16.やらかし
今回は書き方がなんか特殊ですが、許してください。
私がお兄ちゃん達がヒーローだと知ったのは、さっき言った通り、一昨年に私、お兄ちゃん、煉璃さん、武藏さん、そしてお兄ちゃんのお母さんとで行った一泊二日の海水浴です。
海水浴自体は本当に楽しかったので、よく記憶に残ってますよ。まあ、内容が内容でしたので残っていると言った方が、正しいのかもしれませんが。
で、あれは確かみんなでこれから花火をしようかと、眺めがいい海の家で、夕日を見ながら話していた頃でしたよね。耳に残る、不吉なブザー音が鳴り響いたのは。
その音が聞こえてから、みんなの顔色が変わりました。
凄く何とも言えない緊張感があって、まるで大きな災害が今からここに起こることを、知ったような顔つきを私以外の全員がしていて、何事かと思いましたよ。
そのあとすぐに何やらお兄ちゃん達が話し合ったと思ったら、煉璃さん達はどこかに走って行ってしまいますし……。
まあ、私はお兄ちゃんの手によって山から遠い場所――あ、その時は幸いにも私は水着を着てなかったので、どこにも寄らずに行きましたよ。直行です。まあ、ここら辺は知っていると思いますが。
私を無事に部屋に連れて行ったお兄ちゃんは安心したように、しかし緊張感をもって私に言いました。
「絶対俺が帰ってくるまで部屋から出るな」
と。私は少しでもその時の状況を知りたかったので、質問しましたよ。ちゃんと。
「なんで、お兄ちゃんはそんなに焦った顔をしているの?」
って。まあ、お兄ちゃんはその時、変にはぐらしてすぐさま去って行ってしまいましたが。
さて、ここからが本題です。
まあ、こんなことをされたら当時中学二年生の私は、下がるわけにもいきませんよね。むしろ好奇心という邪心が私の体を蝕んでいきます。
というか、何をそんなにお兄ちゃんは私に隠そうとしているのか、気になって仕方がなかったのですよ。
皆さんが知っての通り、お兄ちゃんは思っていることがそのまま体に出る人ですからね。何か大変なことが、お兄ちゃん達にとってとっても不都合なことが起きたことは私でも解りました。
だから、私はお兄ちゃんの言ったことを無視して彼の後を追いました。追い方はちょっと言いたくないので、飛ばします。
お兄ちゃんは人間なのか? と思うほど兄は足が速くて、私は何度かお兄ちゃんの行く道を見失いながらも、何とか無事、彼を見つけることがで来ました。
そして、同時にお兄ちゃんの秘密を知ることとなりました。
まあ、最初は、『兄や煉璃さん達が誰かと争っている』という風にしか受け取れませんでしたがね。まあ、その言い方であっているのかもしれませんが。でも次第に、そうそうではないということが分かっていきました。お兄ちゃん達は何か目的をもって、誰かを守ろうとして戦っているのだということが分かったんです。
そうして、お兄ちゃん達が戦っている姿を見ているうちに、こうも思いました。まるでテレビの中の、悪と戦うヒーローみたいだ、と。
とりあえず私はもっと詳しく様子を見るために、絶対見つからない、そして危害を受けにくいところに身を隠すことにしました。
その時とっさに思い立って潜めたところはお兄ちゃん達がいるところから約五十メートルほど離れたところにある大木の枝の上でした。その距離と高さならば、絶対に見つからないと思ったのです。それに私は視力がいい方ですから、五十メートルぐらいなら余裕ではっきりと見ることができます。
私結構ジャンプ力と跳躍力には自信があるのですよ。結構ぎりぎりでしたが、誰にも見つからずに一発で枝の上に身を移すことができました。
戦いを見ていると、お兄ちゃんは大剣で戦い、凛和さんは大斧で戦い、武藏さんは銃で戦っているということが分かりました。
そしてお兄ちゃん達と戦っている人は、争っている人は、これは人って呼んでいいのかわかりませんが、その人の耳は先がとがっており、爪が長く、何か魔法使いっぽい服装をしていたと思います。
その人は魔法陣となるものを出していました。結構アニメヲタクとなる私にとっては、テンションが上がるものでしたが、その興奮を押さえつけ、なるべく静かに、ささやかに息をしながらその様子を見ていました。
まあ、結果的にはお兄ちゃん達が圧勝してましたよね。
そして戦いが終わった後、煉璃さんはお兄ちゃん達が負傷したところを治してましたよね。なんか負傷した部分だけ青白く光っててそのあと何もなかったようにきれいな肌に戻ってた。あれは見ててなんとも言えない気持ちになりました。神秘的というかグロかったというか、そんな感じの印象があって、そのあと非現実すぎて、実際にこれは現実か? 夢なのか? と少し混乱してしまいましたし。
まあ、そのあとはお兄ちゃん達に気づかれないようにしなくてはいけなかったので、そそくさと帰りました。
ということで、私が初めてお兄ちゃん達が何かと戦うものだと初めて知ったのがこの時のことでした。
そしてまた違う日は、お兄ちゃんが竜を出しているのを見たり、煉璃さんが瀕死の大怪我を負ったお兄ちゃんを何も無かったように綺麗な身体にしたのも見ましたし、武藏さんが大きな何かわかりませんがヘリコプターみたいな、機械を操作して爆弾を投下し、相手の人を倒すのを見ました。
というか、お兄ちゃん達だけでなくてさっきの話に少し出てきた通り、私のお義母さんやお義父さんも、その、悪と戦うヒーローの組織の一員なんですよね?
戦闘員とかじゃなくて、司令塔とか、元締めとか、研究員に値されるポジションにいるのだと私は思っているのですが。あ、これはたまたまあの見た時にそのような行動をしていたから思っているだけで、本当に憶測ですよ。憶測。
知ってても私には得とかなくて、損しかないと思ったので深追いしていないのでなんとも言えませんが……。
あとはお兄ちゃんは、私に対して警戒心がないのか何だか知りませんが、『悪の弱いところをまとめたノート』と表紙に書いてあるノートを居間に転がしといてくれたりしましたから、まあ、知っていたほうが当然というか、なんというか……。まあ、そんなこんなで今に至ります。
だから、いつかお兄ちゃん達のやっていることに、悪い形でもいい形でも巻き込まれるかもしれない。と思っていましたし、巻き込まれたくないと強く願ってました。
まあ、最終的に昨日、巻き込まれてしまったのですがね。まあ、今思い返せばあれはしょうがなかったと思いますし。
「まあ、そういうことでお兄ちゃん達のことは結構前から知っていました。……はい」
私は自分の語りの才能のなさに絶望しながら、話を終えた。
私が話し終えた後、、真っ先に口を開いたのは煉璃さんだった。
煉璃さんはとてもぎこちない表情をしていて、お兄ちゃんをゴミを見る目で見ている。
「ああ、うん。これはバレるね。うん。ごめん、私がばれてないと思っていたのが間違いだったわ」
そして、そんなお兄ちゃんはというと、煉璃さんと武藏さんに向けて、綺麗な土下座を繰り出していた。やっぱりお兄ちゃんの土下座は慣れている感じがする。どうしてなんだろう。
しかし武藏さんはそれを無視するように、私のほうを向いてきた。
「でもさ、凛和ちゃんの運動神経良すぎだよ。確かあの時、僕らがいた山の木はさっき凛和ちゃん自分でも大きかったって言ってたけれど、結構な大きさだったよね。俺だったら絶対登れないよあんな巨木」
「あれは乗れた私自身、驚きましたよ。まさか一発で乗れるとは思いもしませんでしたし……」
あれは本当にまぐれだった。あの木は最初の一番近い枝でも、私の頭のてっぺんから十メートルは上のところに存在した。それに私はほぼ助走を付けずに乗ったのだ。どこのアニメやラノベの世界だよと心から当時の自分に突っ込みたくなる。
たぶんあれは本当に『巻き込まれたくない』という気持ちが強かったからできた所業なのだろう。今やれと言われたら絶対できないと断言できる。
「そうなんだ。じゃあさ、まず、僕達も話すことがあると思うんだけれどね、その前にやることがある」
「え?」
武藏さんは、まるで何かの仮面をつけたように真面目な顔つきになって、さっきまで無視していたお兄ちゃんの方に顔を向けた。
「閏さん、自己管理能力が成ってないようですね? その話を詳しく」
「あ! それ私も聞きたいなー? 閏君教えてー。家族であろうが、なんであろうが問答無用で口外禁止だったはずだよー。それなのに、相手の弱みを書いてあるノートをこの居間に起きっ放しにとくってどういうことか、説明してくれない?」
「すみません、本当にすみません。いや、だっていつも置きっ放しにしておいても俺の部屋にノートがいつの間にかあったりして、これは俺の思いがノートに移って、ノートに自主性が生まれたのか!? って思ってたんです。いや、まじで」
「…………」
「…………」
その言葉に、二人は頭を抱えた。何の比喩でもない。本当に頭を抱えていた。とっても呆れたように。もうだめたこいつ、と顔で語っていた。もう何もこの人に与えて上げれる言葉がないらしい。いや、ツッコミを与えてあげればいいだろ。とか思うが、私がそうするのもおかしい話だったので、別の言葉を掛けることにした。
私は土下座したままのお兄ちゃんの隣にしゃがみ込む。
「……お兄ちゃん」
「なんだ妹よ」
「そろそろいい年なんだし、現実見ようか」
「…………。すみませんでした」
そのあとお兄ちゃんの土下座は、さらに綺麗なものとなった。
次回も多分こんな感じの書き方すると思います。ぶっ飛んでるけれど、ついてきてください。




