表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/24

2 さあ、お選びなさい!

 少年は俺によって話のコシを折られた事も気にせず、質問を許可してくれた。


「どうぞ」

「すいません、再確認させて下さい。今の話を」


 話が一回では、頭に入ってこないんです。おっさんなもので。


「はい」

「要するに、その何とかいう本を開くと、中には漢字が一つきり入っていて、その意味に関係するような能力が、使えるようになる、というのですか?」


「そうです」

「そんな本があるというのですか?」

「そうです」

「そんな世界が、あるというのですか?」


 少年はニコッと笑った。

 すでに顔は元の彼に戻っている。


「その通りです」


「信じます!」

「更に。貴方にはこの本までさしあげてしまうのです」


 少年はまた手に、一冊の本を持っていた。

 そして、それを少しだけ、俺に差し出すようにする。


「その不思議なものを、自分がいただけるのですか?」

「……はい」


 俺は彼が持つ本を見つめたまま、問いかけた。


「それを開けば……、私にも特殊な能力が?」


「勿論」

「それは素晴らしい」

「でしょう」


 本を開く。

 それだけで。

 特殊なチカラが身につくなんて。

 悪くない話だと思う。


 いや……凄いじゃないか……!


 何であれ、きっと役に立つだろう。

 開きたい。


 俺の本心はこうだ。

 信じがたい話だ。

 これはウソだ。

 さっきのデモンストレーションは手品。

 絶対に詐欺。

 信じない。


 だけど信じたい!

 だから信じる!


「で……、その本には何の字が入っている」

「わかりません」


 ――彼は俺の質問を切るように言い放った。

 更にこう続ける。


「『神字ノ書』は数多くありますが、何の字が収められているのやら、中を見ずに確かめる事はできないのです。


 されど開かれた書は、使用者に能力を付与してその後すぐ、力を失ってしまいます。


 ――つまり。

 どんな能力が得られるのかは、封を解くまでわからない、そして開いたらもう取り返しもつかない、キャンセルもきかない、すなわち初回一発勝負!


 結果は神のみぞ知る!

 何がでるのか、開いてみてのお楽しみ!

 とまあ……そんなところです」


「一回きりの『ガチャ』みたいな?」

「そうそう」


 そして彼は、深く息をした後、大きく手を広げて俺に語った。


「手にしたチカラが、神能力となるもゴミ能力となるも、全ては使い方次第!

 様々な能力に満ちた、そんな異世界があるのです!

 そこでは、何をなそうと貴方の思いのまま!

 素晴らしい結果になるのか、それとも最悪の事態になるのか、ああ!」


 恍惚とした表情で、少年は両手をあげてくるくると回った。

 楽しそうだ。

 そして俺をぴしりと指差す。

 まわりすぎたのか、ちょっとぐらぐらしてる。


「さあ、転移しますか? それともこのまま死にますか?

 お選びなさい!」

「え……?」


 何その二択……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ