表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
予知姫と年下婚約者  作者: チャーコ
閑話・別視点
118/125

月乃さん視点・征士くん視点

● 月乃さん視点


 征士くんが中等部二年だったときのクリスマスは、手編みのセーターと手袋をプレゼントした。

 嬉しそうに受け取って包みを開けた征士くんは、何故か少し残念そうな顔。


「え? セーターと手袋嫌だった?」


 前もって、征士くんのお母様にサイズは訊いていた。合っているはず。


「そういう訳じゃないんですけど……」


 歯切れの悪い言い方に首を傾げる。チョコレートの手作りは喜んでくれたのに、手編みの物は気に入らなかっただろうか。

 翌年のクリスマスは既製品の黒い靴をプレゼントした。これもサイズは予め訊いていた。


「今年は靴ですか……」


 またもや落胆した様子に戸惑いを隠せない。手作りも既製品も嫌なのだろうか。

 私の戸惑いを察したのか、征士くんは躊躇いながら言った。


「セーターも手袋も靴も、もらって嬉しいんです。ただ……僕成長期だから、すぐに使えなくなっちゃうじゃないですか。それがもったいないんです」

「ああ、そういうことなのね! でもサイズが合わなくなったら、また作ってあげるわよ」


 私は得心したが、まだ彼は浮かない顔だ。


「折角月乃さんが贈ってくれたものなので、いつまでも大切に使いたいんです」


 ──あの頃の言葉は、今ならよくわかる。ずっと征士くんは私のことが好きだったのだ。

 もう成長期は終わっているけれど……今年のプレゼントはマフラーを編もうかしら。ちょっと手の込んだマフラーを作ろう。

 プレゼントすると、征士くんは満面の笑顔になった。


「ありがとうございます! いつまでも大事に使いますね」


 彼が結婚してこの家に持ってきた物の中に、例のセーターと手袋と靴があるのを知っている。

 私は学生時代にプレゼントしてもらったあしかのぬいぐるみを、戸棚から出して部屋の目立つところに飾った。


 ♦ ♦ ♦


● 征士くん視点


 クリスマスが終わって飾りを片付けていると、月乃さんが来て手伝ってくれた。


「ポインセチアちょっと枯れちゃったわね」

「枯れた部分だけ摘み取れば、まだ楽しめますよ」


 僕はクリスマスツリーのオーナメントを外しながらそう言った。

 ひいらぎのオーナメントは、魔除けの意味もあるらしい。赤い玉のオーナメントは永遠の象徴と聞いたことがある。

 ツリーを片付け、玄関に飾ったクリスマスリースを取りに行った。

 ふとリースの意味を思い出す。

 リースの下部分のリボンには、お互いが愛情を持って永遠の絆で結び合わせられるようにとの願いが込められているという。

 その意味を思い出すと片付けてしまうのが惜しくなり、部屋の扉に飾ろうかと考えた。


「月乃さん。クリスマスリースはまだ飾っていていいですか?」


 月乃さんは目を見開いた後、微笑んだ。彼女も意味は知っているようだ。


「いいんじゃない」


 頷いた後「はい」とポインセチアを渡された。真っ赤なポインセチア。枯れた部分は取り除いてある。


「……僕に、ですか?」

「征士くんだからよ。私からのプレゼント」


 ふふ、と綺麗な笑顔を見せてから、花言葉を教えてくれた。


「『私の心は燃えている』よ」


 僕が以前あげた真紅の薔薇の花言葉にも負けないプロポーズのような言葉に、顔が熱くなる。月乃さんからのプロポーズは反則だ。

 ポインセチアを受け取り、それとともに月乃さんを抱き寄せる。


「……あんまり煽らないでください」


 鮮やかなポインセチアの赤と同じ色の唇に、僕のそれをそっと重ねた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ