45.変なこと言ったら許さないから
「なんで面白そうにしているの」
歩くことを再開した私はそのまま吸血鬼に聞いてみた。すると彼はだんだん顔色を戻しながら私の問いに答えてくれた。
「だって、照れ隠しに武器を構えてくる女子とかよくない?」
やばい、本当にこいつのこと大嫌いになりそうだ。なんというか、引く。
「お前ってそういうやつだったんだね」
「え? うん」
「否定してほしかったわ」
きょとんとしながら、普通に答えてくる吸血鬼に私はため息交じりにそういった後、もうなんか話す気力が失せたので、それからは無言で階段を下りた。
その代わり、私の脳内ではかってに先ほど御開きと言われた後のことが思い返される。
御開きと言われた後、私はあることを一つだけハギナさんに質問した。それは、異界者殺しというものはこのままの格好でやっていくのかというものだった。
というのも、セツさんから『魔法少女になってよ』と謎の言葉を言われるくらいだから、何かしら変身とい言ったらちょっと恥ずかしいけれど、そんなことをするのかと思ったからだ。
すると彼女はああーと言ってから、私に教えてくれた。
『変身というか変化というか、凛ちゃんもヒーロー側にいろいろバレたくないと思うから、異界者殺しになりたい! 源になりたい! 変わりたい! って思うと変化できるようにしてある。というか、変化してもらわないと最大限の力を出し切れないから、私の願いとしてはどんなに恥ずかしくても変化してもらうといろんなことで助かるのだが。
あ、でも衣装というか、格好は私じゃなくてマセツが考えるから多分あいつの今の趣味になるから、多分私と同じような和服とブーツの組み合わせになると思うぞ。
それと、顔もそれなりに変わるし、髪色と髪形も変わると思う。前のやつらもそれなりに変わってたから。だから、自分から名乗りを上げない限りバレないようにしてあるから安心しろ』
とのことだった。
それと、魔族は殺したら自動的に天界に行くようにになっているから、安心してハギナさんから依頼された魔族を含めて殺っていいことと、依頼する時は、鈴の音が頭の中に響いてから頭の中にデータのようなものを直接送られるそうなので、私にもともと備わっている魔族を感じる能力を使って探して殺っていってほしいとさらっと言われた。なんだか大事なことなので絶対に忘れはしないと思うけれど、このことをもう一度私の頭の中で繰り返す。よし、これでもう絶対忘れない。
そして、ハギナさんがとても危険だと判断した魔族に関しては、彼女か、彼女が遣わした魔族が直接私のところに行ってその詳細を伝えてくるということも言っていた。
それに、ハギナさんがいる天界と私の足元は繋がっているらしく、本当に何かあった場合、脳内でハギナさんのことを強く思えば下からハギナさんが参上してくれるということだった。だから先ほど私の足元からハギナさんが当たり前のように登場してくれたのだった。でも、ちょっとこれはいろいろ怖かったので改善してほしいというか、登場の仕方を変えてほしい。
まあ、かわいい声が下から聞こえてくるというものは悪くはないのだが、下を見ると妖美なお方のお顔があるというのは何とも怖いのだ。というかこれからスカートの時絶対見えそう。……何か穿くか。
というか、さっきからずっと思っているのだけれど、二人は声帯を交換したらいいと思う。いや、無理だと思うのだけれど。でも、セツさんが見た目がかわいく、声が色っぽいというか大人っぽい。ハギナさんが見た目が色っぽく、声がものすごくかわいい。ロリボイス。
言っては悪いのだけれど、どちらも見た目に合わない。交換したらすごく自然だと思うのだ。まあ、これはこれでいいのかもしれないれど。
そんなことを考えながら道を歩いていると、隣から着いたぞという声が聞こえてきた。
私ははっとして吸血鬼が見ている方向を見ると、宵さん達の家が見えた。え、なんでこいつがここの家のことを知っているんだ。いやでも、もしかしたらハギナさんに教えられたということかもしれない。
「やっぱり一番の親族の家って今もこの場所なのな」
「なんだかまるで昔、ここに来たことがあるような言い方だね」
「だって来てたし」
「来てたんだ」
こいつ、昔どういうやつだったんだろう。なんでこいつがここを知っているんだ? あ、そういえばハギナさんもセツさんもこいつに親しげだった。ハギナさんはまあわかるにしても、セツさんまで親しげだったのにはなんだか疑問が浮かぶ。なんか、むしゃくしゃするな。ちょっと引っかかってムカつく。
すると、私の気持ちを知ってか知らずか、彼はこんなことをぼそっと言ってきた。
「別に、たいしたことないよ。俺がちっさい頃に前の源と面識があって少し遊びに行っていただけだから。だからここの家に俺と面識があるやつはいない」
「…………そっか」
「うん」
彼は特に今言ったことに思い入れはないようで、私の言葉に返事をすると同時に、いつの間にかインターホンに手を伸ばしていた。
「すみませーん、ここに人いらっしゃいますかー」
「あ」
ピンポーンと私たちが来たことを知らせる音が家の中から漏れて聞こえてきた。それと共に、中からはーいと宵さんの特徴的な声が聞こえてくる。どうやら宵さんはまだ家の中にいるらしい。ということは当たり前だけれど瑞茄さんもいるのかな。
え、というかなんで初対面なのにこいつ堂々と私の隣にいてくれちゃってるの。何をする気なの。いや、でももしかしたらその時の源と面識がある人が今のおばあちゃん辺りに話していてこいつを知っているとかは? いやでも、そういうのだったから内緒話であの人とか言ってきそうだからな。ないか。
というか、なにげにインターホンと共にひどいこと言ってないかこいつ。
「いやー、どういう人出てくるんだろう。楽っしみ」
そんな疑問だらけで、頭の中をフル回転している私とは違い、隣にいる吸血鬼はとても楽しそうに今から玄関から顔を出してくる人物に期待を寄せている。なぜだろう、とても殴りたい。
そういえば、先ほどからなぜだかとても嫌な予感がすごいするんだけれど、これは何故だろうか。まさか、宵さんが出てきた後に何か変なこと言ったりするのかな。え、本当にやってきたらどうしよう。蹴るか殴るか……どうしよう。
そうして、目の前にある扉がガチャリと開かれた。
「はーい、お待たせしてしまいましたね。どなた様でしょうか」
そんな少し殺意のようなものを感じる言葉を発しながら宵さんが出てきた。あ、キレてる。怖い。
そんな宵さんは丁度ドアの真正面にいたキリトをなめるように見回した後、やっと私の存在に気づいた。私としては気づかないままドアを閉めてほしかった。
「え、あ、え?」
そんな何とも耳をふさぎたくなるような言葉が宵さんの口から漏れ出してくる。
私は自分でもどう表現したらいいかわからない表情をしながら、今の状況を説明しようとした時、何やら背中に重みを感じた。
「どうもー。凛和ちゃんの彼氏のキリトと申し……ぐふぉ!!」
「……誰が私のなんだって?」
瞬時に反応してしまったのでよくわからないが、多分私は後ろにいた男の手を掴んで投げた。そして、その後についでとばかりに空中蹴りをお見舞いした。今回は初回だからこのぐらいでいいだろうとのことで私は笑顔を作って彼女に話しかけた。
「すみません、バカ吸血鬼が変なことを言いました。先ほど私の一族のことを知り、その――異界者殺しという存在になった、凛和です。こいつは、私の付き添いです。他人です。超他人です。さっき会ったばっかり。何もありません。ですのでご安心を」
「お、おう」
その言葉に宵さんは戸惑いながらもうなずいてきた。




