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プロローグ およびだし
「はじめまして。どうぞ、お座りになって?」
窓が開け放たれているのに薄暗く、風のそよぐ部屋の中で、古書物に囲まれた魔女はにこりと笑うと、液体の揺れる真鍮の鍋に触れた。液体は瞬時に蒸発し、真鍮の鍋は音もなく粉末となって床に積もった。魔女は真鍮の砂を優雅な足取りでよけてこちらに来ると、テーブルに用意されていたグラスを手に取った。
「つまらない前置きはさておいて、話しを始めましょう」
魔女はゆったりとしたソファに身を沈めながら、こくり、と喉を潤した。
稚拙ではありますが、すこしでも楽しんで頂けたらと存じます。