決意の日 3
「ああ、元気だよ。」
その言葉にホッとした。
その後続けて、
「今の海里ちゃんなら理解してくれるかもしれないし、話しておこうか。」
と言った。
「はい、もし今別の家に住んでいるとかなら教えてほしいです。」
たとえ今再婚していたとしても構わなかった。
それが母の選んだ人生なら、今が幸せなら。
「15年前からこっちの家に一緒に住んでいるんだ。突然でびっくりさせてしまうけど、葉子は認知症なんだ。」
「…認知症?」
認知症。
テレビでたびたびピックアップされ、何度も聞いたことのある単語。
母がそれに?いつから?今はどんな状態?
いくつも疑問が一気に浮かび、頭で整理するのに時間がかかった。
「海里ちゃん?」
「ごめんなさい、びっくりして。」
「そうだよね、いきなりだったもんね。」
その後いつきおじさんは、
「最近の記憶が覚えられないこと」
「そのため最近出会った人を昔の知り合いや家族と間違える」
「感情が不安定になるとヒステリックのような、被害妄想をし暴れてしまう」
と話してくれた。
「今の状態だと、海里ちゃんと会って何も起きない保障はない。それどころか、傷つけてしまうかもしれないんだ。」
今までの母に会えるかもしれない喜びのドキドキが、不安に押しつぶされそうだった。
けれど、
「お母さんがどんな状況でも、会いたいです。」
気づいたら、そう言っていた。
「分かったよ、ならお葉子の気持ちが安定しているときにウチに遊びに来なさい。私も海里ちゃんと会いたかったんだ。」
「ありがとうございます、それじゃあまた連絡します。」
「またね。」
プツッ
15年ぶりに再会する母は、認知症。
まるで母への愛情を何かに試されているような、不思議な感覚だった。