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33.それは私がいうことではないので

「うええええええええええええ!?」

 私の唐突な一言を聞いたあと、紀異さんが後ろに仰け反った。とそのあと、ささやかな抵抗で手を回してバランスを取ろうとしたものの、重力には耐えきれなかったらしく、ドンという音とともに後ろ向きにお尻から倒れ落ちた。

 いうか、反応が分かりやすいな。ちょっとほっこりしてしまう。

「大丈夫……? それと、その反応はイエスということでいいのか。それとも突飛な発言だったのでただただ引いただけなのですか」

 一応私は疑問でその反応に言葉を返した。まあ、多分これは前に挙げたことのほうがあっているのだと思うけれど。

 私は彼女のの手を取り、上体を起こさせると彼女はありがとうと言って、眼に浮かべた涙をシャツの袖で拭き取った。なんだかとても痛そう。というか、痛そうというか、痛いんだろうな。絶対痛い。私だったらうずくまってその場から数分動かないというか、動けない。なんか、もう、なにもいえない。


 

「うううう、痛い……。合ってるよ、イエスだよ。正解だよ。というか、なんでわかったの……」

 唐突に言った自分が思っていいのか不安だが、彼女が何もしらばっくれずに、誤魔化さずに私が言ったことを認めてくれたのは意外だった。何か話をそらして、それか何か下の攻撃をしてくると思ったからこうしてドアの鍵を閉めたのに。

 私はうーんといった後に首をかしげる。

「…………勘?」

「なぜ疑問形」

 私は立ち上がった彼女を見ながら一歩だけ後ろに下がって説明を始める。


 と言っても、説明だなんてできるほどの情報を私は持っていない。

「いや、だって自分でもよくわからないんですよ。あなた様が人間ではないのは初めて会った時には分かっていたのですけれど、どういう異形の種とかは全然わからなかった。自分の中の何かが警報というか、この人は人間ではないから注意。注意! って頭の中の何かが危険信号を発信していて、もやもやして、気持ち悪かった。

 そして、その原因が分かったのは最近です。それに分かったのだってなんでかわかりませんし。まあ、たぶんあのお兄ちゃんのせいでいろんな魔族? さんに襲われてたくさん嫌な感じで接触してきたのが原因でしょう。でも、分からない。分からないから自分でも疑問形になっちゃって、余計わからなくなってしまうんですよ」

 とこんなことしか言えないのだ。

 自分で言っていても摩訶不思議なことだ。よくわからない。これが本音。


 そんな奴が言ったんだから、聞かされた人が混乱することは当たり前なんだ。

「え、まって、すごいことさらっと言われた気がする。ちょっとまって、え? 初めて会った時には私が人間でないことはわかっていたって? へ? それに私がキリト様の従者で分かったのは最近? え、凜和ちゃんって何者?」

「自分でも知りたいですよ、そんなこと。それに、わかりたいから紀異さんの正体聞いたんではありませんか。まあ、それは無駄足だったみたいですけれど」


「凜和ちゃんって結構心許すとずばずば言ってくる人なんだね」

 すると彼女からそんな言葉が呆れたように私を見てきてから投げられてきた。

 そうだろうか? 私は別に当たり前のように思ったことを言っているだけなのだけれど。まあ、でもこれもこれでいいかもしれない。そして私はいたずらっぽく笑みを浮かべてみる。

「まだ遠慮しているほうですよ」

「これでも!?」


 紀異さん目を見開いとる。え、そんなに驚くことなのだろうか? まあ、面白いからいいのだけれど。

「うん。私の心を覗かせてあげたいくらい」

「じゃあ今度覗いとくわ」

「……できるのか」

「当たり前じゃん」

 彼女は胸を張ってそういってきた。かわいいけれど、その中にいったいどれほど現実の常識というものをを捻じ曲げてしまうものを秘めているのだろうか。

 たぶん吸血鬼の従者という立場なのだから、能力とかはバカにできないんだろうな。私なんかとは比べ物にできないくらい、絶対に敵に回してはいけないぐらいは持っていると思う。気を付けなければ。


「まあいいっか」

 私はそうつぶやいた後、彼女に向けて頭を下げた。

「え?」

 頭を下げられた人物は困惑を押さえつけられず、声が漏れてしまう。まあ、こんな唐突なことをされると誰だってそういう行動をとってしまうだろう。

 そして、私は思い切って言葉を出す。本当のことが分かったのならば、ここからが本題だ。

「貴女と、あなたの主人であるあの吸血鬼にお願いがあります。バカなことだと、危険なことなのかもしれないことはわかっています。だけれど、だけれど! 知りたいんです。なんで私の家族はあんなことに遭ってしまったのか、なんで殺されなければいけなかったのか、知りたいんです。だから、あの、女の悪魔のことを教えてください。お願いします」


 私が言い終えると、少し声のトーンが落ちた紀異さんの声が聞こえてきた。

「それはさ、復讐ってことかな? 仇討ちってことかな? とりあえず顔を上げな」

 言われた通り顔をあげると、そこには紀異さんの姿は見えなかった。その代わりにキイ、あの吸血鬼の従者である人物の姿が私の目に映った。

 彼女の姿はとても無邪気なこどものようなのに、どこか大人っぽくて妖美で、綺麗だ。そんな彼女はとても楽しそうに私の部屋をうろちょろしていた。一歩前に進むたびにピンク色のフリルが黒いスカートともに揺れている。


「私は別に止めないよ。争いを見るのはどちらかというと好きだし。まあ、あの人がどういうのかは知らないけれど」

 彼女はまだ私の部屋の小物を見ながら答えてきてくれている。

「でもさ」

「でも?」

 彼女は私の箪笥の上に置いてあるあるものを取り、私に見せてくる。

「その前に、私たちなんかにそんな願い事をする前に行ったほうがいいところがあると思うんだ」

 彼女の笑顔がまぶしい。彼女は何かを知っている、そう私は思った。

 だって、彼女が持って、私に見せてきたものはあの写真。唯一残っていた私と親が映っていた写真。どこで撮ったのだってちゃんと覚えている。昔私が住んでいた家の前だ。もう、ぐちゃぐちゃで跡が残っていない、というかもう更地になっているであろう場所。

「……そこに行って、なにになるの」

「それは、行ってからのお楽しみだよ。多分私が思っていることが正しければ、貴女の家はなくなっていないよ。多分、当時のまま、時が止まったように残っているんじゃないかなー」


 それは、どういうことだろうか。明らかに彼女は私の知らない何かを知っているということなのだろう。

「待って、それってどういうこと? そんなことありえないよ。というか、あなたは何を知っているの」

 キイは優しく写真をもとにあった場所に戻すと、何か悲しそうな目で私を見てくる。そういう感じのものなのか、なんだか先が思いやられる。


「それは今私が言ったら面白くないじゃん。でも、ちょうどよかったね。明日はお休み。行こうと思ったらすぐ行けるよ。そしてすぐ知れる。実行に移すか移さないかはあなた次第だけれど、あなたの思いが本物ならば私は行くことをお勧めするよ。私にお願いをするのはそれからでも十分間に合う」

「…………」

 これは行かないとめんどくさいことが起こりそうだな。彼女の言っていることが本当だとしたら、もともと私の家、というか、家系が何かしら特殊なものだということが推測できる。だとしたら行かないとわからない私の秘密なんかあったりして。うわー先が思いやられる。

 彼女はもう自分が思っていることは全て言い終わったと思ったのだろう、キイから紀異の格好に戻って救急箱を取り出し、勝手に漁り始めている。この子は本当にマイペースだな。

 この程度の傷口ならば自分でもできるのに。でも、わざわざやってくれようとしてくれるのは嬉しいし、好感度が上がってしまう。

 ん? そういえば……。

「そういえば、私の親生きていた時、よく私に怪我をできるだけ極力に避けなさいって言ってたっけな……」

 というか、それが私の親の口癖みたいなものだった。毎日毎日、かかさず私が朝の支度が終わった後に言って来ていた。口癖というより日課みたいなものだったな。

 今思うと懐かしい。あのことはウザったく思っていたのに。

「……それは、凛和ちゃんの親は心配性だったんだね」

 彼女はそう微笑みながら言ってきた。そして、けがの治療を開始するから上の服を脱いでといってきたので私はおとなしく体育着を脱ぎ、傷を見せた。傷口は思ったよりも大変なことになっていた。


 彼女は優しく私の傷を消毒していく。その間に私はつぶやくように、しかし力強く言葉を出した。

「決めたよ。私は明日、昔、私の家だった場所に行くことにするよ」

 すると彼女はそれがおかしかったのかどうかわからなかったけれど、少しふふっと笑ってから私の考えを肯定してくれた。

「そう。頑張れ」

 そして、こうも言ってきた。

「何か君に危険が起こったら、すぐさま私はあなたを助けに行くからね」


 傷の手当が終わったら彼女は満足したそうでそのまま何もせずに帰っていった。

 一言お世辞なんだろうが、今日はありがとう、楽しかったよと言ってくれた。それは、初めて家に人を入れた私にとってはとてもうれしい言葉だった。



 そして次の日、これからの私にとって、とても重要で、因縁深い一日が始まろうとしていた。



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