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3、

 3、


 今。

 卑屈な笑顔を顔に張り付けているのは、皮肉なことに俺の方だ。


 会社の部署全体の進捗と今後の見通しが思わしくなく、部長と課長がそろって不機嫌な顔をして毎日毎日八つ当たり的なアホくさい指示を出していた。

 それがまた場当たり的で、朝令暮改というやつで、付き合わされれば付き合わされるほどこっちのやる気がなくなっていくわけだが。

 平社員の俺たちは上司たちのことを内心で馬鹿にしつつ、かといって逆らって自分の評価をわざわざ悪くする意味は無いし、機嫌を損ねて立場を悪くして居づらくなるのも不利益だから、なるべく波風を立てないように彼らの言いなりに仕事していた。

 仲間内で飯を食いに行けば、「正直辞めてえ」という話題が誰かしらからいつも出る。俺から言うこともある。

 だが生活の安定性を考えると踏み切る見通しも勇気もなく。

 なので、さして給料が良いわけでもなくやり甲斐も感じていない仕事を俺は毎日毎日続けている。へらへらと笑顔を張り付かせて上司のアホくせえ言葉をやり過ごしながら。


 どうしてガキの頃、俺は彼女の笑顔をあんなにも嫌いだと思ったんだろう。

 そんな笑顔を浮かべる奴にだけはなりたくないと思ってたはずなんだが。

 なのに、「仕方がない」あるいは「これこそが処世術だ」と思うようになってしまったのはいつ頃からだろう。

 似たような笑顔で毎日過ごしている他の奴らも、同じようにして本心でもない笑顔を身につけていった結果なんだろうか?


「いいから私の言うとおりに仕事しろ。

 懸念があるだと? そりゃ、お前がちゃんと処理すればいいだけの話だろ。

 いいからやれ。私に面倒をかけさせるな。そんな文句ばっか言ってるからお前はダメなんだ」

「……」

 このクソ上司が。

 この前もその調子で、お前の杜撰な指示の尻拭いを俺がすることになったんだろうが。どんだけ残業させられることになったと思ってるんだ。

 そのくせ、俺がようやく処理した翌日に「お、うまくいってるじゃないか。ほら、私の言った通りじゃないか。はっはっは」と笑いやがったのを俺は覚えてるぞ。お前の無責任な笑顔が俺は本当に大嫌いだ、クソ野郎。

 そう思いつつも。

 俺は、どうにかへらへらと笑顔を保って。

「分かりました。じゃあその方針で進めます」

 ノルマが無駄に増えたからしばらく残業だな、と思いながらそう答えた。


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