4 二冊の本、どちらを開くか。
二冊のチート本。
片方は神|(ぽい子)からの贈り物。
もう一方は転移後、目の前に落ちていた。
どちらも見た目はほぼ一緒。ともに辞典のように分厚く、重い。
色も、微妙に違うが、いずれも薄い水色系。いや別の色だったものが褪せたのだろうか。
とにかく装丁はボロッボロ。
表面は毛羽立っていて、なでるとちょっと気持ちいい。
ベルトと留め金で、簡単には開かないように本の口が固定されている。
外見からは中身に関しての手がかりはなく、内容を知るには開ける以外になさそうだ。
とりあえず順番にいくとするか。
さて、どちらから開くべきか。
やはり「あの少年」に貰ったほうが先だろうな。
本の留め金に指をかける。
――いくぞ!
待てよ。
よく考えたら……。
肝心の本や能力について、あの子に聞いとくのを忘れてたよ!
能力ってのは、いったいいくつ身につくんだ?
複数か? 無限か? 個人差か? それともたった一つか?
あの子はいくつか能力を使いこなしていたが、あれはデモンストレーションだからか? それとも本物もああなのか?
もし持てる能力が一つきりなら。
手に入れられるのは最初に開けた本だけか。後から出た字は全て無効か。
それとも逆に、新しい能力を手に入れる都度、前の古い能力を上書きしたりするのか。
ちょっと悩む。
順番は重要なんだろうか。
でももし能力が複数身につくなら、どっちから開けても、大差ない事になる。
ああ!
わからん!
もういい!
開けばわかるさ。
じゃこっち。
やってみるぜ。さあこいよ。俺は意を決して開いた。
落ちていたほうを。
そう。貰った方ではない。落ちてた奴だ。
ここからは自分を信じてやり直すのだ。
神には頼らん。
これはその覚悟の現れだ。
どんな結末だろうと受け入れ、後悔はせん!
何であろうと「出た字」で頑張るさ!
冴えろ直感!
留め金をパチリと外す。
いくぜ。
……と思ったけどやっぱり怖い! やっぱり神に貰ったほうにしよう!