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僕らのボール  作者: Glocken
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汚れたバット

 阪神タイガースに2024年度ドラフト会議で3位で指名された緑ヶ丘高校の水沼友仁はFAで西武ライオンズへ移籍した重松(32)の代役として開幕戦に7番レフトとして華々しいデビュー戦を迎えた。この試合で落ちれば同点となる中日の三番である西川が放った左中間に抜けそうなボールをダイビングキャッチ。さらに第三打席に決勝点となるタイムリーツーベースを放つなど勝利に貢献。見事監督の信頼を得てこの年は139試合にスタメンで出場した。打率は.297、3本塁打で71打点の芳しい成績を残し新人賞とゴールデンクラブ賞を受賞した。この年阪神タイガースは2位でCSの初戦で姿を消したが大物ルーキーの登場でファンはタイガースに魅了された。中村監督はCSのヤクルトとの第三戦に敗れた後の会見で水沼がいなければきっとBクラスだっただろうと語っている。しかし彼がここまで成長できたのは高校で出会った仲間とライバルのおかげである。これはそんな彼の高校時代をかいたものである。

 部屋の中には目覚まし時計が鳴り響いていた。外はもうすでに明るく、日光が水沼友仁の顔を照らしている。水沼が目をあけると下から愛犬ゴードンの鳴き声が聞こえた。時計はすでに7時半を指していた。

階段を駆け下りると母が気ままにテレビを見ていた。

「何で起こしてくれなかったんだよ」

水沼が大声を張り上げたが、母は無言だった。荷物の整理を終えて行って来ますと言った時には母は大声をだしながら泣いていた。玄関で靴を履いていると母が上からバットケースを持って降りてきた。

「これ、持って行って。父さんの形見」

中を開けると汚れたバットが出てきた。

「ありがとう」

彼はそう言って新たな一歩を踏み出した。

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