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人間万事塞翁が馬(K)

「標的を逃がすわけにはいかんな~」


 後ろから聞こえた声に思わず戦慄する。だけど僕は、風鈴さんから任された使命を果たすために、この男から逃げなくちゃいけない。僕は部屋を出て右へ走り始めた。


「こっちを見ないとケガするわよ!」


 風鈴さんの叫び声が聞こえる。急いで助けを呼ばなきゃ! 風鈴さん、それまで生きていて…… そう思ったが束の間、隣の壁がメキメキと音を立て始めた。


「なんだ!?」


 壁は勢いよく湾曲し、僕の行く手を塞いだ。


「しまった!」


 僕は思わず声に出して言った。目の前の壁が塞がれたせいで、今僕がいる廊下は行き止まりになってしまった。

 どうにかしてこの壁を…… 超能力ならどうだろう。いや、駄目だ。いくら肉体を加速させたって、固い壁は壊せない。もし壊せても、僕の腕が散々なことになる。


「来た道を、戻るしかないのか」


 だが選択肢が戻る以外に浮かばない以上、仕方ない。今度道を阻まれそうになったら次こそ能力を使って走り抜けるしかない。僕は道を戻ることにした。


「おお、戻ってくるとはね~。はっはは、どうしたの? 仲間になりたいのかい?」先の男は僕の前に立ち塞がって嫌な表情を浮かべた。


 きっと道を塞いだのはコイツだ。


「そこをどけ! でないとケガさせるぞ」僕はできる限り威圧するように言った。


「いやはや、怖いな~。でも残念、君の逃げ道は塞がれた」


「なんだって?」


「今言った通りさ、道は全部塞いである。中にいるのはしくっちゃんと俺らだけだよ」


 しくっちゃん…… 風鈴さんのことか。あれ? 風鈴さんはさっきまでここに……


「……! 風鈴さんはどこにいる!?」


「どこって~さっきの部屋にいるでしょう?」男は左を指さした。


 僕は少し前へ出て、左を確認しようとした。


「前を見なさい! 馬鹿!」


 風鈴さんの声がする! 生きてる。良かった、でも安心する間なんてほとんどなかった。次の瞬間には、僕を目掛けて男の拳が飛んできていた。

 ――正確には男の拳ではなかった。男が付けていた手袋が、独りでに僕を殴りに来たんだ。手袋は僕の頬を思いっきり殴った後、そのまま僕の鼻と口を覆った。息をさせないつもりか。


「良いサプライズだろう。これが俺の能力、魍魎跋扈ポルターガイスト。身の回りのものをランダムに動かす能力さ。集中すれば自在に操ることもできるがね。さて、そのまま眠ってくれよ。俺以外の手柄になるのは御免だからね」


 僕は手で口に詰まった手袋を掴んで、男に投げ捨てた。手袋は見事男の顔面に命中! してやったぜ。

 僕は男を殴ってやろうと足を出した。――! 僕は足がつかえたせいで勢いよく転んだ。足を見ると、廊下の手すりが僕の足に絡みつくようにうねっている。


「はっはっは。イイだろう? な、分かったよな~、俺からは逃げられないってこと」男は愉快そうに笑いながら、僕を見下した。


 物を自在に操る……。きっとあの(ウォーターと呼ばれていた)男性の死体は、体内をめちゃくちゃにされた後なんだろう。このままだと碌な死に方は出来ない。いや、死ぬつもりはないけど。


 僕は歯を食いしばって、男を見上げた。

 Water!!

 いったいどういう人なんだろうか。僕の話では襲撃者への対策でいっぱいで、特に何もウォーターさんについて書けませんでした。まあ、近いうちに補足説明が入ることでしょう。(もしかしたら僕の回かも?)


 さて襲撃者についてですが、能力名は魍魎跋扈(もうりょうばっこ)と書いてポルターガイストと読ませます。

 肝心の言葉の意味ですが、魍魎は魑魅魍魎(ちみもうりょう)という言葉のおかげで知っている人は多いと思います。跋扈も跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)で知っている人結構いるんじゃないかな。

 

【魍魎】 … 山・川・木・石などに宿っている精霊。すだま。

【跋扈】 … 魚がかごを越えて跳ねること。転じて、ほしいままに振る舞うこと。また、のさばり、はびこること。

   (デジタル大辞泉より)


 要するに、物に魂を宿して、のさばらせるっていうことです。

 漢字が苦手な方、このような難しい文字はそうそう使わないのでご安心ください。



 さて、戦闘がこれから始まりそうですけど、どう展開するんでしょうかね。気になるところです。ここまで読んでいただきありがとうございました。

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