アウトレイジー(K)
「美味しかったですチャーハン」
「ありがと。得意料理チャーハンくらいだから、褒めてもらえると嬉しいな」
「久々に食べたけどやっぱり美味しいな~。今日は色々あったけど、このチャーハンのおかげでプラマイゼロだよ。さてと、私は他にも色々仕事があるんで行かせてもらうよ。じゃあフーリンちゃん、後は頼むよ」
「食べるだけ食べてどっか行くんですか……」
「まあまあ、私には他の仕事が残っているから」
そう言ってムーンさんは仮面をつけて立ち去った。常備してるんだな、あの仮面。
「じゃあわたしたちは…… あの時言った通り、色々この組織について教えるね。ついて来て」
風鈴さんは食器を持って椅子を立ち、食堂の食器返却口に置いた。
そういえば普段、誰がここの食器を洗っているんだろう。その疑問を風鈴さんにぶつけてみることにした。
「あの、食堂を運営してるのって、誰なんですか?」
「え? ここの食堂?」
風鈴さんは意外そうな顔で聞き返した。まあ普通こんなこと聞かないよね。
「はい。スラッカーズの人がやってるんですか?」
「ええ、そうよ。さっきの銃撃戦で勘違いしたかもしれないけど、『怠け者集団』は戦闘集団じゃないの。超能力なんて大仰なものを負った人たちが、普通に暮らせる場所。だから、さっきみたいな戦いなんて、ほとんどの人が無縁なのよ」
「そうだったんですか……。本当に組織について何も知らなかったんだな……」
「だからこれから教えるんでしょ? まだ分からなくって良いよ」
風鈴さんがやけに大人びた仕草で言ったから、ちょいドキだった。
「は、はい!」やや声を掠れさせてしまう。
僕は風鈴さんに付いていった。
着いたのはさっき――と言っても色々あったせいでさっきとは感じないが――ケンジさんにケガを治してもらった場所だった。敵からの襲撃で建物は崩れ気味だけど、ここは何も無かったかのように綺麗だ。
「ここの本もまとめておかないとなぁ……」
風鈴さんがややため息交じりで言った。
本をまとめる、ということはこの建物は捨てて別の場所に移動するんだろう。敵組織にバレてるんだから当然だけど。
「まずは、この組織の目的について…… まずは座ってからだね」
風鈴さんはにっこり微笑んで、窓際の椅子に座った。
ベッドの人を看取るためだろうか、窓際には一人用の座椅子が4つ並べられている。
僕は風鈴さんの隣に座った。
「色々戦いに巻き込んじゃってごめんね。それに、あなたに助けられちゃったし。本当はわたしが護るはずだったのにね」
「いえ、良いんです。こうして僕も無事なんですから」
そこでケンジさんの顔が浮かんだ。僕を一番助けたのはあの人なんだな。そう思って僕はつけ加えた。
「ケンジさんには色々感謝しないとですね。ケンジさんがいなかったら今頃ボロボロですよ」
「そうだよね。性格あんなだけど、受けた恩を思うと。はぁー…… 話し好きじゃなければなぁ」
「でも暗い性格だったら人体改造されてるような気分になっちゃいますよ?」
「それもそうね」風鈴さんは可笑しそうに笑った。
二人でしばらく笑ってから、風鈴さんは話を切り出した。
「ケンジさんやわたしは、組織のために超能力を使ってるけど、みんながみんなそうじゃないの。さっきの食堂だってそう。警備隊の人たちが銃を持ってるのだって、戦いに使えないような超能力でも組織を守りたいと考えてくれているからね。だからね、あなたも戦う必要なんか無い。もう巻き込んじゃったけど、料理人や事務員の道だってあるの」
そう言われて色々と考えることはあった。戦いで別の組織に攫われたら、利用されるだけかもしれない。でも僕は自分で望んで力を使ったんだ。
「本当は戦いたくないです。でも戦いが起きたのは事実だし、僕が今までに巻き込まれた戦いは僕の『触媒』のせいで起きてます。僕が原因の戦いから、僕自身が目を背けて人任せにするのはダメだと思うんです。それが僕の、『触媒』の責任だと思うから……」
「『怠け者集団』の人たちは、義務とか責任で戦っているわけじゃないの。皆、自分の意志で戦いに参加してる。自分の力に責任なんか感じなくていいよ。義務とか責任とか、そういったものを排除した"怠け者"なんだから。だから、責任とか考慮しないで考えて。もう一度聞くわ。あなたはここ、『怠け者集団』でどんなことをしたい?」
「僕の考えは変わりません。風鈴さんも含めた誰かを、守りたいです」
「……分かった。ちゃんとムーンに伝えておくね」
「じゃあ、これも伝えといてください。僕がさっき夢で会った、女の子の話です……」
僕はそう言って、サラの話題を出した。
読んでいただいてありがとうございます。今回は後書きの内容が特に思いつかないので短くなります。
スラッカーズが「義務とか責任とか、そういったものを排除した"怠け者"」だというのは、スラッカーズの名前を決めたとき(ムーンさんが出てきた話)に既に思いついていました。いつかスラッカーズがスラッカーズたる理由を書こうと思っていましたが、今回がちょうどいいと思ったので、今回にしました。
おわり




