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8.巻き込まれた

 頭が痛い。なんだか金槌でぶたれているような感覚がするほど痛い。

「…………」

 私の体の下が硬い、冷たい。コンクリートか石の上にでも寝ているのだろうか? あ、違うや、寝かされているのだろうか? どうなのだろうか?


 そういえば、殴られて気を失い、しかしそれでも気を取り戻したとき、漫画やアニメ、ドラマなどの大半はその殴られた時の記憶は無いという現象が起きる。が、しかし、しかし!! 

 ……私、全部覚えているってどういうことですか。もう絶対悲劇のヒロインとかそんな感じの器ではないのだな。でも本当鮮明に思い出せすぎてもう笑えるほどなんですが、爆笑してもいいですか。


 というか、最後私が女の子に金属バットで殴られる前に、あの黒髪の男の人殺すぞとか言ってたけれど、私死んでないんですが、普通に生きているんですが、どういうことなのかなこれ。

 というか、ここ寒い。え? 今、梅雨だよね。真冬並みとは言わないけれど、春に入ったか入ってないかよくわからない時期並みに寒いよ。なんなんだよここ。

 まあ、そんなこと思ったって、なにもならないか。


 えっと、足と後頭部の痛み以外、痛いと感じるところは無くて、手、足、胴体、どれも縛られている圧迫させられてるという感覚どちらもなし……か。

「…………」

 一応、目を開けてみたほうがいいのかな。たぶん、さっきいた公園ではないところにいるよね。


 さっき私がいた公園は全面が芝生に覆われており、コンクリートの部分など一箇所もない。

 あるのは黒い粒がたくさん集まっている砂場、長さ五メートルにも及ぶ巨大なジャングルジムと滑り台、そしてさっき私が乗っていたブランコ。こんなものだ。

 コンクリートは道路に行かなければない。殴られた衝動で私が道路に飛ばされたという線も存在するが、公園沿いを通っている道路のコンクリートはごつごつとしている。

 だけれど、今私が寝かされているところはどちらかというと手が滑らかに滑らせることができるほどすべすべしているので、その線は無いということになる。

 ということはどこかに連れられてしまったのだろう。あの二人によって。お兄ちゃんの敵によって。


 完全に巻き込まれちゃったのか、私は。

 って、あれ……まって。ここ、異世界というところじゃないよね。お兄ちゃん達って確か、魔界っていうところの奴らと戦っていたはず。ん? 嫌だよ? 地球から出さないでよ。


 私は重たい瞼をほんの少しだけ開けた。

 ほんの少しだけ開けた視界に映ったのは、だだっ広くてたぶん野球場が一個は軽々入るであろう空間だった。

 嘘だろ。え、私をさらったの結構ラスボス的な存在なのかな。え、まって、怖い怖い。

 私は目を閉じる。そして、寝た。



 たぶん二時間ぐらい寝て、私は起きた。そしてついついうっかりして起きたと同時に目をパッチリ開けてしまった。

「あ、起きた。キリト様、ヒーローの妹起きましたよ」

 そして、速攻起きたのが女の子に見つかってしまった。

 私は覚えている、私を金属バッドで殴った女の子だ。女の子と私の距離はたぶん五メートルもないだろう。

 まさかの事態。絶体絶命。どうしよう。怖い。


 お兄ちゃんがヒーローだからって私がお兄ちゃんの敵にかなうような力を持っているわけではない。

 お兄ちゃんは敵と戦うとき一回見ただけだが、幻術というか、火に包まれた竜をどっかから呼び出して戦っていたりした。が、私にはそんな力はない。私はただの一般人だ。人間だ。

「お、本当だ。おはよう、弥生凛和ちゃん」

 女の子に私が起きたのを教えてもらった男の人、名はキリトというらしい人が私に向かって微笑む。

 と、同時に私の体中に悪寒が走った。それに何かが這いずり回ったような感覚に襲われた。気持ち悪い。

「…………」

 私は声を出さずにただただキリトという人を寝ころんだ体制のまま、見る。


 ていうかこの人肌しっろ! 透き通るように白いんだけど。怖いぐらいだよ。

 本当に男は日に一回も当たったことがないのではないかと思うぐらい白かった。

 それに彼の髪は、たぶんお兄ちゃんよりも長く、襟足まである黒髪で、片目が前髪で隠れるほどの長さがあった。

 そして真っ赤のきりっとした目、不敵な笑みをこぼす口、どれもが白い肌に相まって、とても綺麗に見えた。思えてしまった。


 男の人の服装は、とにかく黒かった。黒のロングコート、黒のズボン、黒のミリタリーブーツ、因みに黒のロングコートの下も黒の服が見える。とにかく黒、黒、黒、黒。本当に黒ばっかりだ。黒い塊だ。

 というか、この人の八重歯長くない? とがりすぎじゃない? ん? え? いや、いや、そんなわけがないだろう。


 ──吸血鬼なわけないだろう?

 ──吸血鬼なんてこの世の中にいるはずない。


 「ああ、そうだそうだ」

 表面上は無表情な私を見て、少しつまんなく思ったのだろう。男の人が私に話題を振ってくる。

「まず自己紹介をしなくちゃな」

 一歩ずつ、私にゆっくりと近づきながら。

「俺の名前は、キリトっていうんだ」

 だだっ広い空間に彼の足音が不吉に響く。

「で、種族は」

 私は寝ころんだ体制から、すぐ動ける体制に変える。コツン、コツンと響いていた足音は、私の前で止まった。と、同時に男の顔が私の耳元に来た。

「吸血鬼っていうんだ」


「!!」

 その言葉を言われた瞬間、私は全力で後ろに飛び跳ねた。私は一応運動神経には自信がある。十メートルほど離れられた。

「あれまあ」

 吸血鬼はクスクスと嗤う。本当に面白そうだ。

「そんなに警戒しないでよ」

「私をそんな舐めるような感じで見るやつを、食料として見るやつを警戒しないほうがおかしい」

 私は私の周りの物すべてを警戒しながらそう反論する。

 さっきだって悪寒がしたのは私を、あの吸血鬼が私を、本当においしそうな食べ物のように見ていたからだ。

 ああ、踊り食いさせる魚とかはこんな思いなのかな。もう踊り食いを特集する食べ物の番組を見れなくなっちゃうよ。


「あらまあ、ばれちゃったか」

 彼は本当に楽しそうだった。

「おい、キイ」

「はい」

 女の子が抑揚のない声で返事をする。

 この子の名前はキイというらしい。あれ、なんか聞いたことがある名前だな。誰だっけ?

「お前は下がっていろ」

 嗤う吸血鬼。

「了解しました」

 おとなしく下がっていく悪魔。

 女の子が下がったのを確認すると私をまた舐めるように見てきた。


「…………」

 来る。

 私の首筋に冷や汗が走る。

 そして吸血鬼は歌うように、私に向かってこう言ってきた。

「さって、久々の惨殺タイムだ。せいぜい楽しませてくれよ、ジショーヒーローの妹の弥生凛和ちゃん」

 絶対嫌だ。

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