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3.日常

 とにかく私はロリ好きの煉璃さんの魔の手から逃れることに成功した。ありがとう、お兄ちゃん、この恩はたぶん忘れないよ。


 それにしてもあれだ、お兄ちゃんは普通に吐血していた。床に赤い液体が落ちている。少し鉄臭い。これは乾いて床にこべりつく前に拭く必要があるな。


 お兄ちゃんと煉璃さんはただいま言い争いというか、なんだかそろそろロリのどこがいいか論議を始めそうだけど、私は気にしないようにする。


 ことの原因が私だろうがなんだろうが、知らない振りをする。巻き込まれたくない、切実に。

 というか、お兄ちゃん吐血したのに普通に言い争いしているあたり凄いと思う。感心してしまう。あとで濡れたタオルを渡すとしよう。あと、うがいもさせなくては。



 そのあと私はお兄ちゃんが吐いた赤い液体の処理をした。今は二人の為のコーヒーと菓子を用意している。


 私の趣味はお菓子作りとネット巡回だ。それが私の生き甲斐であったりするから、それを邪魔する人はたとえお兄ちゃんであっても容赦はしない。

 実際にこの前お兄ちゃんにある動画サイトで生放送を聞いているとき、邪魔をされたので怒って飛び蹴りと回し蹴りをお見舞いしたことがある。


 そのあともちろん兄を放置し、ネット鑑賞にもどった。


 お兄ちゃんは好きだが、普通にあの人はうざい。


 何か嬉しいことがあったら誰かにそれを伝えないと気が済まないという性格だから、人がなんか集中してパソコンのキーボードを打っていたとしても、くっそ重いお菓子の生地を混ぜたりしていたりしてもお構いなしにあのさっきのテンションで話しかけてくる。あれは非常に迷惑だ。

 まあ、それが、いつも無駄にテンション高いのがあの人のいいところなんだが。長所は考えようには短所になる、そういうことだ。



 ぱっぱっと茶菓子の準備を済ませた私はまだロリについての論議を熱く語っている二人に話しかける。


「煉璃さん、お兄ちゃん、コーヒーとチーズケーキここに置いておくね、好きに食べていいですよ。そしてお兄ちゃんはうがいしてきて。さっきなんだかんだ吐血してたでしょ? だからうがいしてきて、というかして来い」


 それに二人は反応した。光の速さだった。


「おお! 凛和ありがとな、というかいつの間にこんなものを作っていたんだ!? そしてうがいはさっきしたから大丈夫だ!」


「凛和ちゃんありがと、じゃあお言葉に甘えて遠慮なく頂くね」


 煉璃さんは変なスイッチがあ入らなければ普通に優しいお姉さんだ。そう、変なスイッチが入らなければ。……もうあんなことをされないように、これからはもう少し気を付けなければ。


「あれ? 二人分しかない。凛和ちゃん食べないの?」


 私が持ってきた茶菓子の量に気づき、煉璃さんが私に問いかけてきた。それに私は申し訳なさそうに答える。


「ああ、はい。ちょっと睡眠不足でふらふらするので食べないで私は寝ます」


 昨日本気出してチーズケーキ作ってたツケが睡眠というものに回ってしまった。やはり学校の前日にそんなもの好奇心で始めるんじゃなかったな、迂闊だった。


 それに、私は普通に最低五時間は寝ないとダメな体質だと忘れていた。辛い。オールしてもピンピンしている体の持ち主になりたいと切実に思う。願望多すぎだと思うけど、そう思う。


「そっか、じゃあお休み。よく眠ってね」


 私がそう言っても怒らないで優しく私に話しかけてくれるあたり、彼女は本当にいい人だと思う。こういうところは本当に見習たい。


「はい、ありがとうございます。あ、あとコーヒーはいつものところに置いてあって、チーズケーキも冷蔵庫にまだ残りが入っていますので遠慮なさらずにお代わりしていってくださいね」


「おお! マジか! よっしゃ!」


 黙っていたお兄ちゃんが口を開いた。その手に持っている皿は空っぽだ。いや、早いよ食べ終わるの。どっかのガキか。


「いや、お兄ちゃん食べ終わるの早くない?」


「あ、ずるい。この野郎! 私がお前の妹心配して話してた隣で黙々とチーズケーキ食べてやがったな」


 煉璃さんが軽くキレた。いや、まあ、当り前っちゃあ当たり前だけど。

 でも、胸倉つかむのはさすがに短気すぎると思う。うん。


 しかし、お兄ちゃんはあくびれることなくさも同然のように真顔で答える。


「いや、だってうまかったんだよ」

「あー、そうですか、よかったですね」


 反省の色なしだ。煉璃さんの頭に血管が浮き始めている。こんなことは日常茶飯事だが、一応止めに入った。


「まあ、煉璃さん落ち着いて、落ち着いて。あと七切れほど残ってますので、最低一人あと三切れは食べれるようになってますので大丈夫ですから、ね?」

「……解った」


 解ってくれた。意外にもすんなり解ってくれた。少し嬉しい。


「では、私は寝ますので」


「うん、おやすみー」


「おお! いい夢見ろよ!!」


「はい、おやすみなさい」


 そう言って私は小さくお辞儀をし、自分の部屋に繋がる扉のドアノブに手を掛けた。


 私の家はメゾットタイプのマンションだが、一階にほぼすべて私達兄妹二人が生活するための部屋が揃ってしまっているため、二階は普段からあまり使われていない。というか、二階は御母さん達が使っている部屋なので、何があるのかわからないので私達兄妹が迂闊に立ち入れないというのもあり、二階には私の部屋は存在しない。

 私が住んでいるのはそんな家だった。


 私の部屋は日当りのいい部屋で、ベランダに繋がる窓がある。

 あとは猫が描かれているベットだったり謎に存在感があるデスクトップのパソコンがあるぐらいだ。多分私以外が見たらちょっとがらんとしている部屋に見えるかもしれない。そんな部屋だ。


 そして私は自分の部屋に入った後、制服から猫の顔が大体的に描かれているパーカーに着替えベットにダイブする形で入りこみ、眠りについた。


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