表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/36

超能力者《もうじゅうつかい》(K)

「キュウキュウシャ?」


 サマソンは突然の素っ頓狂な質問に狼狽(ろうばい)した。だって当然。もっと別のこと聞かれると思ってただろうからね。


 なぜ救急車のことなんか尋ねたと思う? それについて僕の思惑は一つだけ。もしゆみが言った通り、サマソンが悪い奴で「虎の人を殺そう」って考えていたなら、救急車を呼んだと見せかけてどっかアジトにでも連れ去ってるはずさ。僕だったらそうする。少なくとも、殺したい相手を自ら救急車で助けようとするなんてしない。だからせめてそこだけでもはっきりさせて、判断材料を増やそうと思うんだ。


「さあ、答えてくれ」


「アレは、彼女(トラ)を助けたかったからだ。撃ってしまったのは私だが、その分罪悪感を強く感じた。だから――」


「じゃあ、さっきの『残念だよ』って言うのはどうなるんだ」


「どういうことよクソ神父!」便乗してゆみが言う。


「お、お~まいごっど。実家に帰らせていただきます」神父は余計に狼狽(うろた)え、この場を去ろうとする。


「おい待てコラぁ!」ゆみは叫んで、直後神父の胸ぐらをつかんだ。「帰れると思うなよ? いいや、テメーが(かえ)(ところ)は土だな」


「タ、タスケテ。しゅーちゃん」


「え、この状況で?」


「手ェ出したら許さねぇからな」


「ぼ、ぼぼぼ僕唐揚げちゅくんにゃきゃ!」


 僕は目の前を通り過ぎるF1(エフワン)カーを目で追う人並みの速さで、後ろに振り返った。


「そうよ。それでいいわ」


 僕はこんな中でも本当に唐揚げを作ろうとして、ガスコンロのハンドルを回そうとした。だけど、汗で滑って全然火を点けられやしない。ああ、なんてこった。後ろからは激しいノック音が聞こえる。


「もう殴らないデ、おネガイ!」


「ねえ、わたしの超能力知ってるかしら?」


「エ、それは…… マサカ?」やっぱり狼狽える神父。


「あなたには特別に体感させてあげるわ、私の能力ッ!」


 後ろからズゥイィィィンとかそういう重低音が聞こえてくる。あー鶏肉に衣つけるの楽しーわー。


「アギィャー! モウヤメテ! ユルシテ!」


「誰が(ゆる)すかこのヤロ」


「う、ウグォーァ!」


 神父の叫び、ゆみの激しい息づかい、鶏の揚げられる音。


 ああ、僕の日常は何処に行ったんだ。



 少しして、鶏の唐揚げが完成したから後ろを向いた。視界には黒ずんで体から蒸気を発する神父と、それに座るゆみの姿があった。


「唐揚げできたの? でもそれポケットの唐揚げでしょ」


「あ、はい」


「へ、へー。別にお腹空いてないけど一口貰うわ」


 ポケットの唐揚げでも食べたいほどお腹が空いてるんだろうけど、言ったら僕も唐揚げにされちゃうな。ここは素直に、


「どうぞ。良ければ幾らでも」


 ゆみは唐揚げを一つ食べると、目を見開いて言った。


「こんな新鮮な唐揚げ食べたの初めて!」


 唐揚げに新鮮とかあるのかなーとも思ったけど、言ったら新鮮な唐揚げにされちゃうな。


「あ、あの。今日はもうお開きで、良いですか?」


 僕がそう言うとゆみは突然真剣な表情に戻った。


「でもまだ言いたいこととか色々あるわ」


「それは僕も同じ、いっぱい聞きたいよ。でも今日は疲れたんだ」


「確かに、そうね。でも今日じゃなきゃダメなの」


「か、唐揚げ持って帰って良いから!」


「ウソ! じゃあ明日にしましょ。明日の朝、あなたを迎えに来るから待ってなさい」


「わかった。そうしよう」


 僕が頷くとゆみは家の壁に溶け込むように消えていった。これがゆみの能力か? だったら家に入ってこれたのも納得できる。でもそれは、明日聞こう。そう思って僕は気絶した親たちをほったらかして、自分の部屋に戻った。


 その後、いつもより深い眠りについたのは言うまでもないことだね。

 はいどうもKです。小説は段々安定してきましたね。いや、良い限りです。次のOで崩れるかもしれませんが。さて今回も軽い解説を。


 前話(Sの回)では、主人公が神父への質問をするところで終わりました。この質問への返し、どうしようかなと思って。だから最初の方は結構書くの苦労しました。それから、いきなり流暢な日本語をしゃべり始めた神父をどうしようか迷いましたね。と言うのも、ちょっと違和感があって、さっきまで片言だったものが突然流暢になった訳ですから混乱しちゃいましてね。それで、上手く扱えませんでした。


 ゆみに関してですが、彼女が乱暴なキャラとして描かれてしまったのは、Oが書いた『思い込みシンプトム』における彼女の荒々しい口調が強く印象に残ってしまったからです。Sが目指していたヒロイン像とは真逆に向かいましたが、これは僕のせいではなくOのせいですよね。


 展開としては、普通にゆみ√(神父との関係悪化)、神父と戦闘(必然的にゆみと共闘)、神父を信じる(ゆみとの関係悪化)の三つを考えていました。"神父と戦闘"は銃撃たれたら避けようが無い上、大怪我を負ってしまうため却下。"神父を信じる"もちょっと無理やりな気がしたので却下。「じゃあ普通にゆみを信じようかなー」と考えて書き始めたのですが、いつの間にか、ゆみと神父の戦闘になってましたね。主人公部外者でした。


 主人公を戦わせるとなると、やっぱり超能力が必要だなと思って、物語を左右させちゃうようなこと自分で考えるのはおっかないのでやめました。まあ、物語の基盤が固まってきたら、僕の回で決めちゃっても良いんですけどね。今まだ物語始まって1日経ってないですから。まだ夕方頃なわけですからね。


 でも、ゆみの能力は登場させました。主人公の家で、わざわざ主人公の見えない場所に行って超能力使う(家から出て行く)、っていうのは納得できないですからね。壁抜けをしたわけですが、自分だけが通れるのか、誰かも一緒に通れるのか、というところは決めてないので、これは次話以降に期待ですね。まあ服ごとすり抜けてるわけですから、少なくとも自分の肉体以外も通せるんですけどね。どこまで制約があるのか気になるところです。


 自分で書いた物語が、自分の全く予想しない方向に向かってしまうというのは中々面白いですね。自分の次の番が待ち遠しいです。


 それでは、読んでいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ