訓練
「はぁ?ありえません。私の武器は薙刀ですよ?弓ではありません」
「いや関係ないし」
「それが生徒に対する態度ですか」
「それが教師に対する態度か」
椿の前に対峙するのは彼女の担任である。
「放課後呼び出されて数学の課題提出してないこと怒られるよどうやっていいわけしようとか考えてたのになにふざけたことぬかしてんですか。」
「数学の課題提出しろよ糞が」
「やってないのに提出できるわけないじゃないですか!!」
「はぁ…ちゃんとやれよ。それよりもう一度いう。明日から訓練は上風と一緒な」
「いーやーでーすぅ!!」
そう言って首を横にふる椿。
1週間前儀式によって正式に梛の従者となった椿。
決めていたことではあったので不本意ながらも梛にべったりな状態である。
つまりは必然的に桔梗と会える時間も減ってしまい、訓練のときだけが彼女と二人きりになれる唯一の時間だった。
しかし、その時間さえも梛と一緒にいろと言われたのだ。
当然、反論する。
「そうしたらいつ桔梗先輩と話せばいいと…」
「話す必要もないし…だいたい、香月と宮古。ちょうど良かったじゃないか。親からいい顔されてなかったんだろ?」
「上風家の人間の従者をやってる時点で家柄とか関係ありませんよ。というか…私はほとんど本家様からは見捨てられているので。」
「そう?まぁとにかく」
「嫌でいだぁ!?」
嫌です、といいかけたところで頭を思いきりはたかれた。
「なにするんです…梛様。」
「先生に逆らわない。」
振り返るとそこには椿の主である梛が構えていた。
椿は不満そうな顔をするものの、従う者とかいて従者。主の言うことは絶対だ。
「うう…ですが、桔梗先輩との時間まで奪われたら」
「私情を挟まないこと。」
「はい…」
「なにこれ面白い。」
基本的に生意気な椿がここまで従順であると手を焼く担任からしてみれば飼い慣らされた犬のようだった。
「どうして梛様と訓練しなきゃいけないの?」
「コミュニケーション。ようは連携出来なきゃ意味ないでしょう」
「そうなんですか」
「主にはあくまで敬語なんだな?教師にはタメなくせに」
「そんことより、戦場で生き残るため。好きな先輩といる時間を優先して戦場でコンビネーションできず隙をつかれ死にましたじゃもとも子もないでしょ分かった?」
「……はい」
主には勝てない、従者。
――――
「でも、なにするの?」
同じ訓練室にきたはいいものの何をするかはなにも聞いていない。
「精神強化」
「はい?」
担任の口から告げられたのはそんな言葉だった。
「精神強化って…拷問とか、ですか?」
そう言った椿の声は少しばかり震えていた。
「椿」
「はい。」
「んな訳ないでしょ」
「ですよねぇぇぇ」
梛から馬鹿にされたような視線を向けられた椿は少し身をすくめる。
「あっちはこっちの情報なんか求めてない。」
「じゃあ、どういうときに…」
「先生の語彙力が足りなかった。忠誠心を高める…って感じかな」
「精神強化って…先生ボキャブラリー少ないですね」
「お前ら黙ってたら好き勝手言いやがって」
「でも、なにするの?」
振り出しに戻る。