桜の木
も〜う、い〜いか〜い。
ま〜だ、だよ。
桜が綺麗に咲く公園に子供達の声が響き渡った。かくれんぼが始まる証拠だ。
私はこの言葉を聞く度にワクワクしてくる。私はかくれんぼが大好きなのだ。
も〜う、い〜いか〜い。
も〜う、い〜いよ。
これから鬼が探しに来る。場所は見晴らしがよい公園なので、ほとんどがすぐに見つかってしまう。でも、私は一度も見つかった事がない。ずっと同じ場所に隠れているのにも関わらず、だ。
それも当たり前。私は子供には到底思い付かない場所に隠れているんだから…
最初の内、私は人が近寄る度に思っていた。
いつ見つかるだろう。
見つからないといいな。
だけど、今は違う。
早く見つけて欲しい。
もう隠れるのに飽きちゃった。
そう思っていても、私は隠れるのを止められない。
誰か、早く私を見つけて。
私がそう思っていると、一匹の犬が近付いて来た。そして私のすぐそばまで近寄り、穴を掘った。そして大声で吠える。
『ワンワンワン』
五月蠅いなぁ。近くに私がいる事に気がつかないの。
犬の泣き声に気付いた飼い主が私に近寄ってきた。その飼い主は泥だらけになった犬の口を見る。
「コロ、どうしたの?口に泥が付いているわよ。穴でも掘っていたの?」
笑いながら飼い主は犬に話しかけ、次に私を見た。
私はとうとう、見つかった。
「キャーー!!」
静かな公園に響き渡る飼い主の声。私が見つかった証拠だ。
知らない人達が大勢近寄ってきた。私を取り囲んでブツブツと話始める。あまりにも大勢の人が一度に話すので、全然聞き取れなかった。
あれよあれよという間に、私は何故か箱に入れられた。私は箱の中でやっと、人達の会話を聞き取れた。
「まさか、桜の木の下に女の子の死体があったなんて」
「まだ若いのに、可哀相だよな」
「腐っていて、凄い臭いだったな」
「一体、いつ埋められたんだろう」
桜の花がピンクなのは、根元に死体が埋まっているからなのよ。
私以外にも桜の木の下で隠れている子がいる証拠。
彼等はかくれんぼが好きなの。
だけど長く続くと飽きてしまう。
だから、探してあげて。
彼等のかくれんぼを終わらしてあげて