苦渋なる岐路(K)
彼女は続けてこう言った。
「わたしたちの集団に入らない?」
「集団?」
「そしたら、あなたが知れる情報も少しは増える」
「うーん……」
僕としては、神父のような脅威(?)的存在が再度現れた際に一人ぼっちなのは困る。仲間は欲しい。だけど、まだゆみを信じ切れてはいなかった。
「できれば入る前に教えてほしいんだけど、ダメかな」
僕には特別な力があると言った。僕の知識が無いばっかりに、それを悪用されるのは良くないと思う。
「難しいわね…… わたしにはそこまで権限があるわけじゃないわ。あなたが絶対入るって言うなら教えるけど、決めかねているなら教えられない」
困ったことだ。僕は詳細不明の組織に入るか、入らないで危険な日々を送るかという苦渋の選択を迫られていた。僕は注文した飲み物を飲んで気を紛らわした。姑息だが、そうでもするほかなかった。でも彼女は次にこう言ったんだ。
「神父たちのことだったら、教えてあげられる。いや、知るべきよ。あなたは被害者なんだから」
神父”たち”。確かに彼女はそう言った。やっぱり神父はどっかの組織に入ってるんだ。それも、たぶんゆみの組織と対立している。
これは僕にとってはまたとないチャンスだ。だけど、信用しきれていない女の言うことなんて信じていいのか? いいや、審査する。僕は今から審判者だ。この女の言うことを評価して、審判を下す。物事の正邪は僕が決める。なんと心地好いことだろう。僕が勢いよく飲み物を飲み乾すと、タイミング良く女は口を開いた。
「まず神父は、あなたの特別な力を狙っている。いいえ違うわ、神父の入っている組織が、あなたの特別な力を欲しているの。神父は、あなたの許に差し向けられた刺客なのよ。あなたの特別な力が何なのか、それはわたしたちの集団に入ってもらわなきゃ言えないけど……」
まずこの女は「狙っている」だの「差し向けられた刺客」だの、貶めるような言い方で神父とその組織について説明しやがった。たぶん僕にマイナスイメージを持たせようとしているんだ。しかも婉曲に勧誘してきやがった。次にこの女は自分と自分の組織について買い被って言うに違いない。
「わたしたちのグループは、あなたの力が悪用されないように保護しようとしているの。あなたを守って、仲間に入れる。その為にわたしは来たの」
やっぱりだ……! この女、僕が何考えているとも知らず…… クッ、変な笑いが出そうだ。予想通り過ぎる…… このままでは失笑の嵐だ。
「だから、是非入ってほしい。あなたの為でもあるし、結果的に大勢の人のためにもなるの」
今度は露骨な勧誘に付け加えて、入るだけで社会貢献できるだなんて仄めかしてくる。ああ、ケッサクだ。最高だね。乳もデカいし。お前の組織だって僕の力とやらを狙っているんだろ? お前はその刺客。神父とは方向性が違うだけで同じ刺客。そうなんだろ? 保護とか言って僕を良いよう使おうってんだろ? 知ってるぜ……
「だったら、僕の答えはこうだ」
①女を置いて店を出る(当然食事代は払わない)
②敢えて女の言いなりになる(当然組織に入る)
③女の乳を揉む(当然気持ちいい)
だけど僕の頭を占めたのは、そのどれでもない四つ目の選択肢。その四つ目の選択肢は、次の瞬間には僕を衝動的に突き動かしていた――
どうも読んでくださってありがとうございます。Kです。小説どうでしょうかね。主人公も段々巻き込まれて来た感じありますね。ここからどう発展するのか。主人公はいつごろ能力バトルを始めるのか。非常に楽しみであります。
さて今回の解説です。前話のSの回で全然ゆみが情報開示しないので手札が無かったと言いますか、困りましてね。そのまま店出ちゃうと「店きた意味ある?」ってなっちゃうんで、どうしようかなーと。
そこで思いついたのが、ゆみのいる組織に入ること、それに至るまでの駆け引き。ゆみは壁抜けの能力ですから、主人公の存在に気づき、そこにたどり着くためには誰かの協力が必要なわけで、それなりに人数のいる組織に属しているだろうと推測しました。でも書いてすぐ思ったんです。「一朝一夕で超能力女の言うこと信じられるか?」って。無理ですね。いや、疲弊してたならそんな考えに及ばずに彼女を受け入れていたでしょう。でも敵前で唐揚げ作る男ですから。それは無理だ。
だから、神父の話題に入ったんです。Sのを見返してみたら神父には触れてなかったので。そこで主人公の闘いが始まるわけですね。信用しきれない女を信じるか、敵として疑ってかかるか。
「審査」って書いたとき、すぐに「審判者」って言葉が浮かびました。審査も審判も、査定か判定かってだけで大して意味に差はないですけど。審判者って格好いいじゃないですか。だから、僕も主人公も調子に乗ったんです。疑ってかかるというか、そういう視点でゆみを見てしまったんですね。もう、審査のあたりからは筆が乗ってしまって。キーボードの場合指が乗るって言うんですかね。小説ネタで言うなら、"虎が来た"ですけどね。
そこから最後のあたりまで突き進んで、「だろ? だろ? だろ? 知ってるぜ……」の勢いのまま「だったら、僕の答えはこうだ」って格好つけさせたんです。でも、「僕の答え」なんて用意してなかったんでね、でもここでバトン渡したくもない。そこで思いついたのが選択肢。でも選択肢じゃ足りない。バトンとして不十分。そう思って、第四の選択肢で僕の話を終えたわけです。
次の話、Oの回が非常に楽しみです。第四の選択肢を選んだ以上、三つの選択肢、話をほったらかす、素直に組織に入る、乳を揉むは使えませんからね。どう展開するのか見ものです。それでは、ここまで読んでいただき誠にありがとうございました。




