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14話 わたしは逃げない! いや、逃げろ……

「避難訓練は要らないと思うの」


「なんですかいきなり、その学校側の努力を無にす言葉は……」


 割と真面目な顔をした先輩が、まだ春の様な気がする五月のある日、そんな事を言ってきた。ボクと先輩のパイプ椅子が動くたびにギシギシと鳴るので、そろそろ買い換えたいな、と考えていたボクは先輩へと目を向けた。


「あのね、中学で避難訓練が無い日に、サイレンが鳴り響いたの」


「え? それって本当に火事になったんですね。凄いパニックになったんでしょうね……」


「いいえ、寧ろ逆」


「逆ですか?」


 キョトンするボクに、バーで寂しそうに酒を飲むオッサンのようなしみじみとした顔をし、


「そう。誰もが訓練の時に本当に火事があったらパニックになるよね〜、とキャピキャピ騒いでいたのに、本当に非常ベルが鳴った時は、皆キョトンとし、挙句の果てに、第一声が、『先生〜今日って避難訓練ありましたっけ?』だったのよ……」


 と説明してくれた。


「それは……困りますね」


「そうでしょう? 教師の反応もね、『ん〜無かったと思うけどな』とか答えて、考え出しちゃったの」


「更に……困りますね」


 珍しく今日の先輩の話は興味深い。自然と真剣に聞く事が出来た。

 先輩のテンションが少しずつ上がり出し、パイプ椅子から立ち上がり、ウロウロと部室の中を歩き始める。ボクはそれを目で追いながら、話の続きを待った。


「うん、とても困ったわ。だからね、避難訓練は要らないと思ったのよ。避難訓練なんかするから生徒達は本当に火事があっても逃げようとしないの!」


「そうですか……。ボクは小学校、中学校で避難訓練以外で非常ベルが鳴るのを聞いた事がないので、よくはわかりませんが、本当に疑問を浮かべて焦りもしないかもしれませんね。

 あ、先輩、そういえばその時の火事、大丈夫だったんですか?」


「大丈夫だったわ。というより、誤作動で鳴ったので、火事なんかじゃなかったの。もし、本当だったらきっと多くの犠牲者が出てたわ……」


 その事を想像したのか、先輩が苦い顔をする。ボクはそれに同調し、少し暗い気持ちになった。

 少しの間を置き、ボクはウロウロする先輩に自分の意見を伝えた。


「恐い話ですね。でも、やっぱり訓練は必要だと思いますよ? なんだかんだで、非常経路などを覚えなくてはいけませんし、まぁ慣れる事が大切ですね。先輩の一件は、その慣れにより緊張感が無くなってしまったのが原因ですよね? 問題はやはり、生徒達や教師、一人一人にあると思いますよ」


 言葉を受け、先輩の動きが少しぎこちなくなる。両手を組み、なんだか渋い顔をした。


「ねぇ、後輩くん、後輩くんの中学校……または、小学校で、『おかしも』ってあった?」


「えーと、ああ、あれですね。確か、『お』が押さない、『か』が駆けらない、」


「ん? ちょっと違うわね。わたしの中学の校長は、『お』は、幼い、『か』が可愛い、『し』が、しおらしい、最後に『も』が、もうたまらない! だったわ」


「えっ…………」


 なんだ、この変わりよう。というか、もしかしてすべての元凶って先輩の中学の校長じゃないか? というか、絶対にそうだ! 避難訓練で危機感が完全に消え去る!!


「どうしたの、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして」


 先輩が心配そうにボクの顔を覗き込んで来る。


「い、いえ、あの先輩、その校長がすべて悪いんですよ。『おかしも』がロリコン量産の言葉になっているじゃないですか」


 すると、何故か先輩が眉を吊り上げて憤怒の形相になった。


「後輩くんっ!! ロリコンを悪く言っちゃダメよ!!」


「い、いきなりどうしたんですか? 何故ロリコンを庇うんですか!」


「わたしもロリコンだからよっ!!」


 ダメだ。もう校長色に染め上げられている。ボクは微妙に悔しくなり、先輩からは見えないテーブルの下で、拳を握り締めた。


「先輩、まだ(多分)間に合います! だから、校長の妄言から脱し、正常(清浄)な人間に戻って下さい!!」


「女がロリコンで何が悪いのよっ!!」


「ロリコンが悪いんですよっ!!」


 避難訓練の話から、どうしてこうなったのかはわからない。だが、ボクは先輩が元の人間に戻れるように必死になって戦った。

 激しい口撃の応酬が続き、戦闘は想像を絶するレベルへと達し、周囲へと熱気を放つ。

 そう、それはダ○の冒険的に言えば、真竜の戦いと呼べるものだ。お互いの全力の一撃のエネルギーが行き場失い、ボクと先輩を囲うように堆積していく。それは、獲物を待つハイエナのように獰猛で、敗者へと即座に流れ込む。


 つまり、この勝負の敗者は発生したすべてのエネルギーをその身に受け……確実に死への一途いっとを辿るのだ。


「先輩っ!! 女性でのロリコンは社会的に物凄くキツイですよ!! ただでさえロリコンは肩身が狭いのに、百合となっては更に苦しいです!!」


「そんなの百も承知よっ!! だからこそ、その道を切り開き、わたしはロリっ子とのトゥルーエンドへと進むのよっ!!」


「止めて下さい!! 冷静になって落ち着いて考えてみて下さいよ!! そんな事をして、日本の未来をどうするんですか!?」


「知らないわ、政治家に任せればいいじゃない!!」


「違います! 少子化が加速しますよ!!」


「えっ……?」


 刹那の沈黙。先輩の顔が見る見る内に紅潮していく。


「わ、わたし、そんな淫乱じゃないわ!! そ、そそそそんなふしだらなよ、欲望……あわ、あわあわあわあわ…………」


 先輩が壊れた。両腕を大車輪ロケッ○パンチが出来そうな勢いでブンブン振り回して、顔を真っ赤にし暴れ狂っている。

 少子化っていう単語だけで、ここまで狂う人も珍しい……。というか先輩、エロゲー経験者なのにどうしてそこまで動揺するんだろう?

 わからない。やっぱり先輩を理解するなんて世界で一番のスーパーコンピューターでも無理の様な気がしてきた。


 その後、ユデダコのようになった先輩を介抱しつつ、一日を終えた。

 最近なんだか、漫才部っぽい事をしていないな、と思い始めるボクであった…………。

長くなってしまいました。

今回のネタ、えっと前半の部分の避難訓練ですが、実際に私の学校であったんですよ。正直、私自身も、「あれ? 今日って避難訓練あったっけ?」って感じに思いながら、ボンヤリとしてました。

いや〜焼死してもしょうがない馬鹿です。


ロリコンの事を圭太は物凄くぼろくそ言ってますが、私は……というか、私のキャラは咲彩の方ですかね……。だから、書いてて胸が……いえ、別にそこまではしませんが。


実はあとがき書くの大好きなんです。なんなら本編より長く書いちゃったり……いえ、ウザイですよね。

もちろん、あとがきは読むのも好きです。寧ろ本編より面白い時があってなんだか先に読みたくなるぐらいです。


えーと長くなって申し訳ないです。

ショタコンへも目覚めそうな今日この頃……。

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