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初めて長編小説を書きます。
全体の構想はできていますが、危なっかしい進行になると思われます。
予想を裏切る展開、きらきらしい恋愛、胸が躍る冒険等はございません。
それでも読んでやろう!という奇特な方は、どうぞお付き合いください。
漂う湯気を追い散らした風が無防備な背中を撫で、肌が粟立つ。
急いで岩に上がると、凹凸に足裏のツボを容赦なく刺激され、私は情けない声をあげた。
「痛っ」
気を取り直し、目の前の湯につま先を差し入れる。
少し熱いが、耐えられないほどではない。
そろそろとしゃがみ、身を沈めることしばし。
ぶるっと震えがきて、全身が温かくほぐれていく。
「はぁ~、極楽極楽」
背後の岩にもたれ、目を閉じて心地よさを満喫。
木漏れ日が瞼を染める。
木立を通り抜ける風に混じり、啄木鳥が木を穿つ音、時折縄張りを争う鳥たちの声。
目には見えないマイナスイオンも浴びまくりだろう。多分。
そう、ここは森の中の温泉だ。
貸切状態に加え、100%源泉掛け流しという贅沢さ。
事情を知らない人にとっては、うらやましいことこの上ない状況だろう。
あくまで、事情を知らなければ。
「もう一回、現状把握しとこうか・・・・・・」
私は、口癖のようになった独り言を空しく呟いた。
一度書いてみたかったトリップものです。
最初は江戸時代小説を書いていたのですが、それを差し置いてなぜかこの話が先に出てきてしまいました。
十分に気をつけてはおりますが、人称がおかしかったり、誤字脱字が目に付いた方は、ご指摘くだされば幸いです。