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1、

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 映像の中の彼女は輝くような笑顔で、それをモニター越しに見つめる本物の彼女はしかめっつらだ。

「ダメ」

 と、不機嫌さを隠さず本物の彼女が言った。

「この笑顔、嘘っぽい。

 心から笑ってるように見えない。営業スマイルに見える」

「そんなに気にすることはないと思うが」

 台所の後片づけをしながら、俺は居間にいる彼女の横顔にそう言った。

 彼女は不機嫌そうな顔で、モニターを見つめたまま。

 俺は肩をすくめて、濡れた手を拭きながら居間に入り、彼女の横に並んで座った。

「実際、営業スマイルなんだろ?

 でも俺にはそう見えないほどちゃんと笑ってるように見える」

 そう言ってみると、彼女はじっと俺をにらんだ。

 それから、ぷいっとそっぽを向いた。

 俺はまた肩をすくめた。


 彼女は日曜の午後から夜にかけて半日だらだらと俺の家の居間で過ごした後、気がつくといつの間にかいなくなっていた。それはいつものことだったし、今さら俺がとやかく言うことでもないので、ドアの戸締まりがちゃんとされているかだけ確認して、その日は寝た。

 翌日は仕事。

 眠気の残る頭で会社に向かい、着いた後も寝ぼけた頭で表面上だけ仕事をしているふりをして、昼休みになった。ようやく起きてきた頭で、午後は少し本気を出さないとノルマが終わらないなあなどと思いながら席を立つと、同僚のパソコンのモニターが目に入った。

 彼女が画面の中で笑っていた。

 動画に映る彼女はとある駅前のデザート店について共演者と話しているところで、その美味しさについての話題で盛り上がっていた。それはまるで嘘偽りのない笑顔に見えた。俺は、彼女がその店のデザートは甘すぎて大嫌いだと話しているのを昨日聞いたばかりだったが。

 動画を見ていた同僚が俺に気づき、言った。

「この子、知ってます?」

「ん、ああ……」俺は曖昧に答えた。

 同僚は俺が彼女と個人的に知り合いだなどとは知る由もなく、彼自身と同じように動画に映る有名人を知っているという程度の返答だと受け取ったようだった。なれなれしく言葉を続けてきた。

「彼女、いいっすよね!

 いつも楽しそうな笑顔で。こんな子と付き合いてえなあ。毎日楽しいだろうなあ♪」

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