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6 能力確認

 二冊目の本は「隷」という文字を空中に表示した。


 なんだっけこの字。

 奴隷の隷かなあ。


 たぶんそうだと思うんだが。違ったかな。


 そして表示が消える。

 これで二つ目の能力も、手に入ったのだろうか?

 確認の為、両手を開きみる。


 ない。

 ない。

 入ってない。


 左は相変わらず「無」のまま。

 そして右は……ただの手のひらだった。

 からっぽ。


 ……嫌な予感。


 体中を確認する。

 ないのか? なぜ?

 最初の一個しか、身につかないとか?


 そんなことないよな?

 しかしどこにも見当たらなかった。

 これは……。

 ゲットできなかったようだ。


 ううむ……。

 一人一個という事なのか。

 それとも先に得た「無」の能力が、なんか悪さとかしたのか。

 それとも……見えない所に入ってるのか?


 ふたたび、みたび、何度も何度も自分の身体を確認する。


 だが結局見つからず、しばし後、ガックリとうなだれる。

 右手空いてるじゃないですか……。

 なんで「隷」が入ってないんですか……。


 ま、止むを得んか。

 そういうルールかもしれないしな。

 とりあえず「手持ち」の能力を確認しよう。


『無』


 これだってそう悪いもんじゃないさ。

 強そうじゃないか。

 その辺の石ころを掴む。


「無になれ……!」


 ならない。

 葉っぱをつまんで無と念じる。これもならない。


 字面からいって、「何でも消し去る便利な能力」みたいなもんに違いない、と期待していたのだが……。何も起きない。

 違うのか?


 その後も色々やってみたが、どれ一つとして無くなったものはなかった。


 何故だ。

 能力発動に作法でもあるのか。

 あるいはそもそもそうした力ではないのか。

 いったいこれは、どういう能力なんだ。


 じっと手をみる。

 この字の意味とは何か。


 もしや能力自体が無いという皮肉、要するに「無能」や「能無し」的ダジャレなのかも、とすら思えてくる。

 そんなわけないだろうな!


 せっかく再出発でやり直そうと思った矢先に、これはない。

 これはない!


 大体ベースである俺自身がおっさんでゴミなのに、その上能力がスカだったら、完全にヘボじゃないか!


 無力だ!

 そう思った途端に、くらっとめまいがした。


 全身から力が抜け、膝からくずおれる。

 しかしそれは一瞬で回復した。

 ……む。


「!」


 ――何かピンと来るものを感じ、再度繰り返してみる。


 無力!

 へにゃ。

 無力!

 へにゃ。


 念じる都度、左手がわずかにきらめく――。

 そのたびに、体中が頼りない感覚になる。

 短い瞬間だが、逐一、力が抜けているようだ。


 もしや……これか?

 念じると「少しの間だけ自分の体から力が無くなる」これなのか?


 ええええええ!


 ……ゴミ能力。

 そう判断せざるを得なかった。

 大ハズレだ。


 なんだこれは!

 能力って、プラスになるものじゃないのか!

 元の俺より更に弱くなるじゃん!


 もっとこう……凄い能力、いや、贅沢は言わないから、ちょっとでもプラスになる力が、欲しかったよ……。


 俺今後一生、これなの……。愕然……。


 だが。

 神、正しくいうと神っぽい存在は、能力は使い方次第だと言っていた。

 こんなものでもやりようによっては、役立つ力になるのだろうか……。

 とてもそうは思えない……。


 いやだが。諦めないぞ。せっかく、死を回避して、転移しての、チートじゃないか! いやこれ、チートか? いやチートだ! さっそく挫けてどうする! この力だって、使いようだ!


 使いこなしてみせる!

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