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アフアフター・スクール(K)

「やっぱり知らないね」


 裸山君は不気味な笑みを浮かべながら、そう言った。裸山君は何を言いたいんだ? だって超能力なんてそんな、実在するもんか。


 そうして惑っていると、忽然背後から声をかけられる。


「アッフー。そう思うじゃん?」


茂部(もべ)君?」


 この声は同じクラスの茂部君だ。彼はいつになく愉快に笑っている。そして、そのセリフは僕の考えを真っ向から否定しているようだった。


「アッフフ。でもあるんですよこれが。あるんだわ超能力。なんで教えてあげないのかなー裸山君。イヤー痛快痛快……そう、かく言うワタシも『超能力者』でね」


「な、そりゃいったい、どういう?」


 何を言いたいんだ。茂部君が超能力者? そんな馬鹿な。


「ワタシが言う『超能力者』ってのはだね、アフフ。テッレービに出てくるようなヘンテコさんじゃあない。それはまるで、バラの花のような……(したた)かで美しい……諸刃の剣」


 何を言いたいんだ。それでも茂部君は続けて口を開く。


「うっ…… 美しい」


「何を言いたいんだ」


 思わず考えが口にでる。そりゃそうだ。こんな忙しい物言いで何を理解できようか。そんな時、裸山君が急に席を立った。


「……俺は教室に戻ってるぞ。また今度な、夕凪健一郎(ゆうなぎけんいちろう)


「ちょ、ちょっと待って」


「こんな奴がいる場所で、待つなんて出来るか」


 そう言ってそそくさと立ち去っていく。食べかけの学食さえ片付けずに。でも、まだ言いたいことがあるんだ。今言わなければ、機会を逃してしまう。


「裸山君! 僕は…… 僕は健一郎じゃなくて(しゅん)だよ!」


「アフッフーゥ!」


 茂部君の大笑いを中心にして、学食中に笑いの渦が巻き起こった。




 時は転じて放課後。今日は大変な日だったと思い起こしながら、生徒玄関に移動する。自分のクラスの下駄箱の所まで来て、「2237」のシールが張られた下駄箱を開く。僕は自分の運動靴を取り出して丁寧に履いた。そして玄関から外へ出る。


 夕焼け空の、橙色に輝く太陽を見て、僕は今朝のことを思い出していた。太陽の色が、あの「虎」の色に似ていたんだ。僕はそっと苦笑いをして、学校の門を出ようとした。その時、急に「神父」のことが心配になってしまった。ウサギ小屋、満喫してるかな。そう思って僕は、ウサギ小屋をこっそり(のぞ)くことにした。


 ウサギ小屋に近づいていくと、だんだん騒がしさが増していった。まだ活動中の部活もあるし、最初は気に留めていなかった。けど、その喧噪がウサギ小屋の方から聞こえていると分かったら、僕はウサギ小屋の方へ走り出していた。いったいウサギ小屋で何が起こっているのか、それを確かめずにはいられなかった。


「キャー、ニンジン食べた! かわい~!」


 ウサギ小屋に着いて、最初に聞こえたのはそれだった。どうやら神父は、高校生(主に女子)に餌付けされているらしい。ああ、なんてこった。


「おい神父! どうなってんだこりゃ」


 僕は叫ばずにはいられなかった。だってそうだろ、現役女子高生から餌付けされるなんて、漢の勲章じゃないか! そんな(よこしま)を考えている僕に、残酷にも神父はこう言ったんだ。


「I'm so happy(私はとても幸せだ)」

 ああ、どうしてこうなってしまったんだ。今後が心配なKでございます。今回もお読みいただきありがとうございます。さて今回も解説を。


 前話は裸山君が主人公に笑みかける、と言うところで終わったわけですね。僕はこれを教室でやってるもんだと勘違いしてたのですが、学食堂で話してたんですね。それで、「なんで学食なんだよ」と思いながら書き始めました。


 裸山君がひたすら笑ってて笑いが絶えないって前話に書いてあったので、「会話続けられないジャーン」って思って、どうしようかと考えるまでもなく新キャラの茂部君を登場させました。個人的には茂部君はモブキャラです。僕はモブキャラの名前か苗字の頭文字にMOBと付けようと考えていたので、MOBE君になった訳ですね。外国人ならモビンソンとかモバートとか色々適当なものが浮かびますが、日本人名だと頭文字にMOBを付けるのは辛いなと感じました。


 どうせモブキャラだし読んでて疲れるキャラにしよう、と思ってアフアフ笑わせることにしました。他の人はモブキャラとして使わない恐れがありますが、もういいでしょう。茂部君が本当に超能力者なのかただのイカレた子なのかは作者である僕にもわかりませんが、それもまあいいでしょう。


 裸山君の「夕凪健一郎」発言は、個人的に夕凪と言う苗字には春じゃなくて健一郎の方が似合うなと思ったので、勢いで書きました。ギャグってどう書いたらいいのかいまいち分かりませんね。


 放課後に移って神父に会いに行くシーンを入れた理由は単純で、放っておけなかったからです。折角自分が登場させたキャラを自分で殺す(存在感的な意味で)のは嫌だったものですから、会いに行くことにしたんです。


 Oが書いた珍奇な神父の人間像をいまいち掴めなかったものですから、神父本人のアプローチではなく周りの高校生によって成立させようと試みたんですね。それからその後の台詞、「I'm so happy」は2話の後書きにある通り、happyが使われているので一応決め台詞です。本来は敵を銃殺したときに言う決め台詞だったのですが……この神父、こんな性格じゃ(命が)長続きしないなと思って、どんな形であれ今のうちに言わせておこうと思って、書きました。


 今回は次話以降に向けた伏線などは全然用意しなかったです。非常にまっさらな状態で渡した方がOも良いものを書いてくれるだろうと思ったので、ね。

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