2話 書斎にて
俺はノホの隙をついて部屋から抜け出し書斎に向かった。
書斎に行けばこの世界の状況を知ることができるだろう。
必死に頭突きなどをしてドアを開け中に入る。
書斎の場所はノホに抱っこされて散歩に行くとき
横を通り知っていた。
両親はなかなかの本好きなのか図書館と言ってもいいほどの
広さと棚にしきつめられた本の数。
とりあえず一番手前で下にある本を棚から取り上げた。
一冊一冊が辞典のような分厚さで大きい。
本を開けページを見るが何を書いているかさっぱり
分からない。
だいたい五カ国語ぐらいは話せるが
どれにも当てはまらない文字ばかりだ。
くそ……いや待てよ……どこかにはあれがあるはず……
◇
(あった……!)
二十分ぐらいしてやっと見つけた。
けっこう高いところにあって苦労した……。
子供が言葉を覚えるための本!
これでしばらくこの国の言葉を勉強しよう。
ガチャ
(んっ!?)
「ティアちゃんここにいた!
また勝手に抜け出して~
元気なことはいいことですけど
あまり遠くには行かないでくださいね~」
書斎のドアが開く音がしたと思ったら
ノホが入ってきた。
くそ~見つかった。
「はいお部屋戻りましょうね~」
抱っこされて書斎から出てしまった。
だが最後にバレずに本を一番下の棚に
戻せたことは大きい。
また行かなくては。
◇
あれから数週間がたった。
今日の夕食は珍しく家族全員一緒の食事だ。
まあ俺は相変わらずおかゆだけど。
「聞いてくださいよマリア様、ユーグ様。
ティア様いつも部屋から抜け出して書斎に
行くんですよ」
「まあ元気でいいじゃないの。
やっぱり子供はやんちゃじゃなくちゃ」
「だが書斎に行くとは変わってるな~。
あそこに絵本は置いてないんだが……」
絵本は前世でもうとっくに卒業している。
それにしても言葉や文字は理解できた。
しかしやはりこの世界は何かがおかしい。
国の歴史がファンタジーのようなものしかない。
普通だったら世界大戦ぐらいは載っているはず
なんだが……。
「そういえばノホ。
回復魔法は習得できたのか?」
「はい。初級魔法ですがキュアーを習得できました」
なんだよ魔法って、アニメかよ。
本当にこの家庭はまずいな……。
危ない家庭だ。
「ティア様に使って見ましょうか。
少し頭にたんこぶのようなものができているので」
ああ……書斎のドア開けるとき頭突きで開けてるから
たんこぶできちまったんだよな。
思い出してしまって急にズキズキしてきた。
するとノホがたんこぶの上に手のひらを向ける。
(なにするんだ……?)
「『キュアー』!」
ノホがさっき話していた初級魔法とやらを唱えると
俺の体が緑色に光始めた。
(なんだなんだ!?)
数秒すると体は光らなくなった。
「よし!成功しました!」
(成功……?あれ…痛みがない……)
ノホに頭をさすられても分かったが膨れ上がった
ところがもとに治っている。
「おおーー、いい効きめじゃない」
「ありがとうございます!」
魔法……獣人……電気製品がない……知らない言語……
ファンタジーな歴史……。
ここはまさかの……異世界か……?
やっと理解したティアであった。