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17話 勉強よりも大切な事がある、そんな言葉を信じたい

「ああああ……奴が、奴が来るぅぅぅ……」


「ちょっと、先輩、落ち着いてください。一体、何が来るんですか?」


 ガチガチと震え、身体を強張らせる先輩が、パイプ椅子へとしがみ付き何かに怯えている。

 ボクは向い側のパイプ椅子で本を読んでいたので、その発言があるまで、先輩が可笑しくなっている事に気付けなかった。


「奴よ……奴が、わたしにやり直しをさせるのっ!!」


「よくわからないですけど、何やら危険そうですね」


「当たり前よ! 後輩くんは、奴の名前を知ってる?」


「いいえ……」


 一拍置き、B級ホラー的な恐怖に歪んだ顔で、悲鳴ような声を上げて、その名を呼んだ。


「中間テストよっ!!」


「えっ……?」


「だから、中間テストよっ!! 奴は、奴は!! わたしを学校に一年長く居させようとするの……」


 おいおいと泣き出す先輩が、余りにも馬鹿げて…………じゃなくて、可哀想だった。


「えっと……つまり、赤点を取り巻くって成績が足りず、留年する事になり、学校に一年長く通う事になってしまう、という事ですね?」


「なんか、わかってもらえて嬉しいけど、腹が立つわ」


 憎らしげにボクを睨んでくる。ただでさえ精神年齢が低く見えるのに、そんな子どもっぽい態度をしていては、中学生と間違われるだろうな、と考えた。

 それにしても先輩は、そこまで成績が悪かったのか……。


「それで、先輩、あの、前回の試験はどうだったんですか?」


「どうも何も、なんとか進級出来ましたって感じよ」


「そ、そうですか」


 これは相当ダメダメなんだろうな。

 先輩がうーうー呻きながらボクへと刺々しい視線を送ってくる。


「後輩くんは、今のところ授業について行けてる?」


「今のところは問題無いですよ」


「じゃあ教えて〜」


 ヤバイ、先輩は相当頭が悪いらしい。常識的に考えてみればわかる事だ。勉強以前に、もう手遅れかもしれない。

 猫撫で声で哀願する先輩にボクは少し突き放すように言った。


「あのですね、ボクは一年ですよ? それに入学してから一ヶ月経った位ですよ? そんなボクに高校の勉強、ましてや先輩の二年の勉強なんて分かる訳が、」


「やってみなくちゃわからないわっ!!」


「ボクは、そんな頭は良くないですよ。IQ240を持つギ○ン・ザビみたいな天才肌では無いですし、父の記憶をダウンロードされたあのサーカス大好きっ子でも無いですから」


「ネタで言うようになったのは成長として受け入れるわ!! でも、今日は勉強よ、学業よ! 学生のお仕事よ!

 だから…………教えて〜」


 途中まで鬼気迫る様相だったのに、最後にはやっぱり愛くるしい声と、顔に変わっていた。

 その後、押し切られる形で勉強を教える事になったが、後輩に勉強を教えてもらおうとする先輩ってなんだかな……。



 十分後……。


「ど、どうして後輩くん、二年の問題が解けるの……? まさかわたしの事が大好きで、つい、自分の授業を抜け出してわたしの姿をいつも見ていて、それで授業内容も……」


「どこのストーカーですか……。それより、真剣にやって下さい。一年のボクでもわかるレベルの問題が出来ないって、正直、危ないと思いますよ」


 何時もは向かい合う形で座るが、今は勉強を教える為に、横に並ぶように座っている。

 十分という短い時間だったが、先輩の能力は把握できた。相当……不味い。

 そうやってボクが余所見をしている内に、また一問、間違った解答を記入している。


「先輩、それは違いますよ。こっちの公式を使って解くんです」


「あぅぅ……後輩くん、ここぞとばかりに調子に乗ってるわね」


「もう教えてあげませんよ……」


「ああっ! 違うの、さっきのは冗談で、そう、冗談だからっ」


「わかりましたから、早く問題を解いて下さい」


「う、うんっ!」


 こうやって素直にしていれば腐るほど男子が寄って来るだろうに……。そんな事をボンヤリと考えながら、ほのぼのと先輩が問題に四苦八苦する姿を見ていた。

 詰まるたびに、「あぅぅ」と可愛らしい言葉を漏らし、それをボクが軽く叱り、また続行。その繰り返しだ。


「も、もしかして!」


 先輩が何か閃いたのか、勢いよく立ち上がり、ボクを見下ろす。立ち上がったのは、いつもは身長さで見下ろすのが余り出来ないからだろうか……。まさか、とか思うかもしれないが、先輩はそういう人なのだ。

 ボクはちょっと嘆息するように先輩に尋ねる。


「どうしたんですか?」


「ねぇ、後輩くん、もしかしてあれね、あれ」


「あれってなんです?」


「あれよ、ほら、『あっ! この問題、進○ゼミでやった!!』って感じに」


「ボクはあれやってませんよ。送られてくる資料の中に入っている漫画を読むだけです」


「あの漫画で欝になる話と成功した話の二つがあったやつで、わたし……本気で欝になったわ……。進研○ミで人生の分岐点を体験するなんて凄い話よね?」


「……そうやって話を逸らさないで下さい。勉強から逃げても試験からは逃げられませんよ」


「うぅぅ……後輩くん、今日は鬼ね、鬼コーチね……」


「はいはい、ほら、続きをやりますよ」


「あぅ……」



 一時間後……。


「今なら、空だって飛べる気がする……」


「ダメですって先輩っ!! 現実から逃げるような人があの空を飛べる訳がありませんよ!」


 先輩は勉強するストレスにより、窓枠へと足を掛け、無限に広がるあの空へと羽ばたこうとする。だが、恐らくは……いや絶対に、空ではなく、あの世へと羽ばたく結果になるだろう。


「放してよっ!! わたしは飛ぶったら飛ぶっ!!」


「駄々を捏ねないで下さいっ!! 危ないですよ、本当に落ちてしまいますよ!!」


 もう本気なのかどうかは置いといて、危険なのは確かなので、緊急事態という事で仕方なく、先輩のお腹辺りに手を回し、引き止める。断じて上のふくらみを触ったり、その下に手を伸ばしたりはしてません。


「落ちないわ! わたしなら飛べるっ!! そう仲間達が」


「仲間達って誰ですか!? ってあああ、そんな遠い眼をして、フッて悟ったような笑みを零さないで下さい!!」


 結局、勉強タイムは一時間と続かず、逃げたり言い訳を重ねる先輩を止めたりすることで、部活時間は終了となった。

 試験……大丈夫なのかな?

 一抹の不安を抱くが、先輩を信じてみる事にした。いや、諦めかもしれない……。


 もう知らない、という事で、責任からはボクも逃げる事へとするのだった……。

勉強疲れますよね? 私はもう受験生だっていうのに毎日をぐたれています。

具体的には、小説を書いたり、ですね♪ とテンションを上げてみる。

ん〜授業ぐらいはちゃんと受けた方がいいかな?

あれ? 授業中って普通寝ません? それか、小説書いたり……あれ? 私だけ?


明日が見えなくなってきた今日この頃……。

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