたしは運命っていうのは中々好きよ。だって、後輩くんと会えたのは必然だという事でしょう?」


「それはつまり、ボクは先輩にいじめられるのが既に生まれた時からの決定事項だったと?」


「あぁぁ、その言い方は先輩への敬いが欠けているわ! 後輩くんはどうしてそう、ひねくれるのよ!」


「いや、そう言われましても……」


 先輩が暗くなった空気をどうにかしようとしているのはわかった。でも、今日ばかりは何故か……それに乗れない。うまく行かない。

 先輩のストレートの髪が五月の風に揺られ、弛み、優雅に舞う。それにより、幼顔が少しだけ大人っぽく見えた気がする。


「まあ今日は土曜日よ、そんな事はいいの。とりあえず、後輩くんがここに来てしまう理由、それは! 運命よ、定めよ、宿命よ、必然なのよ! 既にフラグバリバリの不可避ルートよ!!」


「なんか泣けてきました……」


「大丈夫よ後輩くん、わたしが貴方を更生させてあげるから」


「人をダメ人間みたく言わないで下さい」


「じゃあひきこもりのが良かった?」


「いや、そういう問題じゃ……」


「そう……じゃあニートなんてどう? 今の中学生の将来の夢はなんですか? って調べてた結果はね、ニートが第一位だったの! よかったわね、後輩くんは中学生の憧れの的になったのよ!」


「……今の中学生の将来が心配でなりませんね。親御さんが不憫でならないです」


「事実は変わらない。そう、アルバートは言ってたわ」


「誰ですか?」


「さっき考えた名前だから、多分……そんなセリフを言ったアルバートさんは存在しないと思う……ごめんなさい、後輩くんの夢を壊して!」


「いないんですか、ってなんで謝るんです!? というか、馬鹿にしてますね、それ、かなり馬鹿にしてますよね!?」


「今日の後輩くんはノリノリね、次行ってみましょう。次は、日本在住の――――」


 や、やられた……完全に乗せられた。

 先輩恐るべし、だ。人を元気付ける……というより、嫌な事を忘れさせる天才だ。だけど、気付くと腹が立ってしょうがない。


 もちろん、先輩に対してではなく、それに引っ掛かる自分にだ。それがまたずるいと思う。先輩の事をどうしても恨めないのだから。


「あれ? 後輩くん? ちゃんと聞いてよ、今からがいい所なのよ、ちょうどアム○が白いモビル○ーツに乗って初めて戦うシーンなんだから」


「え!? あれ、日本在住の人の話は!?」


「もう終わったわ…………彼は、彼は…………うわぁぁぁぁぁんっ!!」


「どうして泣くんですか!? ほんと、意味が分からないですよ! え、ちょ、ちょっと! 先輩! どこに行く気ですか? あああ、廊下をそんな全速力で走らな、ってそこは男子トイレですよ!? ああ!! 何を期待してるんですか! ちょっとぐへヘって下品な笑い……あれ? 先輩って下ネタとかダメな筈……」


「忘れてたぁぁぁぁっ!!」


「忘れてたってどうして忘れられんですか? 先輩の体の作りってどうなっているんですか!?」


「なっ、そ、そそそそそそんなエロい質問に答えられる訳無いじゃないっ!!」


「意味が分かりません……。頭の中がって意味ですよ? エロいってなんですか?」


「後輩くんのエッチ〜〜〜〜〜〜っ!!」


 先輩は狂乱しながら、そのままどこかへ走り去っていった。今日ばかりは本当に意味が分からない。

 一体……日本在住の……先輩は彼って言ってたから、その男性の身に何があったのだろう?


 ボクはそれを先輩に聞こうと思い、どこかへと行った先輩の捜索を開始するのだった……。

もうサブタイトルがずれているような気がする……というか、ずれてるぅ……。


微妙に圭太が暗い過去を持ってそうな雰囲気を醸し出しました。本当にあるかどうかなんていうのは、私も知りません〜。

では、ネタ続く限り、また会いましょう!


休みの日は大抵寝ているな、と思った今日この頃。

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